務のよしなしごと

ハンプトン・コート宮殿の人々(完成時期未定)
「オペラ座の怪人」勝手に解説
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「オペラ座の怪人」第2幕 第7場 -2

2021-10-01 | 趣味

※当ブログのシステム設定により、行途中でのスペースが意図したとおりに表示されないことがあります。英語の台詞や歌詞及び和訳ではおかしな表示が現れることになりますが、ご容赦ください。

(アニータ=クリスティーンは何かに気づき咄嗟にドン・ファン=怪人から離れる。しかし、ベンチに座ったままのドン・ファンに離れたところから演技を続ける。直前までの陶酔の演技とは違い何かを確認しようとするかのような表情になる。)

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ANITA:(アニータ)
You have brought me to that moment when words run dry,
あなたは私を言葉が乾く瞬間へと連れて来た
To that moment when speech disappears into silence, silence...
言葉が沈黙の中へと溶け込む瞬間へと
I have come here, hardly knowing the reason why...
私はほとんど理由も知らずここに来た...
In my mind, I've already imagined our bodies entwining,
心の中では私たちの体が絡み合うことを既に想像している
Defenceless and silent - and now l am here with you:
抗うことなく声も出さず —— そして今私はあなたといる

(アニータは徐々にベンチの中央に座るドン・ファンに近づきテーブルの端まで来る。)

No second thoughts, I've decided, decided...
考え直すこともなく、私は決めた...
Past the point of no return - no going back now:
戻れないポイントを越え —— 今や戻ることもなく
Our passion-play has now, at last, begun...
私たちの情熱の舞台が今ついに始まる...

※passion-play には受難劇という訳がある。受難劇とはイエス・キリストが十字架刑で殺され受難を受ける過程に関する劇をいう(ウィキペディア)。クリスティーンにとっては今危ない橋を渡っているのであり、怪人の望むとおり最後まで演技を続けると身の危険にさらされることを自覚しながら逆に怪人を翻弄し優位に立とうと試みているように解釈できる。

Past all thought of right or wrong - one final question:
良し悪しの考えを全て超えて —— 最後の問いかけ

(アニータはドン・ファンの背後に回り、ゆっくりと上がってきた彼の両手を後ろから掴み上の方へ引き上げる。そして彼の両腕を左右交互に伸ばしたり大きく広げたりする。)

How long should we two wait, before we're one...?
我々二人が一つになるまでどれだけ待てばいいのか
When will the blood begin to race, the sleeping bud burst into bloom?
いつ血潮がほとばしり、眠っていたつぼみが一気に花開くのか
When will the flames at last, consume us...?
最後に炎が我々を焼き尽くすのはいつなのか

(フードを被った人物の正体をはっきりと悟ったのか、アニータは突然ドン・ファンから再び離れる。ドン・ファン、アニータの右腕を掴む。逃げようとする者と逃すまいとする者が引き合う。そしてドン・ファン=怪人はアニータの両腕を掴むことに成功し、自分の部屋へ引きずり込もうとする。アニータ=クリスティーンは抵抗する。)

BOTH:(二人)
Past the point of no return, the final threshold –
戻れないポイント、最後の入り口を越え
The bridge is crossed, so stand and watch it burn
橋を渡り、それが焼け落ちるのを見る

(クリスティーン、ようやく振りほどき、フードを被ったままの怪人と向き合う。)

We've passed the point of no return...
戻れないポイントを越えることになる

(クリスティーンがフードを取ると案の定仮面を付けた怪人が現れる。下手側階段上部の暗がりにはラウルがおり、怪人を捕える機会をうかがっているように見える。クリスティーンは少しの間呵責の念に囚われたかのような表情を浮かべ、何をどうするか分からないでいるように立ち尽くす。すると怪人が自分の気持ちを言葉に出す。クリスティーンは戸惑いと悲しさの入り混じった表情をして彼の言葉を聞く。)
※クリスティーンはかつて地下の隠れ家で怪人が語っていた彼の悲しみを思い出したのである。自分に歌唱力をつけてくれた恩人でもある怪人に恐ろしさを覚えていたとしても、仮面を付けた顔を暴くことは裏切りのように感じたのである。

PHANTOM:(怪人)
Say you'll share with me one love, one lifetime... ,       一つの愛、一つの人生を共にすると言ってくれ...
Lead me, save me from my solitude...                         孤独から救い導いてくれ...
Say you want me with you, here beside you...         傍に私が必要だと言ってくれ...

(怪人は自分の手から指輪を外し・・・)

Anywhere you go let me go too –              どこへ行こうと一緒に行かせてくれ

(と言ってクリスティーンの指にはめる。彼女は怪人のするままにさせる。)

Christine, that's all I ask of...            クリスティーン、それが私の願う...
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(怪人が言い終わらないうちにクリスティーンは意を決したかのような表情で怪人の仮面を外す。怪人は大声を上げ、彼女の手首を掴み上手側階段へ向かう。)
※クリスティーンは怪人の言葉を聞き、彼の悲しみや心情を改めて理解したと思われる。彼女の心情の変化が恐ろしいという感情を少し残しつつも指輪を自分の指に受け取ることになった。そして、かつて仮面の下に見た恐ろしい顔を確認し、その恐ろしさを克服するために、あえて仮面を外したと解釈できる。

RAOUL:(ラウル)No!  Don’t shoot!         だめだ!撃つな! 

(銃声が一発。ラウルが舞台中央に出て来る。怪人は階段下へと火の玉を投げつけクリスティーンと共に走り去る。)

No!  What are you doing there?           だめだ!何をしている!

(ラウルを追って他の者も出て来る。メグが奥の部屋へのカーテンを開けると、首をくくられた状態で宙づりにされたピアンジの死体が現れる。バレリーナたちが悲鳴をあげ、場が混乱し騒然とする。)

CHIEF:(隊長)
Give me this, monsieur.   Get water, monsieur!    Upstairs, monsieur!  Come!
これをください。水を!  上です。来て!

※この台詞は隊長がラウルに言っている言葉だが、内容がよく分からない。しかし周囲の者も興奮している中での一部であることは分かる。

(舞台中央付近でジリー親子が抱き合っているのが一瞬画面に映る。)

RAOUL:(ラウル)
Monsieur Firmin, come!   Open the doors, monsieur!        フィルマン!  ドアを開けろ!

GIRY:(マダム・ジリー、ラウルに)
Monsieur le Vicomte!  Come with me!  I know where they are! 
子爵様!私と来てください!彼らがどこにいるか知っています。

RAOUL:(ラウル)Can I trust you?         信じていいのか?

GIRY:(マダム・ジリー)
You must.  But remember: your hand at the level of your eyes! 
ええ。手を目の高さに保つようにしてください。

RAOUL:(ラウル)Why...?        なぜだ...?

GIRY:(マダム・ジリー)
The Punjab lasso, Monsieur. First Buquet. Now Piangi.        投げ縄です。最初はブケ。そしてピアンジ。

MEG:(メグ、両手でラウルの右手を目の高さに上げて)
Like this, Monsieur.  Look, I'll go with you.        こうやってください。一緒に行きます。

GIRY:(マダム・ジリー)
No Meg! No, you stay here!         だめ、メグ!だめ!ここにいなさい!

(ラウルに向かって)

Come with me, Monsieur.  Do as I say.  But hurry, or we shall be too late...
私と一緒に来てください。私の言うとおりにして。急いで、遅くなってしまうかも...

(この間に他の人々は舞台からいなくなっている。マダム・ジリーとラウルが上手側階段を、メグが下手側階段を上がっていくところで照明が暗くなり第7場が終了。)

第7場後半の動画 


「オペラ座の怪人」第2幕 第7場 -1

2021-10-01 | 趣味

※当ブログのシステム設定により、行途中でのスペースが意図したとおりに表示されないことがあります。英語の台詞や歌詞及び和訳ではおかしな表示が現れることになりますが、ご容赦ください。

(「ドン・ファンの勝利」の最終場面。上手側階段の下に大きなテーブルとベンチが設けられ、テーブルにはドン・ファンの財力を示すような豪華な食事の用意。オーケストラが演奏する曲と共に舞台奥からドン・ファンの友人パサリーノに扮した役者に手を取られた端役のカルロッタをはじめ悪党や騒がしい小娘たちに扮した大勢が登場し、歌い出す。)

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“DON JUAN TRIUMPHANT”

CHORUS:(コーラス)
Here the sire may serve the dam, here the master takes his meat!       ここでご主人は女をもてなし、ここでご主人は肉を食らう
Here the sacrificial lamb utters one despairing bleat!                            ここで生け贄の子羊は絶望的な声をあげる

CARLOTTA AND CHORUS:(カルロッタとコーラス)
Poor young maiden! For the thrill on your tongue of stolen sweets
かわいそうな乙女!盗んだお菓子を舌で味わうスリルと引き換えに
You will have to pay the bill - tangled in the winding sheets! 
シーツに絡められてつけを払わねばならない!
Serve the meal and serve the maid!
食事を出し、乙女を出すのだ!
Serve the master so that, when tables, plans and maids are laid,
食卓と企てと乙女を並べてご主人に奉仕するのだ
Don Juan triumphs once again! 
ドン・ファンがまた勝利するのだ!

(ドン・ファンに扮したピアンジがジプシーの踊り子に扮したメグと共に舞台奥から現れる。踊り子はドン・ファンから何かを渡され彼の頬にキスをする。するとドン・ファンは更に彼女に何かを投げ渡す。メグはそれを両手で上手にキャッチして彼から離れる。そしてドン・ファンは友人のパサリーノに語り掛ける。)
※文字による台本ではお金や財布を渡すとされているが、遠目ではそうとは分からない。何かの報酬として渡したことが推測できればいいだろう。

DON JUAN:(ドン・ファン=ピアンジ)
Passarino, faithful friend, once again recite the plan.       パサリーノ、忠実な友、もう一度計画を確認しよう。

PASSARINO:(パサリーノ)
Your young guest believes I'm you - I, the master; you, the man. 
若いお客は私があなただと信じ込んでいる ―— 私が主人であなたが従僕。

※ドン・ファンの計画とは、友人のパサリーノに従僕の服装を着せ、女を誘惑させる。手口は「主人の留守中に、主人の邸宅で食事をして楽しい時間を過ごそう。」というもの。女が来たところでドン・ファンが従僕になりかわってものにしようとする、ストーリーを追うには少し複雑な企てである。

DON JUAN:(ドン・ファン)
When you met you wore my cloak, she could not have seen your face.
お前が(彼女と)会ったとき私の服(従僕の服)を着ており、彼女はお前の顔を見てはいない。
She believes she dines with me, in her master's borrowed place!
彼女は私(従僕)と食事をすると思っている — 彼女の男(従僕)が借りた場所でな!
Furtively, we'll scoff and quaff, stealing what, in truth, is mine.
本当は私(従僕に扮する主人)のもの(酒食等)を盗み密かに悪ふざけをする。
When it's late and modesty starts to mellow, with the wine...
時間も遅くなり、(彼女の)慎みがメロメロになり始める、ワインでな...

PASSARINO:(パサリーノ)
You come home! I use your voice - slam the door like crack of doom!
(私が演じる)あなた(=主人)が帰って来る  私はあなたの声色を使う。運命が裂けるようにバタンとドアを閉める!

DON JUAN:(ドン・ファン)
I shall say: 'come - hide with me!  Where, oh, where?  Of course - my room!'
(従僕を演じる)私が言う「 こっちに隠れよう。どこにって?もちろん私の部屋だ!」

PASSARINO:(パサリーノ)
Poor thing hasn't got a chance!      かわいそうな獲物は逃げるチャンスがない!

DON JUAN:(ドン・ファン)
Here's my hat, my cloak and sword.       私の帽子、着物、そして剣だ。(と言ってパサリーノに渡す。)
Conquest is assured, if I do not forget myself and laugh...       自分を忘れて笑わなければ成功間違いなしだ…

(ドン・ファンはパサリーノの衣装をまとい、フードを頭から被り顔を隠す。そして舞台奥の部屋へと隠れる。するとすぐにアニータに扮したクリスティーンが上手側階段から降りて来る。)

ANITA:(アニータ=クリスティーン)
'...no thoughts within her head, but thoughts of joy!      「...頭の中には何の考えもなく、喜びの思いだけ!
No dreams within her heart, but dreams of love!'             心の中に夢はなく、愛の夢だけ!」

(誰もこの時気づいてはいないが、ピアンジは縄で首を絞められ殺されている。そしてここから怪人がピアンジの代わりにドン・ファンを演じる。)

PASSARINO:(パサリーノ、声だけ)
Master?      ご主人様。(どんな具合ですか?)

DON JUAN:(ドン・ファン=怪人、声だけ)
Passarino - go away!  For the trap is set and waits for its prey...
パサリーノ、行っても良いぞ!  罠が仕掛けられ獲物を待つだけだ…
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(この間、アニータはショールをテーブルに置き、そこを一周した後、ベンチに座りリンゴを手に取る。するとドン・ファン=怪人がフードを頭に被ったまま現れ、彼女に声を掛ける。)
※旧約聖書の創成期ではイブが禁断の果実リンゴを食べアダムにも分け与える。食べ終わるとそこから二人は裸でいることに恥ずかしさを感じるようになったとされる。禁断の果実リンゴは人間の性に関する快楽に関連付けて隠喩として使われる(ウィキペディア)。リンゴを手にすることはドン・ファンとアニータの今後を予測させる動作になっている。

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“THE POINT OF NO RETURN”

DON JUAN:(ドン・ファン)
You have come here in pursuit of your deepest urge,
お前は最も深いところにある衝動を求めてここに来た
In pursuit of that wish, which till now has been silent, silent...
今まで沈黙していたその願いを求めて…

(アニータはリンゴを手にしてベンチから立ち上がり、ドン・ファンから距離を取るようにテーブルから離れる。)

I have brought you, that our passions may fuse and merge –
私は我々の情熱が溶けて融合するようにお前をここに連れて来た
In your mind you've already succumbed to me,
心の中でお前は既に私に屈している
Dropped all defences, completely succumbed to me –
護りをすべて取り払い、完全に屈したのだ
Now you are here with me: no second thoughts, you've decided, decided...
今やお前は私とここにいる:考え直すことなく、お前は決めたのだ…

(ドン・ファンはアニータからリンゴを取り上げ、杯を渡す。)

Past the point of no return - no backward glances:      戻れないポイントを越え —— 後ろを振り返らず
Our games of make believe are at an end...      我々の戯れは終わりに来ている...

(ドン・ファン、アニータに杯を飲み干すよう手で促し、彼女は一気に飲み込む。)

Past all thought of 'if' or 'when' - no use resisting:
「もし」とか「いつ」という考えを越え —— 抵抗しても無駄だ

(ドン・ファン、飲み終えたアニータの右手首付近を取り踊りに誘う。しかしアニータは少しの間彼に合わせて踊るような動作をするが、突然身を翻し彼を焦らすように離れ、左手に持っている杯をテーブルに置く。そしてベンチに座る。)

Abandon thought, and let the dream descend...        考えることを捨て、夢に身を委ねるのだ…
What raging fire shall flood the soul?        どんな猛烈な火が魂を氾濫させるのか
What rich desire unlocks its door?        どんな止めどない欲望がドアを破るのか
What sweet seduction lies before us...?        どんな甘い誘惑が我々の前に横たわっているのか

(ドン・ファンは座っているアニータに近づき背後から誘惑を続ける。ドン・ファンは右手を彼女の右腕から肩、そして首へと動かす。アニータは酔いが回ってきて陶酔の表情を浮かべる。)

Past the point of no return, the final threshold –       戻れないポイント、最後の入り口を越え
What warm, unspoken secrets will we learn!         どんな暖かく言葉にできない秘密を我々が学ぶのか!

(ドン・ファン=怪人、背後からアニータの顔を両手で包むようにし、次に彼女の左手に左手を重ね右手は彼女の右肩に置いたまま左手をアニータの腰から胸の方へと徐々に上げていく。)

Beyond the point of no return...        戻れないポイントを越えて...

(アニータ=クリスティーンは何かに気づき咄嗟にドン・ファン=怪人から離れる。)