あ可よろし

「あきらかによきこと」は自分で見つける・おもしろがる
好奇心全開日記(不定期)

5020?

2024-06-16 | 本(文庫本)
林真理子さんの『小説8050』を読みました。

中学受験で難関校に進学した息子・翔太。しかし学校で酷いいじめにあい、不登校になって自室に引きこもってしまった。それから20歳を過ぎるまで両親や姉と接触することもなく、ただただ引きこもりの生活を続けていた。このままでは我が家も「8050問題」の当事者となってしまう。歯科医院を営む父は、息子の引きこもりの本当の原因から探り始める。

長年引きこもる中年となった子どもとそれを支える高齢者の親の年齢から「8050問題」と呼ばれます。立派な社会問題です。
その「8050」を表題としてはいますが、物語は50代の親と20代の息子。だから正確には「5020」であろうかと。物語を読んでも、まだどうにかできる「5020」なんだろうな、という感想でした。本当に「8050」だったら、もっと深刻でもっと悲惨なことになっているだろうと、簡単に想像できます。
でも、正直5020だったから読めた、ってところもあります。引きこもりの原因になったいじめの実態を明らかにし、犯人(あえて犯人と記します)をあぶりだし、一緒に戦ってくれる弁護士を得て、息子を再生していく。経済的にまったく困窮していない家庭の「5020」だからできる設定です。
これが世にいうところの8050ならそうはいかない。親も子も本当の地獄。この先の展望なんてまったくない、小説にできるものじゃない現実。

そこまで深刻にならなくて済むので、わりとスラ~っと読めた方だと思います。林さんの作家力の高さはすでに知っていますから、本作でもグイグイ読ませるように導かれました。最後の超ハッピーエンドだけはどうにも作り話すぎて(小説なんだから作り話で当たり前という意見はナシ)ポカンとしちゃって、これまで読んだ林真理子作品ほどの感動はなかったのが残念。でも全体的に面白い作品ではありました。
もうね、理事長とか辞めて作家活動に専念すればいいのに。この人の作品の面白さを知っているからこそ、心の底からそう願うのです。

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