読み方と意味。
毌(カン)、貫くの意。
母(ボ)、女親の意。
毋(ブ)、するな。~ないの意。
これらの相似した形の漢字のうち、
覚えて損のないのは、毋。
一用例として、論語から引用。
「子四を絶つ、意毋(な)く、必毋(な)く、固毋(な)く、我毋(な)し」。
その意味は、
「先生は四つのことを絶たれた。勝手な心を持たず、無理押しをせず、執着せず、我を張らず」。
この「子絶四」を初めて読んだ時、予は軽く打ちのめされた。なぜなら、予は先生の正反対で、時に勝手な心を持ち、時に無理押しをし、時に執着し、時に我を張る」からだ。
要するに、ナポレオンの口真似をすれば、「予の辞書に毋という文字はない」ということだ。もっと言うならば、予は「自分で考える」ということが出来ない凡俗だということだ。
と言っても、予は自虐趣味に耽りたいというわけではない。冒険家は冒険の道を究めればいい。予には、しかし、これという究めるべき道がまだない。司馬遷の口真似をすれば、「日暮れて道遠し」。なるようにしかならない、この台詞をバネとして使うのか、自らを覆う毛布として使うのか、ここが岐路になる。いずれにしても、人生高が知れている。そこで予は問うのだが、溜め息を百回つく暇があったら、君は何かを絶とうとするのか、何かを貪ろうとするのか。幸か不幸か、予は貪婪の世界しか知らない。そして、慣用句なのでこれは口真似にはならぬと思うが、「知らぬが仏」とはよく言ったものだ。従って、自ら命を絶つくらいなら、予は一人どこかの絶嶺で一晩座禅を組んで、色即是空の空を貪るだろう。
行け、貪りの果てへ、
行け、貪りの絶える果てへ、
行け、貪りつつ貪りの絶える果てへ。