京都の街中にさえ随所にあるのは、庭。囲まれ、手入れされた、観照するための庭だ。そのように断言したい〈時〉がある。その苔むした灯籠、その白っぽい粉の吹き出た竹節、その露に濡れた黒い木肌、・・・・。流謫の身の僕は、皮をむしりとられた兎のように、震えずに震えながらも、微かにうまい出し汁を喉の奧に通す。と同時に、思い付きの想念を手近の紙片に書き留める。君たちは君たちで興味深い話を弾ませて楽しめばいいだろう。僕は僕だけの目には見えない楕円を描いて元の位置に戻るだけだ、鴨川の霧を後方に背負いながら。