劇場 「又吉直樹」
読了しました。
初めは、文章がばらばらで退屈で、途中で何回か読むのをやめようかと思いましたが、後半に行くにつれてとても惹き付けられました。
はぁ~。いい話やった。
いい小説って小手先じゃなく、作者の生きざまを作品に全てぶつけている気がして、読み終わる度に心に衝撃が与えられる。
本を読み進めている間、ずっと嫌な気持ちがつきまとっていた。
その理由は、主人公の永田と自分が似ているからだとと気づいた。
具体的には、
頭の中がぐちゃぐちゃなところ。
なにもかも無くしたくなるところ。
大切なものを失ってから気づくところ。
自分と似ているなと思った場面は、
引っ越しをするシーン。
永田は彼女の沙希ちゃんと一緒に住んでいて、食事や光熱費なども出してもらっており、わざわざその環境を捨ててまでも一人暮らしする必要がないのに、頑なに引っ越しをしようとする。
本業の演劇でうまくいっていないのに、私生活が恵まれていることに違和感を覚えたのだろう。
本当は恵まれた環境に感謝して、一層本業に取り組むべきなのに、そのバランスが悪いので、恵まれた環境を捨てたくなる。
こういうことは自分にもあると思った。
何もかも捨ててしまって最低の状況になりたい気持ちがときどき湧いてくることがある。
そして最後の場面。
沙希ちゃんがこれ以上東京におれず、実家にかえってしまった。
そうなったということは、別れるということなんだろうなということは永田もわかっていた。ただそのことは認めたくない。
そして最後に沙希ちゃんと会う。
沙希を失うことになってから、自分の本当の気持ちに気づく永田。いや、初めから気づいていたけれど、それを見てみないふりをしていた。
永田がそこで言ったのことに心を動かされた。
一緒においしいものを食べて、一緒に散歩して、一緒に遊びにいって、一緒にねる。
そんな当たり前なことを失うまで気づかない永田の不器用さ。
失ってから素直になった永田に対して、沙希ちゃんが言ったことば、
「ごめんね。」
この四文字にすべてがつまっていると思う。
この小説は、沙希の最後のセリフ
「ごめんね。」
のために書かれた物語だといっても過言ではないと思う。それくらいすべてがごめんねにつまっている。
永田の不器用さ
沙希の優しさ
そして二人の運命。
物語の中のささやかなできごとに胸が苦しくなり、また感動しました。
ぜひ読んでみてください。