まだまだ 先

気になったことや思いついたことなどをときどき書きます。

劇場 

2019-08-02 20:37:03 | 日記
劇場 「又吉直樹」

読了しました。

初めは、文章がばらばらで退屈で、途中で何回か読むのをやめようかと思いましたが、後半に行くにつれてとても惹き付けられました。

はぁ~。いい話やった。
いい小説って小手先じゃなく、作者の生きざまを作品に全てぶつけている気がして、読み終わる度に心に衝撃が与えられる。



本を読み進めている間、ずっと嫌な気持ちがつきまとっていた。

その理由は、主人公の永田と自分が似ているからだとと気づいた。

具体的には、

頭の中がぐちゃぐちゃなところ。
なにもかも無くしたくなるところ。
大切なものを失ってから気づくところ。



自分と似ているなと思った場面は、
引っ越しをするシーン。

永田は彼女の沙希ちゃんと一緒に住んでいて、食事や光熱費なども出してもらっており、わざわざその環境を捨ててまでも一人暮らしする必要がないのに、頑なに引っ越しをしようとする。

本業の演劇でうまくいっていないのに、私生活が恵まれていることに違和感を覚えたのだろう。
本当は恵まれた環境に感謝して、一層本業に取り組むべきなのに、そのバランスが悪いので、恵まれた環境を捨てたくなる。

こういうことは自分にもあると思った。

何もかも捨ててしまって最低の状況になりたい気持ちがときどき湧いてくることがある。



そして最後の場面。
沙希ちゃんがこれ以上東京におれず、実家にかえってしまった。
そうなったということは、別れるということなんだろうなということは永田もわかっていた。ただそのことは認めたくない。


そして最後に沙希ちゃんと会う。

沙希を失うことになってから、自分の本当の気持ちに気づく永田。いや、初めから気づいていたけれど、それを見てみないふりをしていた。


永田がそこで言ったのことに心を動かされた。



一緒においしいものを食べて、一緒に散歩して、一緒に遊びにいって、一緒にねる。


そんな当たり前なことを失うまで気づかない永田の不器用さ。
失ってから素直になった永田に対して、沙希ちゃんが言ったことば、



「ごめんね。」





この四文字にすべてがつまっていると思う。


この小説は、沙希の最後のセリフ

「ごめんね。」

のために書かれた物語だといっても過言ではないと思う。それくらいすべてがごめんねにつまっている。



永田の不器用さ
沙希の優しさ
そして二人の運命。


物語の中のささやかなできごとに胸が苦しくなり、また感動しました。


ぜひ読んでみてください。


西加奈子 ふくわらい

2019-07-25 17:29:06 | 日記

西加奈子 「ふくわらい」


あっという間に読了しました。

文中に何度も出てくるキラッとした文が印象的でした。
題名「ふくわらい」の意味が読みはじめるまで謎でしたが、一行目からふくわらいについてかかれていてずんずんと読み進めてしまいました。


守口廃尊のセリフで天才について語られていたシーンが特に心に残りました。

「あんたは、まっすぐだから。全部、真正面から、見て、それから、全部受け止めるから。」

物事をまっすぐみて、まっすぐ受け止めることができる人は本当に強くて、そうゆうひとが天才と呼ばれるんだなと思いました。

また句読点の使い方などから、廃尊の息づかい、天才になれなかった無念な気持ち、そして諦念などを感じました。



西かなこさんの小説は、なにか強い力で心をぐっと引っ張られるような感覚にさせてくれます。


これからも西さんの小説を読んでいきたいです。
ありがとうございました。


百田尚樹 引退作品

2019-07-24 18:32:31 | 日記
百田尚樹 「夏の騎士」

読了しました。
普段単行本は値段が高くてあまり買わないのですが、百田尚樹さんが引退すると聞いたので記念に購入しました。

はじめは引退作品だと身構えていましたが、内容は小学生時代の何気ないきらきらとした日常が描かれていて、読み終わったあとさわやかな気持ちになりました。

何度も予想を少しだけ裏切られ続けました。
特にエピローグ。

最後の三行は何度も読み返しました。

素敵でした。


本当に小説家という人たちはすごいなと思います。
なぜこんなに心があたたまるストーリーが書けるのか。

百田さんの本がもう読めないのは寂しいですね。


幸せなひとときをありがとうございました。

サラバ

2019-07-19 20:10:21 | 日記
西加奈子 「サラバ」


読了しました。
本当に言葉に表せないほど、もやもやとした気持ちのよい余韻です。

すごかった。
こんな本をかける人がいるんやなと思った。

心をぐっと横にはたかれてる感覚。
力強い物語でした。

興奮が冷めやらないのでうまく言葉にできません。

信じるものってなにか?
自分の軸って何か?

呆然とした。
すごすぎる小説でした。

とにかく読んでください。

レンタル世界

2019-07-06 17:28:39 | 日記
朝井リョウさんの「ままならない私とあなた」に収録されている レンタル世界 を読んだ。


昨日からのどが痛くなり、体調が悪いなーと思っていたけれど、本屋には行きたいから行ってぷらぷらしているときに見つけた本がこの本だった。

本当は新書などを見に行く予定だったけれども、なんか読む気がおきなくて、文庫コーナーを見ているとふと目に入ってきたから購入した。

すべてをさらけ出して、人付き合いをしてきた主人公と友人や恋人をレンタルしてその場をしのぐ人たちの対比がおもしろかった。


さらけだすからこそ仲良くなれるということは傲慢な理論だなと思った。
自分はこれだけさらけ出しているのだから、あなたもさらけ出しなさいという強要。

そして、誰にも秘密がある。
すべてをさらけ出して付き合うことの難しさを感じた。

さらけ出すことが良いことではなくて、人とうまく付き合うために必要な距離をとる技術が必要だと思った。