現代へのまなざし

日本とはなにかを探求します。

イギリスのEUからの離脱-神話を信じる大衆の悲劇-

2016-06-26 20:09:46 | 政治
(要旨)
・イギリスのEUからの離脱を問う国民投票で、予想外の結果だが、EU離脱派が勝利した。
・アメリカの大統領予備選挙で排外主義のトランプ候補が共和党の候補となったことと類似している。
・日本では、歴史修正主義者で右翼のポピュリストである安倍晋三が既に政権を担っている。
・ポピュリストが作り出す神話を信じる大衆は、その結果、悲劇を受け入れることになる。

(本文)
 イギリスでのEU離脱を問う国民投票の結果、イギリスのEUからの離脱が決定された。イギリスの将来を考えると、当然、残留派が勝利すると思っていただけに、世界中の良識派から見ると予想外の結果だった。離脱派は、主権の回復や移民のイギリスへの流入規制などを主に訴え、残留派は国際社会におけるイギリスに対する経済・雇用への影響やEU諸国との協調を訴えていたが、若い人達はEU残留に投票し、老人達はEU離脱に投票したこと、また、教育水準別の投票結果についても、中卒相当の低学歴層はEUからの離脱を求め、大卒以上の高学歴層はEU残留を望んでいたことなどから、移民規制など感情的な発言が老人や低学歴の民衆に支持されたと推測される。
 将来展望を持って、自国のために何が有用であり、何をすべきかを深く考える高学歴層と、将来展望に欠け、目先の利益、感情的な発言に左右され、一旦デマが垂れ流されるとそのデマを信じる低学歴層との対比が明確に現れた投票結果であると言える国民投票であった。

 アメリカの大統領予備選挙においても同様の現象が見られたことは、世界中の良識派から驚きを持って見られていた。人種差別主義、イスラム教徒への根拠のない差別、そのような発言を繰り返していたトランプ氏が共和党の大統領候補者となることがほぼ確実となっている。
 アメリカの過去の栄光に思いをはせる白人高齢者、社会に不満を抱いた低学歴層や低所得者層などが大衆迎合の発言を繰り返すトランプ氏、政治学的に言えばポピュリストであるトランプ氏を熱狂的に支持している。アメリカ大統領候補者選挙とイギリスのEU離脱を巡る選挙で同様の傾向が明確になったことが、世界中の良識派を驚かせているのである。

 しかし、このような現象はすでに日本で確認されている。東京都知事であった石原慎太郎氏の発言や大阪市長、大阪府知事であった橋下徹氏の発言は、敵を作り、その敵を激烈に批判し、そして不満を抱えた大衆の支持を得て自分達の目的を達成するという、まさにポピュリストの手法であった。大衆は、その発言の真偽を問うことなく、ポピュリストのデマを信じて熱狂的に支持したのである。石原元都知事や橋下元大阪府知事への支持は地方公共団体の首長に対する支持であり、その影響が地方に限定されることから、国政レベルと比較すればまだマシであるが、彼等と同じ手法を用いる人間が内閣総理大臣になったのであれば、国家として大きな損失であり、国際社会に対する恥でしかない。
 福島はコントロールされている、消費税率10%への引き上げは確実に実施する、私は立法府の長であるなどと平気で嘘をつき、さらにマスコミがその嘘を指摘することもなく、その結果、大衆がそのデマを信じ、安倍のようなポピュリストを支持するようになる。欧米での、ポピュリストに影響される民衆について驚きをもって報じる日本のマスコミだが、日本では、海外から歴史修正主義者として軽蔑されているポピュリストの安倍がすでに政権を取っていることについて、特段の報道を行うことはない。
 日本では、安倍が生み出す神話を、マスコミがそのまま垂れ流し、欧米で驚愕されるような事象がすでに起こっているのである。政権を取ってから3年以上経過し、さらにその嘘、デマは鋭さを増しているが、それを指摘するマスコミはほとんど存在しないという、先進国ではあってはならないことが日本では起きているのである。

 さて、ポピュリストを熱狂的に支持する人達にはどのような結果が待っているのであろうか。ポピュリストの支持者には明確なビジョンもなく、将来に対する予測もないため、自分達がどのようなことになるのが全く理解していない。そのため、ポピュリストにとって彼等は都合の良い、切り捨ててもよい駒でしかない。それは彼等の置かれた状況について、ポピュリストは、自分のことをもっと支持すればよりよい状況になると繰り返しデマを垂れ流す事が出来るからである。「アベノミクスのエンジンをもっとふかせば、みなさんの生活はより良くなります。」というようなデマを垂れ流せば、支持者達は納得するのである。その結果は、多くの場合、ポピュリストの支持者にとって悲惨なものになっているのが歴史的な事実である。
 神話を信じて生きている人達は、信じている神話が神話である限り幸せであるかもしれない。しかし、このような神話は多くが、早晩、化けの皮が剥がれるものである。神話の崩壊を目の前にして、無気力になるか、ポピュリストを激烈に攻撃し、正反対の行動を取るのか、それとも神話とともに消え去るのか、それはわからない。
 真実を知ろうとする努力もなく、心地の良い神話を信じている大衆は、その結末で悲劇を受け入れざるを得なくなるだろう。感情的な思考に終始する大衆が受け入れるのは、感情的な結末でしかない。彼等は、古代に生きた呪術を信じていた民と同様、理性的生物としての人間ではなく、あまりに野性的な人間と言わざるを得ない存在でしかない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

権力による神話の創作-権力が嘘を繰り返す効果-

2016-06-02 19:59:15 | 政治
(要旨)
・権力者は自分に都合のいい情報のみを国民に知らせ、都合の悪い情報は秘匿しようとする。場合によっては平気で嘘をつく。
・権力の暴走を食い止めるために、ジャーナリズムはより真実に近い情報を国民に提供する。
・権力者はジャーナリズムの影響の強さを知っているため、ジャーナリストを自らの味方にしようと懐柔策を駆使する。
・現在の日本は、ジャーナリズムが機能しない状況になりつつあり、北朝鮮と同様、権力者の情報統制が進んでいるのではないか。
・国民一人ひとりが情報の真偽を確かめる能力、情報リテラシーを身につける必要がある。

(本文)
 日本の現政権である安倍政権は、アベノミクスにより日本経済がデフレから脱却しつつあり、雇用統計(失業率の改善などの数値)など政権にとって都合のいい数字だけを取り上げ、アベノミクスの成果を強調している。
 一方で、国内消費は伸び悩み、GDP(国内総生産)は停滞し、経済成長率もマイナスを記録するような状況になっている。このため、安倍総理は伊勢志摩サミットの場で、現在の世界経済の状況が「リーマン・ショック前の状況と似ている」と指摘し、消費税増税の延期の口実にしようとした。この経済状況への認識が誤りだと指摘されると、そのような発言はしてないと嘘をついている。G7サミットの場で、主要先進国首脳の前で平然と嘘をつき、その嘘を指摘されると、今度は自分の発言を否定するという、嘘の上塗りを重ねているのが安倍総理である。
 雇用統計などのような自分に都合のいい情報を強調する一方で、アベノミクスが成功していないという情報は隠し、世界経済がリーマンショック前だというような嘘を平気で言い、その認識を馬鹿げた認識だと指摘されると、そんな発言はしていないと平気で嘘をつくのである。

 海外メディアは安倍総理の嘘を指摘し、つまり、選挙対策のための消費税増税延期の根拠とするための発言であると指摘する一方で、日本のメディアでは一部の新聞がこの間違った認識と、安倍総理の選挙対策であることを指摘しつつも、NHKなどはそのような指摘もすることなく、政権広報として安倍総理を擁護する報道を行っている。
 一般の国民は、経済学を学んでいることもなく、世界経済の状況や経済指標などを詳しく分析することはしない。分析する時間もなければ分析する能力もないというのが本当のところであろう。これを補完するのがジャーナリズムであり、政権の暴走を食い止めるのがジャーナリズムの使命である。その使命を果たすことなく、安倍総理と会食し、安倍総理擁護に走る日本のジャーナリズムは、死んでいると言ってもよい。食事代が官房機密費から出ているのかどうかは知らないが。

 安倍総理は、第一次政権の時に、事実を報道し、ジャーナリズムとして政権批判を行われた結果、瓦解したという苦い経験を持っている。そのため、ジャーナリストを懐柔し、政権批判を行うメディアがあれば恫喝し、政権批判を行わせないようにしている。この政権に対し、このような対応は政権としては不適切であるという欧米メディアの対応と異なり、政権に尻尾を振り、提灯報道を行っているのが現在の日本のメディアの多くである。批判するメディアに対しては、自民党ネットサポーターなどを総動員し、ネットで炎上させる、メディアに対する苦情電話を徹底的に行う、などの嫌がらせを行うのが現在の安倍政権であろう。これは、北朝鮮ほど権力的な規制ではないが、実態としては同じような結果を生む圧力を与えるものである。強権政治をその本質とした安倍政権の面目躍如というような対応だと考えられる。

 このような安倍政権の体質を国民が認識し、事実はどのようになっているのか、アベノミクスと言われている経済政策の結果がどうなったのか、そういうことを客観的事実に基づき調べる必要がある。つまり、情報リテラシーを身につけなければ、北朝鮮と同じように、政権の圧力に屈した国民、自由を奪われた国民が政権に従わざるを得ない状況になってしまう。

 権力が繰り返し国民に語りかける嘘を見抜かなければ、その嘘は神話となり、不幸な結果をもたらす。原発安全神話やカリスマに対する無謬性の神話。このような過去の遺物が未だに日本で活発化するような状況は国民にとって不幸でしかない。絶対的権力は絶対的に腐敗する。権力を統制するのは国民であり、その装置が憲法である。国民一人ひとりが自覚して考える必要がある。神話に支配されるような国であれば、それは先進国とはいえず、野蛮な国家であると言わざるを得ない。
 神話から脱却して現実を分析しよう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする