あ可よろし

「あきらかによきこと」は自分で見つける・おもしろがる
好奇心全開日記(不定期)

読書の楽しみ

2008-02-16 | 本(文庫本)
あれからまだ宮城谷昌光作品にはまったままです。
宮城谷さんの小説に関しては、どうやら「ひき」が良いらしく、今のところ読む順番に間違いがありません。今回とりあげた作品も続けて読んだのですが、商(殷)王朝の「始めと終わり」を順に読むことができ、大正解なのでした。

商王朝の始まりは、紀元前1600年頃。その時代をテーマにした作品が『天空の舟-小説・伊尹伝』。商の湯王を輔け、夏王朝から商王朝へと導いた名宰相・伊尹(いいん)の生涯を描いた物語です。
次に読んだのが『太公望』でした。伊尹の時代から600年ほど経った商王朝の末期。湯王と伊尹が作った理想的な国の形は、600年もすると堕落しまくり、暴君によってズタズタにされてしまうのでした。そんな時代だからこそヒーローが現れるわけで、商王朝ができたときの伊尹のように、この時代では太公望が登場するのです。
画像には入っていませんが『太公望』のあとに、太公望と対立することになる商王朝の側から書かれた作品『王家の風日』も読みました。「ひき」はバッチリです~。

『太公望』は、影の部分を持っているけどそれを見せず「打倒・商」のために諜報機関的な組織をまとめあげる太公望がむちゃむちゃカッコイイです。カッコイイはずなのに「対・女性」では全然格好良くないところがさらに良かったりします。これは『孟嘗君』の白圭(風洪)にも通じるカッコ良さだなぁと、このタイプにめっきり弱いことを自覚したりして…。
最近感じているのは、歴史小説を読む醍醐味がやっと少しわかってきたかな? ということ。例えば今回であった作品で言えば、商王朝が滅んだのは紀元前1046年のことですから、その時代の詳細など正確に残っているはずもなく、伝えられているあらすじのような史料から小説が書かれて、その時代に活躍した登場人物が浮き立ってきます。まさにそこが、歴史を扱った小説を読む楽しみなのではないかと思ったりします。
読書の楽しみとして「お気に入りの数行を見つけられるかどうか」ということもあると思います。今回は『天空の舟』でそれを見つけることができました。
上巻254ページ。まだ「車」とか「馬車」の存在を知らない人が多かった時代に、車輪がどういうものであるかを顎(がく)から聞いた摯(し、後の伊尹)は、馬車の模型を作ります。それが完成したとき、顎が近隣の家から飼い犬を借りてきて、車を引かせようとするシーン。

「この犬なら、心配ない」
 と、顎は犬にあらためて縄をかけ、轅の左右に配した。それを早朝にひきだし、それっ、と餌をちらつかせて、自分から走り出した。犬が追う。摯も走った。
「やあ、動いた、動いた。走るわ、走るわ」
 車輪は宙に浮くように回転した。朝霧が爍々といちめんに光る早春の野である。顎の幼児のようなはしゃぎぶりに、摯もつられて喜笑し、舞うような走りぶりになった。野辺をあかるくさわがせながら奔走する影であった。

この後すぐに車輪は壊れてしまうのですが、何て美しいシーンなのだろうと、この数行だけを何度も読み返してしまいました。これまでに読んだ宮城谷作品の中で、ここがいちばんのお気に入りです。この数行に出会うことができて、幸せでした。
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4 コメント

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う~む (なおきちどん)
2008-02-16 23:06:32
とみさんは通勤は電車?
ワタシも昔、バス通勤の時はかなり本を読めたんだけど…。
車通勤になり、ニャンコ家族が増えたりしてから布団の中で読む時間もメチャ減ってしまってさ。
とみさんに紹介してもらった本も、軽めの内容のものしか読めないんだわ~
歴史物とかは今までもほとんど詠んだことないし、手が出ずらいのかな~
寝る前に読むのはいつもアホらしいくらいの本なんだ
脳ミソ危ない?
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いってますね~ (ハナキャップ)
2008-02-17 21:00:54
どしどしいってるんですね~。 
私、あんだけ勧めておきながら‘太公望‘も‘天空の舟‘も読んでないわ…オホホホ
実は‘子産‘でつまづいてから、ちょっと浮気してるウチに、
すっかり放浪癖がついちゃいました。
確かに読順って大事ですよね~! それも浮気の原因かも…
とみさんのをなぞってまた復縁しようかな~なんて思っちゃいました。

そうそう‘孟夏の太陽‘は‘孟嘗君‘がらみで、サクッと読めてお勧めです。
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なおどんさん (とみ)
2008-02-17 23:08:17
電車通勤ではあるけど、朝はまったく読書ができる車内状態ではありませんね
帰りの車内では読むこともできるけど、ここ数週間、本を読む余裕のようなものがないのです。
なおどんさんのところにコメント残すのも出遅れてるし…。

歴史モノって、読み始めたら面白くなってハマっちゃった、ってところです。
太公望も、これまでずっと「釣りをする人」って認識でしかなかったもんね~
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ハナキャップさん (とみ)
2008-02-17 23:20:39
おお! 孟嘗君がらみで『孟夏の太陽』ですね! メモメモ…
ありがとう。次、行きます。とみ、行きま~す!(何をアムロみたいに言うてんねん!)
こうして、年始に買った文庫本棚が、宮城谷昌光作品で埋められていくのですわ。
『孟嘗君』好きなハナキャップさんなら『太公望』の面白さをわかってもらえるはず。
是非「読書の冬」のリストに加えてみてくださいな。
そう言えば浅田さんの文庫の新刊、最近出てないなぁ~。そろそろ来ても良さそうなんだけどな~。
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