お好み夜話-Ver2

トマトくん

我が家のばあさんは81歳で、週に3回のデイサービスと月に1度のショートステイに行くことが目下の仕事だ。
最近ときどき配線がつながらなくなってしまうことが多くなり、デイサービスに行く日でないのに支度をして、表へ出てお迎えの車が来るのを待っていたりする。
朝と晩は、とくに配線がこんがらがっているので要注意だ。
5日前の朝、ソワソワしてこう言った。

「お客さんは、もう来たのかい ? 」

「客 ? 」

客って、だれだ ?
かあちゃんに訊いてみても、特にお客さんが来る予定はないという。
またまだらボケちゃったのか・・・・・、とふたりしてため息ついて思い当たった。
なんだ、アイツのことか goo

その日の夕方、仙台からあの「調子コキ」がやって来ることになっていたのだ。
ばあさんは、なぜか「調子コキ」が気にいっている。
声がデカイからかもしれないし、年寄りや子供を手なずける術を知っているからかもしれないが、なぜか心良く思われている。
だがヤツは、もはや客ではない。
以前はモグランポのお客様だったが、いつのまにかお客様から家族ぐるみのお付き合いになって、いまでは出来の悪い息子のような塩梅だ。
夏になると彼の実家からとても美味いトマトを送って頂き、毎食「うまいねぇ」と声に出して食べているので、ばあさんはそのことがとても印象に残っているのだ。

「調子コキ」の馬鹿野郎は、なんと、嫁さんを連れてやって来た。
これがよくできた嫁で、というか、忍耐力があるのか物好きなのか、「調子コキ」をうまくコントロールしているみたいで、とてもよくやっているようだ。
だが油断しまくりなのか幸せ太りなのか、ヤツは “ 仙台のふとっちょくん ” といってよいほどしまりがなくなっていた。
当然ほっぺたはパンパンのアンパンマン状態で、それを見たばあさん、彼の名前が思い浮かばず「トマトくん」と呼びかけたらしい。
そのまましばらく「トマトくん」のままだったが、あらためて彼がだれだか訊くと、

「知ってるよ。バーバーくんだろ」

と、平然と答えた。
そしてようやく「バーバーくん」は認知され、我が家を根城に英国へ渡航の手続きに奔走しているのというわけだ。
ビザ申請に必要な書類が、事前の連絡無しに突然変わってしまったり、日本語も満足にできない男の英語力だから、なにかと面倒なのだ。

明日の朝、再び申請手続きに向かい、それでOKならばいよいよ渡航の支度に入るのだが、運悪く将軍様の国がミサイルをぶっ放すという状況があるので、すぐに飛行機は飛べなそうだ。
前途多難な海外留学だが、一部では長いハネムーンじゃないかという邪推もあったりする。
まあ、確実に言えるのは、これでまたかなり
「出世払い」がたまったということだ。
せいぜい英国留学を楽しみ、帰国後は夫唱婦随で「出世払い」返済に精出して頂きたいと思うばかりなのである。

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