仮に名をリゼビーとする。
僕は尋ねた、その自転車はいくらだと。
リゼビーは電子タバコを吸いつつ、
100万と答えた。
メーカーはどこかと尋ねると、
パーツを買いそろえて、自分で組み立てたと答えた。
僕は100万円の自転車と10万円の自転車との違いを尋ねた。
彼は簡潔に答えた。
「お金でタイムは買える」と。
そう、彼は元プロの競輪選手で、
今は、別の仕事に携わっているが、
言わば副業として、
自転車の設計、製造、販売をしている男だ。
リゼビーの組み立てた自転車を
奥田民生が売ってくれと頼みに来たという。
リゼビーの上背は僕より低い。
しかし、その胸囲は驚異的だ。
僕の2倍はあるのではないか。
今度尋ねてみるつもりだが、
まるで鉄人28号のような胸の形をしている。
リゼビーは、
自動車とほぼ同じ速度で自転車を走らせることが出来ると言った。
何かの映像で、僕は見た。
マウンテンバイクに跨った男が
アメリカの山地を駆け巡るシーンを。
巨岩と巨岩との隙間をMBで飛び越えるシーンを。
(もし隙間に落ちたら、何百メートルも落下し、確実に死ぬ。)
あんなの、僕は、本当は飛んでいないと思っていた。
本当だった。
リゼビーの友人もその仕事をしたことがあった。
ヘリコプターで山奥に連れて行かれて、
道なき道を自転車で走らされるという。
文字通り命がけの仕事の報酬は、
億単位だという。
いやはや、世の中には、いろんな人がいるものだ。
リゼビー、容貌は、失礼ながら、
鼠男に近い。
しかし、その過去、その未来は、
多分、平凡な地平を遥かに越えているに違いない。
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