YouTubeでAndre Rieu(アンドレ・リュウ)コンサートライブ動画が配信されています。
その動画は演奏だけではなく聴衆の様子も映し出されており、演目によっては歌い、美しい旋律には涙を流す姿が見られます。
きっと落涙する人は、その人生において何か心の底にしまってあるものに触れる旋律なのかも知れません。もしくは信仰する神との接点を感じておられるのかも。
以前テレビで3.11の大震災直後の仙台フィルハーモニーのドキュメンタリーを見ました。
各団員が避難所で慰問のアンサンブル演奏した時に聴いておられた多くの避難所の方々は、それぞれの辛かった出来事から解放されたかのように涙を流しておられました。
このようにクラシック音楽は聴く人々の心に響き癒したり励ましたりする力が存在しているのを知りました。
小説「Obralmの風」
岳は思わず彼女をめがけて歩み出した。
(彼女に近付いてどうするつもりだ)
自問しながらも岳は彼女の持つ磁力に引き寄せられるかのように歩いた。
彼女が向かうのは宝塚線のホームであった。
追い着いた岳は臆することなく後ろから彼女に声を掛けた。
「あの、失礼ですが先日鳥取の大山でお会いしませんでしたか?」
急に近寄ってきた見知らぬ男に後ろから声を掛けられ、驚きを露にした彼女は岳の顔を凝視した。
「思い出されませんか?ほらっ、大山ペンションで私はあなたの斜め後ろのテーブルで食事をしていました」
ペンションと聞いて彼女は一瞬表情が緩みかけたが、直ぐに警戒心をあらわした。
周りの人達は若い女性に絡む酔っ払いを見るかのように冷たい視線を送って来る。
どうしてここまで積極的になれるのだろう、彼女の冷ややかさに怯みそうになった瞬間岳は自分を客観視した。
死を宣告された人間の強みだろうか、いやそうではない。
何か判らない意気込みのようなものが湧き上がって来る。
その真剣さが眼に現れているのか、岳を見る彼女の表情は益々強張っている。
はっきり言って自分が異性に対してこれ程の積極性があったとは思わなかった。
なぜ今までもっと早く気が付かなかったのか、先程別れた遠藤の話が脳裏を過ぎる。
「確かに私は大山のペンションに行ったことがあります。それがどうかしました?あなたとどう関係があるんですか?」
やがて到着した電車を見て彼女は女性専用車両へ行こうとした。
「あの、日を改めてお話したいのですが、よかったらここにお電話下さい」
岳はあわてて職場の名刺を差し出した。
彼女は怪訝そうな表情で受け取ると、さっさと女性専用車両へ乗り込んで行った。
やがてホームを離れて行く電車を見送りながら岳はどうして人目も気にせず、彼女にこうまで真剣にアタックしたのかを考えた。
しかしその動機は自分自身では解明できない、ただそうしなければならないという使命感のような感情が込み上げていたのは事実であった。
その後彼女から電話は架かっては来なかった。
その動画は演奏だけではなく聴衆の様子も映し出されており、演目によっては歌い、美しい旋律には涙を流す姿が見られます。
きっと落涙する人は、その人生において何か心の底にしまってあるものに触れる旋律なのかも知れません。もしくは信仰する神との接点を感じておられるのかも。
以前テレビで3.11の大震災直後の仙台フィルハーモニーのドキュメンタリーを見ました。
各団員が避難所で慰問のアンサンブル演奏した時に聴いておられた多くの避難所の方々は、それぞれの辛かった出来事から解放されたかのように涙を流しておられました。
このようにクラシック音楽は聴く人々の心に響き癒したり励ましたりする力が存在しているのを知りました。
小説「Obralmの風」
岳は思わず彼女をめがけて歩み出した。
(彼女に近付いてどうするつもりだ)
自問しながらも岳は彼女の持つ磁力に引き寄せられるかのように歩いた。
彼女が向かうのは宝塚線のホームであった。
追い着いた岳は臆することなく後ろから彼女に声を掛けた。
「あの、失礼ですが先日鳥取の大山でお会いしませんでしたか?」
急に近寄ってきた見知らぬ男に後ろから声を掛けられ、驚きを露にした彼女は岳の顔を凝視した。
「思い出されませんか?ほらっ、大山ペンションで私はあなたの斜め後ろのテーブルで食事をしていました」
ペンションと聞いて彼女は一瞬表情が緩みかけたが、直ぐに警戒心をあらわした。
周りの人達は若い女性に絡む酔っ払いを見るかのように冷たい視線を送って来る。
どうしてここまで積極的になれるのだろう、彼女の冷ややかさに怯みそうになった瞬間岳は自分を客観視した。
死を宣告された人間の強みだろうか、いやそうではない。
何か判らない意気込みのようなものが湧き上がって来る。
その真剣さが眼に現れているのか、岳を見る彼女の表情は益々強張っている。
はっきり言って自分が異性に対してこれ程の積極性があったとは思わなかった。
なぜ今までもっと早く気が付かなかったのか、先程別れた遠藤の話が脳裏を過ぎる。
「確かに私は大山のペンションに行ったことがあります。それがどうかしました?あなたとどう関係があるんですか?」
やがて到着した電車を見て彼女は女性専用車両へ行こうとした。
「あの、日を改めてお話したいのですが、よかったらここにお電話下さい」
岳はあわてて職場の名刺を差し出した。
彼女は怪訝そうな表情で受け取ると、さっさと女性専用車両へ乗り込んで行った。
やがてホームを離れて行く電車を見送りながら岳はどうして人目も気にせず、彼女にこうまで真剣にアタックしたのかを考えた。
しかしその動機は自分自身では解明できない、ただそうしなければならないという使命感のような感情が込み上げていたのは事実であった。
その後彼女から電話は架かっては来なかった。