セミは土のなかから生まれた
夏の十日間
セミは鳴いた 飛んだ 恋をした
積乱雲のかがやく季節に
木立から木立へ飛ぶことができた
セミが飛んでいると
人間の子供たちを見かけた
セミを狙ってカラスが飛んできた
いのちの時間は不思議だ
セミの体内時計では
夏の十日間は
人間の数十年にも匹敵するのだろう
セミの飛んでいた空間にも
去年と同じ水色の空気がある
いのちは もしかしたら
水色の素粒子かもしれない
今年も木立のなかでは
セミがジイジイ鳴いている
遠くまでとどくセミの声
空間にひびくセミの声
セミの声には
いのちへの呼びかけがある
いのちの時間の燃焼がある
セミを間近に見る
セミの声をひととき聴く
セミのいのちの声が心にしみる