よくある異世界転生かと思ったら、異世界みたいになってた未来世界でした。

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よくある異世界転生かと思ったら、異世界みたいになってた未来世界でした。 第1話

2020-04-03 05:09:00 | 日記
ー20XX年

「それでは皆様、お待たせいたしました!」

高級ホテルのパーティー会場、暗がりの中で唯一、スポットライトを当てられた司会の女性の声が響く。

「これまで、数々の歴史に残るであろう偉業を次々と成し遂げ、全世界に影響を及ぼす科学革命で世界を一変させた『現代の創造神』!ノーベル賞科学者、世十(せと)創一(そういち)さんの登場です!!どうぞ!!」

女性が左側にあるステージに向かって手を挙げると、それを合図にしたように会場中から拍手が起こり、スポットライトが当てられたステージの両脇から勢いよくガスが噴射する。煙の中に人影が浮かび上がり、ゆっくりとその姿を光の下へと晒し、スタンドマイクの前に立つ。

「ご紹介に預かりました世十です。本日はこのような場を設けて頂き、大変ありがたく思います。もし、このような機会がまたあれば、是非とも噴射するガスの威力は弱めて頂きたいですね。髪が乱れてしまうので笑」

髪を直す世十の仕草に、会場から笑いがこぼれる。

「今の紹介の中でもあったように、私は世界の技術を大きく進めたとされています。しかし、実際のところはそうではなく、あるべき姿になっただけなのです。元から世界はこうなるべきで、つまり私は、なるべき姿の道標に沿っただけのことに過ぎません。そして、その道標となった世界というのが、私が遥か過去に見た未来でした。あのとき目にした輝かしき未来に向かって、私は今日まで走り続けてきたのです。」



ー数十年前

全くなんてベタな展開なんだ、と思った。
学校で嫌なことがあった帰り皆に、ぼーっと歩いていたら、今まさに車に轢かれようとしているなんて…ってな。
自分でも不思議だった。今まさに、こんな危機的状況に落ちているのに、他人事のように冷静に己の運命を受け入れようとする自分自身が…。

次の瞬間、目の前が真っ暗になった。こういうのって、ほんとに映画やドラマのように車が目の前まで来たと思ったらシーンが飛んだように真っ暗になるんだな…と、そこも冷静だった。
そしてまたシーンが飛び、目覚める。

「う…うぅん…」
なんだ…?どこだ…よく見えねえ…寝ぼけてるみたいに視界がぼやける…。
目をこすり、焦点が定まるのを待った俺の目に飛び込んできたのは、石で積み上がった建物が並ぶ街だった。
例えるなら、異世界ファンタジーのダンジョンのような…。
「うん…『ような』っていうか、それだな」
完全にファンタジーそのものだった。そして、察した。
「あぁー、はいはい」
なるほどね。完全にわかった。こちとら、伊達にアニメやマンガやらラノベをかじってないんでね。こんなことで慌てふためくと思ったら大間違いだ。こういうファンタジー展開には慣れてる。
車に轢かれたと思ったら、目の前に広がるファンタジー異世界…つまり、死後の異世界転生ってやつだ。まったく…
「ベタな展開だぜ」

全てを察した俺は、自分の仮説を裏付けるため、通りがかったおじさんに声をかけた。
「あー、おじさん、ちょっと聞きたいことあるんだけど…」
「ん?どうしたんだい?」
表情の柔らかさから伝わる親切そうなおじさんが足を止めてくれた。
よし、日本語は通じるようだ。
「えーと…」
答えの想像もつくベタな質問だけど…まぁ、お決まりってことで一応、聞いとくか…。
「地球って星、知ってる?」
質問を聞いた途端、怪訝な顔を浮かべるおじさん。まぁ、そりゃそうだ。聞いたこともない惑星の言葉を急に投げかけられたんだからな。
「ち、地球…?」
とりあえず、地球は知らない、っと…。
「知ってるけど…」
「え!?」
想定していた答えと違って思わず大声を出してしまった。
なるほど…。ということは、俺よりも先に異世界転生してる奴がいるパターンか…。で、そいつが『地球という所から来た異世界人』として既に知られてて、こっちでブイブイ言わせまくってるパターンってわけね。
「オーケー」
考えをまとめた俺は、再びおじさんに質問を投げかける。
「じゃあさ、その地球から来た人間を知ってたりしない?出来れば、会いたいんだけど」
俺の質問に、困惑した表情をさらに強めるおじさん。
「いや…地球から来たっていうか…うーん…」
おじさんは斜め上を見て少し考えたあと、諭すように言い放った。
「ここが、地球だよ?」

「……………へ?」

表情が固まったまま、俺は周りを見渡した。
目に入る景色はどう見ても現代ではない。

「あー…えっと…西暦は…」

「2070年だけど」

「…………あー、そっちかぁ…。」

よくある異世界転生かと思ったら、異世界みたいになってた未来世界でした。