オヤジの三回忌の朝、僕は電車で行くか車で行くか、迷っていた。駐車場まで行って、車の後部ドアを開けようとした時、窓ガラスには自分のシャツが映っていた。胸ポケット周辺にはティッシュの乾いた固まりがあった。また、ポケットにティッシュを入れたままのシャツを洗濯機の中に投げ入れたのだ。僕は窓ガラスを鏡代わりにしてティッシュのカスを取り払った。そうして、自分の着ていたシャツ全体を映して見た僕は、驚いた。何年も前から来ていたシャツなのに、こんな模様が付いていたとは気付かなかった。花模様しかないと思い込んでいた。なのに、菱形がある。楕円もある。混在と言えば、言えなくもない。探していたものがこんな身近にあったとは。ティッシュのカスがシャツに付着していなかったら、多分、気付かないまま何年か後には捨てていたに違いない。2010年8月7日の朝、僕は窓ガラスの中で微かに甘い偶然を味わった。
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