産直市場的施設
できたてお惣菜弁当でランチ
母ちゃんお友だちと一緒
最近の母ちゃんと2人きりだと
ろくなことない
けんちゃん
上機嫌
食べ終わったお弁当
もとのビニル袋にパックを戻して
口をキュッキュと結んで
母ちゃんたち
お喋り
けんちゃんはちょっと退屈
けんちゃん
これごみ箱捨ててきて
どこに?
ごみ箱
けんちゃん
ビニル袋持ってトコトコトコ
ごみ箱どこだろう
みつかるかなぁ
変なとこ
置いて来たりしないかなぁ
数m先にあるジュース自販機
その横のごみ箱
缶、ペットボトル用
けんちゃん
近付いて止まる
入らないよなぁ
そんなこと思っているのか
試しもしない
前だったら絶対無理ってサイズ感
ちっちゃな手提げに
図書館で借りた絵本押し込もうとしたり
型はめブロック
形に認識なくグリグリしてた
成長
なのか
ちょっとだけ淋しさ感じた
けんちゃん
無理を知った
可能性を試さず世の中の無理
知っちゃったんだ
諦め?
人生には諦めも肝心
分かってる
けど
諦められないこと
諦めたくないことも
ある
無理
じゃなくて
あくまで無理だろう
分かってるつもり
でも
だからこそ
なのか
しょせん
人は自分の経験のモノサシでしか
考えられない
母ちゃんはそのレベル
けんちゃんは歩き出した
お昼どき
たくさんの人が行き交う
すり抜けるようにならカッコイイけど
みんな
けんちゃんを避けてくれる
その角を曲がったら
けんちゃん見えなくなっちゃう
そう思ったとこで
立ち止まった
ジーッと
見つめる2m先のごみ箱
けんちゃんとごみ箱の間を人が行き交う
ジーッと見つめる
人が歩くからごみ箱まで行けないのか
それが目的のものなのかどうか
吟味しているのか
何人かの人が
けんちゃんが持つのと同じような
ビニル包み
ごみ箱に入れていた
母ちゃんの場所から
けんちゃんの表情は分からない
そんな遠くまで
ひとりでトコトコトコって
大人いっぱい歩く中
母ちゃんから離れても平気なんだね
大人ばかりだから平気なの?
だって
顔見えないもの
あしだけ
しばらく
動かなかったけんちゃん
そろそろ
不審に思った親切な人が
迷子と思うかも
そのタイミングでけんちゃん
動いた
手にしたお弁当包みを
ごみ箱の口に合わせて持ち上げた
十分届いてる
けど
Uの字にあいた口に
押し戻ってくる蓋
苦戦
そのけんちゃん
通りすがったおじちゃん
押し込むの手伝ってくれた
できた!
表情見えない距離だったけど
ニンマリ
母ちゃんの方を向いて
けんちゃんの顔が変わったのは分かった
トコトコトコかけてくる
できたねぇ
えらかったねぇ
なにやらつぶやくけんちゃん
え?
おむちゅ
とれちゃった
おむつカバーのマジックテープ
しばらく前から効き目なし
ゆったりズボン
ダメだったね
その場で一応留め直した
けんちゃん
これもお願い!
母ちゃんのお友だちがけんちゃんに言う
ヒョイとつかんで
慣れた道を行く
目的地に着いたら迷わず投入
今度はすんなり入った
すぐ方向転換
ニタニタしながら
トコトコトコ
戻ってくる