(宝登山から武甲山)
12月に入るとボクのような者でも忙しくなって、週末天気が良くてもなかなか山に行けないでいた。山に行かないでいる内に東京でも雪が舞い、関東の標高がそこそこの高さの山でもだいぶ雪が積もったようだ。せっかくの連休、一日くらいは山に行きたいのだが、ボクはスノーハイクが好きでない。そこで雪が既に融けていそうな標高の低い山から、宝登山(ほどさん)と蓑山を選んで歩きに行くことにした。蓑山は三度目で最近だと2010年に三沢地区から登ったことがある。宝登山は近年ロープウェイで行ったことがあるのだが、徒歩でとなると2007年に母と歩いて以来だ。どちらも軽い山なので、まず野上駅から長瀞アルプスを経由して宝登山へ登り、長瀞駅から親鼻駅へ移動した後、蓑山を登ることにした。
小手指駅から始発電車に乗り込む。冬至ということもあって周囲は真っ暗だ。飯能駅で乗り換えるが、依然として周囲は暗い。西武秩父駅に近づくとようやく空が白んできた。ホームに降りると乗務員に「どこまで行かれるんですか?」と聞かれる。珍しい。宝登山と蓑山を歩くと答えると周囲の山は結構雪が積もっているとのこと。低い山なので大丈夫だとは思うが、一応軽アイゼンは持ってきている。駅を出ると武甲山が美しい。採掘の進んだ山を美しいというのも変なのかもしれないが、それでも雪化粧したこの山は美しい。御花畑駅から秩父鉄道に乗り、7時ちょっと前に野上駅に到着。まだ薄暗いが、風はそれほど強くない。
(西武秩父駅から武甲山)
(朝の野上駅)
駅前の道を進み、国道を渡る。すると長瀞の花と緑を守る会が設置した案内板がある。わかりやすい道だが、一応確認しておくといいだろう。立派な落合眼科医院を過ぎた辺りから何となく見覚えのある景色が現れる。そのまま車道を進むと道標の立つ萬福寺に着く。萬福寺に着いた辺りでまた見慣れない光景となる。山の中に入ればもう少し思い出すこともあるのだろう。私有地内に休憩所が置かれた所からは南に展望が開ける。右手に見えるのはおそらく宝登山であろう。舗装路から山道に変わると谷間の暗い沢筋を登っていく。ちょうど二つの尾根に挟まれた辺りだ。水流で洗掘され、歩きにくい。左手に見える尾根を上がる分岐を見送ると笹薮を切り開いた気持ちの良い雑木林の道が延びる。ここから主尾根に上がるまでやや急な斜面を上がる。
(案内板)
(萬福寺)
(萬福寺近くから 右は宝登山)
(洗掘した道)
(笹原の道 ここからやや傾斜が急になる)
主尾根には道標が立ち、宝登山方面と北にそれぞれ広い踏み跡が延びている。北の踏み跡は木で通せんぼされていた。下にダウンを着込んでいたが、だいぶ体も暖まってきたので、ダウンを脱いで、雨具を羽織ることにした。道標が立つ地点からはしばらく緩やかな道が続く。風をそれほど強くなく、陽だまりハイクには最適なルートだろう。尾根が細くなる辺りはやや急な登り。周囲は雑木林で龍ヶ谷城跡の雰囲気によく似ている。そして春に歩いた十万劫山を思わせるところもある。木の間越しに長瀞の街を見下ろしつつ進むと檜の林が現れる。道はその林を避けて尾根の北側斜面を巻いていく。尾根上もよく下草刈りがされていて、そのまま歩いて行っても問題はないだろう。ただここは巻き道を使わせてもらう。
(尾根に上がった所)
(陽だまりの道 でも朝早いので寒い)
(長瀞の街を見下ろす)
巻き道をしばらく行くと御嶽山・天狗山分岐に出る。この分岐に来て、この巻き道で中高年の大集団に遭遇したのを思い出した。何故ああいった集団は少人数のグループや単独行の登山者を待たせて、自分たちが先へ行こうとするのだろう?そんなちょっと嫌な思い出がよぎったからなのか、真直ぐに進まずに天狗山へ寄り道していくことにした。これまでの道のりと同じく比較的緩やかなアップダウンが続く。ただなかなか目印となるような顕著なピークは現れない。やがて正面に岩か石碑のようなものを頂いた小さなピークが見えてくる。但し道はそのピークを巻いていくように付けられている。正規の踏み跡を無視してそのピークに上がると石積みの土台の上に置かれた石碑の裏側に出る。正面に回ると御嶽神社云々と書かれている。つまりここは御嶽山だ。近くの木に青い山名プレートが括り付けられている。う~ん、でもここは353mもあるのだろうか?
(天狗山分岐 左が天狗山への道)
(比較的緩やかな道が続く)
(御嶽山)
天狗山は御嶽山の先にあるようなので、そのまま石碑の前に延びる道を下っていく。あとで登り返すのが辛そうだ。祠や石碑の類が点々と置かれ、神まわりと書かれた標柱もよく見かける。だいぶ下ったなぁと思う頃、正面に小屋掛けのあるピークが見えてきた。小屋掛けに近寄ると天狗山と書かれた標柱がある。ここが天狗山で良いのだろうか?道はこのピークの手前で麓へと下っている。小屋掛けは白峰神社の建物で、中には二枚の地図が掛けられていた。エアリアと見比べると、どうやら総持寺から登ってくる道があるらしい。萬福寺の登山口も総持寺の登山口も野上駅から歩ける位置にあるので、総持寺から登る道も楽しいかと思う。
(三笠山の碑)
(白峰神社)
(神まわりの標柱)
往路を戻り、再び天狗山分岐に着く。道はわかりやすいが、地形図で現在地を追っていくのは結構難しい。檜の植林と雑木林が交互に現れる道を行くと雑木林の木の間越しに三角形をした山が見える。あれが当面の目標である宝登山だ。アップダウンが少ないなだらかな道はとても気持ちが良い。新緑や紅葉の頃に歩いても良い所だと思う。顕著でない鞍部へ下ると氷池分岐に着く。エアリアを見ると往復で30分強なので、氷池にも寄って行くことにした。最初は緩やかな斜面の下りで、じきに半円状の掘割道を下っていく。掘割道が終わるとクルマが通れそうな砂利道に出る。砂利道は沢沿いにあり、この沢から氷池へと水を引き込んでいるのだろう。沢沿いを下っていくと四角く区画された氷池が見えてくる。上から見る分にはかなり表面は凍っているようだ。ここの氷は夏が近づけば、阿左美冷蔵のかき氷として長瀞周辺の店で出されることになる。
(広い尾根)
(氷池分岐)
(沢沿いの砂利道を下る)
(氷池 なお製氷中につき立入禁止)
(掘割道を戻るところ)
(分岐手前には奇岩がある)
分岐に戻り、宝登山を目指す。もう長瀞アルプスの尾根も終わりに近い。植林と雑木林の混合林が広がる辺りが野上峠だ。峠道はどちらも通行禁止となっている。一応道形ははっきりしているようだが、地権者が立入禁止の措置を採っているのかもしれない。野上峠から少し行った所に小鳥峠があるが、こちらも氷池への道は廃道となっていた。道形もはっきりしていないようだ。小鳥峠を過ぎた辺りから何やら人の声が聞こえてくるようになった。もしかすると先行者がいるのかもしれない。一般車は通行禁止とされている林道へ出ると小さな犬を連れた中年のご夫婦を見かける。どうやら麓の白山神社から延々と登ってきたらしい。このご夫婦を追いかけつつ、無味乾燥な林道を登っていく。長瀞アルプスの入口から宝登山の入口まで結構距離があるのだ。
(野上峠)
(宝登山が近くなってきた)
(小鳥峠)
ゆっくりと歩いて、宝登山の登山口に着いたところでご夫婦に追いつく。ご夫婦よりも犬のほうがやたらと元気であった。ボクは犬も好きなのだが、何故か随分と警戒されてしまった。触れ合いたかったのだが、残念。ご夫婦を追い抜き、最後の登りに取り掛かる。まずは関東ふれあいの道名物土留めの木段がお出迎え。何とも恨めしいことにこの木段は五度に分けて現れる。まあ山頂までずっと木段が続くというのに比べればかなりましだが。犬は木段登りが苦手なのか、ご夫婦はだいぶ遅れて登ってくるようだ。ボクもゆっくりと行くとしよう。四つ目の木段を登り終えると岩っぽい道となり、右手が雑木林となっていて、明るい光が降り注いでくる。もう山頂は近い。最後の木段を登りきると右手に蝋梅園が見えてきた。緩やかに登ると広い宝登山(497.1)の頂上に着く。環境省と埼玉県が設置した立派な山名板と三角点があり、南側が蝋梅園となっていて、大きく開けている。最も長めの良いベンチにザックを下ろし、山頂からの眺めを楽しむ。まず左手に見える土饅頭のような山がこれから向かう蓑山だ。そこから右に行くと採掘が進む武甲山。途中を飛ばして、右手からは一際高く城峯山が聳え、そこから左に雪化粧した岩山が両神山だ。城峯山からの尾根続きに見えるのは皆野の破風山(はっぷさん)。その破風山の奥に見えるのが奥秩父の山々だ。右に最も高く見えるのが三宝山。その左隣の小さな突起が甲武信ヶ岳。その左のやや大きな山が木賊山だ。そこから一旦大きく下り、登り返す台形状の山は破風山(はふうさん)。さらに左隣の伸びやかな山は雁坂嶺。雁坂嶺の左に見えるのっぺりとした大きな山は和名倉山。そこから左に見えるゴツゴツした山は白岩山と芋ノ木ドッケ。雲取山は隠れてしまうらしい。武甲山と蓑山の間には武川岳や二子山などが見えるのだが、他の山の存在感が大きすぎて、あまり目立たない。
(宝登山入口)
(木段 正直鬱陶しい)
(ここを登れば山頂)
(宝登山頂上)
(両神山)
(手前は破風山 奥は左から雁坂嶺、破風山、木賊山、甲武信ヶ岳、三宝山)
(和名倉山)
(芋の木ドッケと白岩山)
(山頂からのパノラマ)
ゆっくり眺めを楽しんでいると先ほどの犬とご夫婦が山頂へやって来た。するとロープウェイ駅方面からも中高年のグループがやって来る。騒がしくなってきたし、そろそろお暇しよう。ロープウェイ駅へ向かって少し下ると木立の中の宝登山神社奥宮に着く。奥宮の脇には売店があり、老夫婦が開店の準備をしているところであった。品揃えを見るとお守りなどが主だったものになっている。神社の鳥居からは東側に展望が得られ、半円状に突き出す釜伏山がよく目立つ。よく見ると山の向こうに筑波山も見えている。神社の境内は結構広く、売店のベンチなどが置かれている。ん?何か小さなものが先ほどから動いている。チワワだ。売店のご主人の飼い犬だろうか。近寄っても逃げはしないのだが、写真を撮ろうとすると何故かそっぽを向かれてしまった。
(売店)
(宝登山神社奥宮)
(神社から釜伏山を望む)
(筑波山)
(チワワ)
境内を出て、ロープウェイ駅を目指す。こちらも蝋梅園となっていて、蓑山のほか、笠山や釜伏山などの外秩父の山が見渡せる。蝋梅園の中は明るい光を降り注ぐものの、流石に花を付けているものはまだ無い。ロープウェイ駅の近くには寒桜が立ち、小さな花を付けていた。ロープウェイの山頂駅に着くと駅舎内はひっそりとしていた。時間が早いので、利用する人がいないのだろうか。もちろんボクも利用するつもりはない。改札口前から小動物園へ向かって歩くとレストハウスがあるのだが、まだ開いていなかった。今日は休業だろうか。このレストハウス脇から宝登山神社へ向かって遊歩道が延びている。地形図に描かれている九十九折の道は広い砂利道となっている。しかし地形図には描かれない短絡路があるので、これを利用してぐんぐん下る。周囲は植林の最中で、東側の眺めが良い。山麓駅への道を分けると宝登山神社の前に出る。神様に今日一日の安全を願いつつ、長瀞駅へと向かう。長瀞駅から親鼻駅までは一応歩きの予定だ。ただ念のため駅探で時刻表を確認するとあと5分で三峰口行がやってくるという。これは乗るしかない!宝登山神社の参道をダッシュし、長瀞の駅舎に飛び込むと駅員さんが「どちらに乗ります~?」と声を掛けてくる。三峰を告げると間もなく電車が入ってくるので、遮断機が下りる前にホームに行ってくれとのこと。汗だくになってホームに上がるとちょうと電車がやって来るところであった。
(蝋梅園から蓑山)
(笠山 右手前が大霧山 鞍部は粥仁田峠)
(蝋梅園からのパノラマ)
(ロープウェイ駅を見下ろす)
(寒桜)
(蝋梅園)
(ここを下る)
(宝登山の下りから)
後編に続く。
DATA:
野上駅7:10~7:24萬福寺~7:55天狗山分岐~8:09御嶽山~8:13白峰神社~8:31天狗山分岐~8:45氷池分岐~8:54氷池~9:06氷池分岐
~9:12野上峠~9:17小鳥峠~9:20林道~9:30宝登山登山口~9:47宝登山~10:06宝登山奥宮~10:18山頂駅~10:57宝登山神社~長瀞駅
(秩父鉄道)親鼻駅
地形図 鬼石
12月に入るとボクのような者でも忙しくなって、週末天気が良くてもなかなか山に行けないでいた。山に行かないでいる内に東京でも雪が舞い、関東の標高がそこそこの高さの山でもだいぶ雪が積もったようだ。せっかくの連休、一日くらいは山に行きたいのだが、ボクはスノーハイクが好きでない。そこで雪が既に融けていそうな標高の低い山から、宝登山(ほどさん)と蓑山を選んで歩きに行くことにした。蓑山は三度目で最近だと2010年に三沢地区から登ったことがある。宝登山は近年ロープウェイで行ったことがあるのだが、徒歩でとなると2007年に母と歩いて以来だ。どちらも軽い山なので、まず野上駅から長瀞アルプスを経由して宝登山へ登り、長瀞駅から親鼻駅へ移動した後、蓑山を登ることにした。
小手指駅から始発電車に乗り込む。冬至ということもあって周囲は真っ暗だ。飯能駅で乗り換えるが、依然として周囲は暗い。西武秩父駅に近づくとようやく空が白んできた。ホームに降りると乗務員に「どこまで行かれるんですか?」と聞かれる。珍しい。宝登山と蓑山を歩くと答えると周囲の山は結構雪が積もっているとのこと。低い山なので大丈夫だとは思うが、一応軽アイゼンは持ってきている。駅を出ると武甲山が美しい。採掘の進んだ山を美しいというのも変なのかもしれないが、それでも雪化粧したこの山は美しい。御花畑駅から秩父鉄道に乗り、7時ちょっと前に野上駅に到着。まだ薄暗いが、風はそれほど強くない。
(西武秩父駅から武甲山)
(朝の野上駅)
駅前の道を進み、国道を渡る。すると長瀞の花と緑を守る会が設置した案内板がある。わかりやすい道だが、一応確認しておくといいだろう。立派な落合眼科医院を過ぎた辺りから何となく見覚えのある景色が現れる。そのまま車道を進むと道標の立つ萬福寺に着く。萬福寺に着いた辺りでまた見慣れない光景となる。山の中に入ればもう少し思い出すこともあるのだろう。私有地内に休憩所が置かれた所からは南に展望が開ける。右手に見えるのはおそらく宝登山であろう。舗装路から山道に変わると谷間の暗い沢筋を登っていく。ちょうど二つの尾根に挟まれた辺りだ。水流で洗掘され、歩きにくい。左手に見える尾根を上がる分岐を見送ると笹薮を切り開いた気持ちの良い雑木林の道が延びる。ここから主尾根に上がるまでやや急な斜面を上がる。
(案内板)
(萬福寺)
(萬福寺近くから 右は宝登山)
(洗掘した道)
(笹原の道 ここからやや傾斜が急になる)
主尾根には道標が立ち、宝登山方面と北にそれぞれ広い踏み跡が延びている。北の踏み跡は木で通せんぼされていた。下にダウンを着込んでいたが、だいぶ体も暖まってきたので、ダウンを脱いで、雨具を羽織ることにした。道標が立つ地点からはしばらく緩やかな道が続く。風をそれほど強くなく、陽だまりハイクには最適なルートだろう。尾根が細くなる辺りはやや急な登り。周囲は雑木林で龍ヶ谷城跡の雰囲気によく似ている。そして春に歩いた十万劫山を思わせるところもある。木の間越しに長瀞の街を見下ろしつつ進むと檜の林が現れる。道はその林を避けて尾根の北側斜面を巻いていく。尾根上もよく下草刈りがされていて、そのまま歩いて行っても問題はないだろう。ただここは巻き道を使わせてもらう。
(尾根に上がった所)
(陽だまりの道 でも朝早いので寒い)
(長瀞の街を見下ろす)
巻き道をしばらく行くと御嶽山・天狗山分岐に出る。この分岐に来て、この巻き道で中高年の大集団に遭遇したのを思い出した。何故ああいった集団は少人数のグループや単独行の登山者を待たせて、自分たちが先へ行こうとするのだろう?そんなちょっと嫌な思い出がよぎったからなのか、真直ぐに進まずに天狗山へ寄り道していくことにした。これまでの道のりと同じく比較的緩やかなアップダウンが続く。ただなかなか目印となるような顕著なピークは現れない。やがて正面に岩か石碑のようなものを頂いた小さなピークが見えてくる。但し道はそのピークを巻いていくように付けられている。正規の踏み跡を無視してそのピークに上がると石積みの土台の上に置かれた石碑の裏側に出る。正面に回ると御嶽神社云々と書かれている。つまりここは御嶽山だ。近くの木に青い山名プレートが括り付けられている。う~ん、でもここは353mもあるのだろうか?
(天狗山分岐 左が天狗山への道)
(比較的緩やかな道が続く)
(御嶽山)
天狗山は御嶽山の先にあるようなので、そのまま石碑の前に延びる道を下っていく。あとで登り返すのが辛そうだ。祠や石碑の類が点々と置かれ、神まわりと書かれた標柱もよく見かける。だいぶ下ったなぁと思う頃、正面に小屋掛けのあるピークが見えてきた。小屋掛けに近寄ると天狗山と書かれた標柱がある。ここが天狗山で良いのだろうか?道はこのピークの手前で麓へと下っている。小屋掛けは白峰神社の建物で、中には二枚の地図が掛けられていた。エアリアと見比べると、どうやら総持寺から登ってくる道があるらしい。萬福寺の登山口も総持寺の登山口も野上駅から歩ける位置にあるので、総持寺から登る道も楽しいかと思う。
(三笠山の碑)
(白峰神社)
(神まわりの標柱)
往路を戻り、再び天狗山分岐に着く。道はわかりやすいが、地形図で現在地を追っていくのは結構難しい。檜の植林と雑木林が交互に現れる道を行くと雑木林の木の間越しに三角形をした山が見える。あれが当面の目標である宝登山だ。アップダウンが少ないなだらかな道はとても気持ちが良い。新緑や紅葉の頃に歩いても良い所だと思う。顕著でない鞍部へ下ると氷池分岐に着く。エアリアを見ると往復で30分強なので、氷池にも寄って行くことにした。最初は緩やかな斜面の下りで、じきに半円状の掘割道を下っていく。掘割道が終わるとクルマが通れそうな砂利道に出る。砂利道は沢沿いにあり、この沢から氷池へと水を引き込んでいるのだろう。沢沿いを下っていくと四角く区画された氷池が見えてくる。上から見る分にはかなり表面は凍っているようだ。ここの氷は夏が近づけば、阿左美冷蔵のかき氷として長瀞周辺の店で出されることになる。
(広い尾根)
(氷池分岐)
(沢沿いの砂利道を下る)
(氷池 なお製氷中につき立入禁止)
(掘割道を戻るところ)
(分岐手前には奇岩がある)
分岐に戻り、宝登山を目指す。もう長瀞アルプスの尾根も終わりに近い。植林と雑木林の混合林が広がる辺りが野上峠だ。峠道はどちらも通行禁止となっている。一応道形ははっきりしているようだが、地権者が立入禁止の措置を採っているのかもしれない。野上峠から少し行った所に小鳥峠があるが、こちらも氷池への道は廃道となっていた。道形もはっきりしていないようだ。小鳥峠を過ぎた辺りから何やら人の声が聞こえてくるようになった。もしかすると先行者がいるのかもしれない。一般車は通行禁止とされている林道へ出ると小さな犬を連れた中年のご夫婦を見かける。どうやら麓の白山神社から延々と登ってきたらしい。このご夫婦を追いかけつつ、無味乾燥な林道を登っていく。長瀞アルプスの入口から宝登山の入口まで結構距離があるのだ。
(野上峠)
(宝登山が近くなってきた)
(小鳥峠)
ゆっくりと歩いて、宝登山の登山口に着いたところでご夫婦に追いつく。ご夫婦よりも犬のほうがやたらと元気であった。ボクは犬も好きなのだが、何故か随分と警戒されてしまった。触れ合いたかったのだが、残念。ご夫婦を追い抜き、最後の登りに取り掛かる。まずは関東ふれあいの道名物土留めの木段がお出迎え。何とも恨めしいことにこの木段は五度に分けて現れる。まあ山頂までずっと木段が続くというのに比べればかなりましだが。犬は木段登りが苦手なのか、ご夫婦はだいぶ遅れて登ってくるようだ。ボクもゆっくりと行くとしよう。四つ目の木段を登り終えると岩っぽい道となり、右手が雑木林となっていて、明るい光が降り注いでくる。もう山頂は近い。最後の木段を登りきると右手に蝋梅園が見えてきた。緩やかに登ると広い宝登山(497.1)の頂上に着く。環境省と埼玉県が設置した立派な山名板と三角点があり、南側が蝋梅園となっていて、大きく開けている。最も長めの良いベンチにザックを下ろし、山頂からの眺めを楽しむ。まず左手に見える土饅頭のような山がこれから向かう蓑山だ。そこから右に行くと採掘が進む武甲山。途中を飛ばして、右手からは一際高く城峯山が聳え、そこから左に雪化粧した岩山が両神山だ。城峯山からの尾根続きに見えるのは皆野の破風山(はっぷさん)。その破風山の奥に見えるのが奥秩父の山々だ。右に最も高く見えるのが三宝山。その左隣の小さな突起が甲武信ヶ岳。その左のやや大きな山が木賊山だ。そこから一旦大きく下り、登り返す台形状の山は破風山(はふうさん)。さらに左隣の伸びやかな山は雁坂嶺。雁坂嶺の左に見えるのっぺりとした大きな山は和名倉山。そこから左に見えるゴツゴツした山は白岩山と芋ノ木ドッケ。雲取山は隠れてしまうらしい。武甲山と蓑山の間には武川岳や二子山などが見えるのだが、他の山の存在感が大きすぎて、あまり目立たない。
(宝登山入口)
(木段 正直鬱陶しい)
(ここを登れば山頂)
(宝登山頂上)
(両神山)
(手前は破風山 奥は左から雁坂嶺、破風山、木賊山、甲武信ヶ岳、三宝山)
(和名倉山)
(芋の木ドッケと白岩山)
(山頂からのパノラマ)
ゆっくり眺めを楽しんでいると先ほどの犬とご夫婦が山頂へやって来た。するとロープウェイ駅方面からも中高年のグループがやって来る。騒がしくなってきたし、そろそろお暇しよう。ロープウェイ駅へ向かって少し下ると木立の中の宝登山神社奥宮に着く。奥宮の脇には売店があり、老夫婦が開店の準備をしているところであった。品揃えを見るとお守りなどが主だったものになっている。神社の鳥居からは東側に展望が得られ、半円状に突き出す釜伏山がよく目立つ。よく見ると山の向こうに筑波山も見えている。神社の境内は結構広く、売店のベンチなどが置かれている。ん?何か小さなものが先ほどから動いている。チワワだ。売店のご主人の飼い犬だろうか。近寄っても逃げはしないのだが、写真を撮ろうとすると何故かそっぽを向かれてしまった。
(売店)
(宝登山神社奥宮)
(神社から釜伏山を望む)
(筑波山)
(チワワ)
境内を出て、ロープウェイ駅を目指す。こちらも蝋梅園となっていて、蓑山のほか、笠山や釜伏山などの外秩父の山が見渡せる。蝋梅園の中は明るい光を降り注ぐものの、流石に花を付けているものはまだ無い。ロープウェイ駅の近くには寒桜が立ち、小さな花を付けていた。ロープウェイの山頂駅に着くと駅舎内はひっそりとしていた。時間が早いので、利用する人がいないのだろうか。もちろんボクも利用するつもりはない。改札口前から小動物園へ向かって歩くとレストハウスがあるのだが、まだ開いていなかった。今日は休業だろうか。このレストハウス脇から宝登山神社へ向かって遊歩道が延びている。地形図に描かれている九十九折の道は広い砂利道となっている。しかし地形図には描かれない短絡路があるので、これを利用してぐんぐん下る。周囲は植林の最中で、東側の眺めが良い。山麓駅への道を分けると宝登山神社の前に出る。神様に今日一日の安全を願いつつ、長瀞駅へと向かう。長瀞駅から親鼻駅までは一応歩きの予定だ。ただ念のため駅探で時刻表を確認するとあと5分で三峰口行がやってくるという。これは乗るしかない!宝登山神社の参道をダッシュし、長瀞の駅舎に飛び込むと駅員さんが「どちらに乗ります~?」と声を掛けてくる。三峰を告げると間もなく電車が入ってくるので、遮断機が下りる前にホームに行ってくれとのこと。汗だくになってホームに上がるとちょうと電車がやって来るところであった。
(蝋梅園から蓑山)
(笠山 右手前が大霧山 鞍部は粥仁田峠)
(蝋梅園からのパノラマ)
(ロープウェイ駅を見下ろす)
(寒桜)
(蝋梅園)
(ここを下る)
(宝登山の下りから)
後編に続く。
DATA:
野上駅7:10~7:24萬福寺~7:55天狗山分岐~8:09御嶽山~8:13白峰神社~8:31天狗山分岐~8:45氷池分岐~8:54氷池~9:06氷池分岐
~9:12野上峠~9:17小鳥峠~9:20林道~9:30宝登山登山口~9:47宝登山~10:06宝登山奥宮~10:18山頂駅~10:57宝登山神社~長瀞駅
(秩父鉄道)親鼻駅
地形図 鬼石