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中国の多くの職場で「3月8日」に女性が姿を消す理由

2019-04-08 09:05:23 | 海外ニュース

中国人女性には 特別な「国際女性デー」
「3月8日って、何の日?」――


多くの日本人に聞いてみても、答えられる人はおそらくほとんどいない。
 3月8日は「国際女性デー」。1904年3月8日にアメリカ・ニューヨークで婦人参政権を求めたデモが起源となり、1910年のコペンハーゲンでの国際社会主義会議で「女性の政治的自由と平等のために戦う日」と提唱したことから始まった。その後、国連は1975年の国際婦人年において、3月8日を『国際女性デー(International Women’s Day)』と制定したのである。
この国際女性デーは、日本ではなじみがない。
 ところが、中国では、「三・八国際労働婦女節」。近年では「女神節」「女王節」とも呼ばれ、“女性のお祭りの日”として広く認知され、定着しているのだ。この日は、まさに女性が主役であり、女性を称えて、祝う多彩なイベントが催されるのである。
 もっとも、近年の中国では、急速な経済の発展に伴い、これらのお祝いが年々エスカレートする傾向にある。

各職場でも開催される
さまざまな女性向けイベント


 まず、女性は勤務先で終日か半日の休みが与えられる。また、職場によっては、さまざまなイベントが企画される。
 例えば、豪華なレストランでお食事会を開いたり、映画や劇に招待されたりする。ちなみに、筆者の知り合いの女性が勤務する会社では昨年、女性社員全員が上海ディズニーランドに招待された。送られた写真(冒頭の写真)を見て、筆者は思わず「いいなー」と声に出してしまった。とにかく、この日は職場から女性は姿を消し、男性だらけになるという光景が中国各地で見られるのである。
 一方、女性たちは、“特別扱いされた自分”を素直に楽しむ。
 SNS上には、これらイベントの様子を示す写真が競い合うかのように投稿される。皆、テンションが高く、豪華かつ楽しそうな雰囲気が写真からもよく伝わってくる。会社にもよるが、男性が女性に花をあげるイベントなどもあり、こうした様子がSNSをにぎわしている。
 当然ながら「ここぞ」とばかりに、女性向けの商戦も激しく行われる。


中国の方が女性の
社会進出は進んでいる


 そもそも社会主義国である現在の中国では、建前上、建国時から“男女平等”とされている。日本に比べ、女性の社会進出が進み、社会的地位も高い。実際、ほとんどの世帯が共働きである。夫より妻の役職の方が上であり、年収が高いケースも珍しくはない。
 政界や財界、企業の管理職に活躍する女性の割合を見ても、日本よりはるかに高い。ちなみに、ある調査では、中国の女性管理職の割合は36%、アジア5ヵ国の中で最高水準だ。対して、日本の女性管理職比率は、アジア諸国の中でも最低水準で、19%である。
 もっとも、近年、日本でも女性の社会進出が進み、共働きの家庭は全世帯の半数を超え、増えてきている。朝夕に男性が自転車や徒歩で子どもを保育園、幼稚園に送り迎えをしている姿が多いのもその証しであろう。
その一方で、多くの中国人が抱いている“日本の女性”のイメージは昔のままだ。
 そのイメージとは……。


日本人女性は「良妻賢母」
山口百恵に憧れる中国人男性


 結婚したら専業主婦となり、家庭に人生をささげるというものだ。例えば、毎朝旦那さんの出勤を見届けた後、家の掃除などの家事に没頭する。夜、旦那さんの帰宅を玄関まで出迎え、スリッパをはかせて、「おかえりなさい!お風呂が沸いてます。先に入りますか?」といった類のお決まりセリフ。男性は皇帝のごとく、家のことは何もしない。
 また、日本の女性は大変控えめであり、男性に順従である。
 このような日本女性をイメージする言葉がまさしく「良妻賢母」であろう。
 多くの中国人にとって、その「鏡」としてイメージされる人物がいる。それは、中国でも大人気の山口百恵さんである。彼女は芸能生活の人気絶頂期でわずか21歳の若さできっぱり引退し、その後表舞台に立つことがなく、「相夫教子」(中国語、夫を支え、子を教育し育てる)の家庭生活に入ったからだ。
 実は、これは中国では「美談」とされた。今でも多くの中国の男性にとっては「憧れ」であり、山口百恵さんは「心の女神」となっている。
 筆者は仕事の関係で、来日する中国の政府や民間企業のミッションをアテンドすることが多い。
 これまで何回も中国人男性から「山口百恵はすごいなー、これは理想の女性像だよー」と口をそろえて言うのを聞いたものだ。かつて中国では、男性の最高の人生とは、「アメリカンハウスに住み、日本人の女性を妻とし、中華料理を食べる」ということわざがあった。その「妻」の理想像が山口百恵さんなのである。
 とはいえ、本当に中国の女性の方が日本よりも恵まれているのだろうか。


中国人女性にも
さまざまな試練や不平等がある


 一見、中国では女性の地位が高いように見える。しかし、よくよく見れば、家庭や職場では、女性はさまざまな“試練”を受けているのが実情であり、“隠れ差別”を受けていることが多い。
 事実、先月中国で公開された「2018年中国女性職場現状調査報告」では、全国範囲で31の省市のさまざまな職業男女を調査した結果、女性の平均収入は男性より22%少なかった。
 報告では、初任給は男女が同じでも、その後の昇進でもだんだんと差が出てくる。いわゆる「ガラスの天井」が存在するのは、日本と変わらないのだ。
 また家事に費やす時間は女性が男性より15%多いとの結果が出ている。最近は、3月8日の「国際女性デーを祝う行為そのもの」が女性差別であるとの声が出てきている。
「女性は美人の方が得」という事実においては、中国は日本以上である。実際、多くの職場では能力より容姿が重視される傾向にある。
 例えば、企業間接待の席で、きれいな女性を座らせておもてなしさせるのは、ごくごく普通の光景である。ゆえに近年、大学を卒業しても就職がなかなか決まらない「就職難」の状況下において、女子大学生が最初に行う就職活動の一つは整形だと言われるほどだ。


結婚を控えた女性は
募集条件で除外されることも


 中国では、大学を秋に卒業し、入社する。このため、美容整形のクリニックは夏休み中が混雑し、稼ぎ時である。また就職試験の面接の時には、「彼氏はいる?結婚の予定は?子どもはいつ?」などと、近年の日本ではアウトな質問でも堂々と聞かれる。
 募集条件には「結婚予定がある方は除外」との記載も多い。
 その理由は言うまでもない。入社してすぐ結婚し、妊娠・出産で会社を休むことを避けたいのだ。
 最近は、たとえ結婚して子どももいるという人でも、一人っ子政策が緩和されてから、企業の人事担当者は「第二子は?」と聞くようになったとも伝えられている。
 産前産後の休暇は最長120日間であるが、企業によってはこれよりも短く設定している場合も少なくない。実際、育児休暇から職場に戻ったら、以前にいたポジションには戻れないケースが多い。
 せっかくこれまで一生懸命勉強し就職できて、職場ではさまざまな試練を乗り越えて登り詰めたのに、出産でこれらを失うことを恐れ、多くの女性が結婚を躊躇(ちゅうちょ)して適齢期を逃してしまう。都会のキャリアウーマンでは、独身が多いのが実態だ。
そして、中国では法定退職年齢は男女で異なる。
 男性が60歳、女性が55歳(重労働な職場では、男性は55歳、女性50歳)である。この差が「男女平等」の建前とは矛盾している。人生100年といわれる今、「女性が50~55歳に退職するのが早すぎる」と中国国内の専門家は指摘する。ゆえに、多くの50代半ばの女性が退職後は手持ち無沙汰となり、子どもの婚活を手伝ったり、「広場ダンス」など趣味の世界に走ったりするのだ。


0歳から入園できる
日本の保育園はうらやましい


 逆に日本は、1986年に男女雇用機会均等法、その後も間接差別禁止の規定など、法律上は女性差別をなくそうとしている。
 これまで女性に不利だった部分が、法律や世論により守られている感がある。「女性が輝く日本」への取り組みにより社会進出がさらに進む、そのための社会環境の整備も着々と進んでいる状況である。産後休暇も1年以上を取得できたり、男性も育児休暇をとれたりするなどの制度面での取り組みが広がっている。
 実際に育児や家事を積極的に実施する男性はまだ少ないが、確実に社会の意識は変わっている。セクハラなどの女性蔑視の撲滅活動も盛んである。男性がちょっと何かを女性に行ったら、すぐセクハラと訴えられるのが実情である。
 近年、企業も職場に保育園を積極的に作り、各自治体が、待機児童をなくすため努力している。何よりも子どもを0歳から預けられるのが、多くの中国の女性にとって日本がうらやましい点だ。中国では子どもが3歳になってから初めて保育機関に預けられるからだ。ゆえに0歳から3歳の子どもの大半を祖父母が面倒をみている。
 また、近年日本では何よりも、先述したように、多くの中国の男性が憧れている昔の日本の「女性像」、男性より3歩下がって歩くとか、男性に100%従うなど、もう「伝説」になりつつあるだろう。


夫が「恐妻家」の家庭は
円満である


 日本の女性は日に日にたくましくなっており、逆に亭主関白の男性は「時代遅れ」とみなされている。むしろ、日本の男性は萎縮しつつ、家庭内に居場所がなくなり、肩身の狭い思いをしている。定年退職すれば、妻や家族からは「粗大ごみ」として扱われる人も少なくない。それらは、「家庭内別居」などと一緒に流行語になったほどだ。
 女性は「もっと強くなりたい」と志向する人が増え、一方の男性は相変わらず“優しい女性”を求めるものなのであろう。
 こうした相反する考えがぶつかり合うのは、むしろ、健全であろう。男女ともお互いに鍛えられていくことで、社会は進歩していくからだ。
 ちなみに、筆者の知人である日本人男性にも、「帰ると、自分を迎えに来るのは犬だけ」とか、「たまに早く帰ると家族から嫌がられる」など、自分の「恐妻」ぶりや自分の家庭での“弱い立場”を自虐的に語る人が何人かいるが、どちらかといえば、それを会話の“ネタ”にしている風でもあり、家族同士の仲は決して悪くはなさそうである。
 いずれにしても、夫が「恐妻家」の家庭は円満であり、女性が強い社会は、「平和」である。それはグローバルに見ても、歴史的に見ても間違いないといえるのではないだろうか。



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