わが愛する中央線、 その無人の十二兼駅に一人降り立ち、 柿其渓谷、 阿寺渓谷(雨現滝を見上げる地点まで)、 そして、 また中央線無人駅の野尻まで歩く。 何十年振りだろうか、この付近の山間を歩くのは。 途中、土手に見つけた グミの実を思わず口に入れたのは、 懐かしかったからだ。 グミの味、 それは、言葉では表現できない。 甘いだけではなく、 何かざらっとした独特の舌触りがある。 舌だけが、 少年時代に戻った。 忘れられない日になった。