姉歯はこれまで同委員会の参考人招致を体調不良を理由に二回とも欠席していた。
今回の喚問に応じた理由は、関係諸団体との裏取引が成立しある程度の身分保障が確保されたためと思われる。
木村建設の要求について姉歯は、法律に触れるのでこれ以上の削減は無理と篠塚に何度も伝えたが、しつこくやり直しを命じられたと述べた。
その要求に従ったことについて姉歯は、当時、仕事の90%くらいを受けていた木村建設の篠塚から、鉄筋を減らすよう相当のプレッシャーをかけられたためと、大幅な収入減となることを恐れたと弁明した。一級建築士の免状を取ったものの仕事がなく経営に行き詰まっていた姉歯に篠塚の方から接近したものと思われる。
姉歯は偽装を始めた時期については平成十年ころからと答えた。違法建築の件数についても、六十件前後だったと述べた。違法建築としての最初の物件は、売り主の「ヒューザー」と行政の間で耐震強度不足をめぐる判断が割れていた東京都大田区のマンション「グランドステージ池上」と明らかにした。しかし、姉歯にしたところで誰かの偽装を参考にしたことは充分に考えられるので、姉歯が直接設計した物件以前についても調査してみる必要はありそうだ。
姉歯は偽装の方法は自分で考えたと述べ、確認検査機関の検査については、単純な偽装なのですぐばれると思ったが、「イーホームズ」がこちらの提出書類をろくに見てなかったので通ってしまったと証言した。これは明らかに嘘だろう。当然リベートがものをいったはずだ。ちなみにイーホームズとは、住宅環境の品質向上に貢献するため、公正中立な第三者機関として、住宅を含む建築物から水土壌環境までの、確認(審査)・検査・性能評価・性能保証審査・調査・診断・格付認証等、そして記録保存を行う会社ということになっている。
ヒューザーからの圧力については、「直接的にはなかったが、打ち合わせ段階で坪単価が低く指示されるため仕事に負担がかかった」と述べた。背後にいる暴力団とは無関係と言いたいのだろう。
総研(総合経営研究所)の内河所長については、四、五年以上前に研究所のセミナーで講師をしたが、直接話をしたことはないと述べた。これは本当かもしれない。彼の実力ではもっと下っ端としか接触できなかったことが考えられるからだ。
木村建設の木村社長とともに午後からの証人喚問に立った篠塚元支店長は、「偽装には一切関与しておらず、姉歯に強い圧力を掛けた認識はない」と関与を否定した。
篠塚は今回の問題について、「マンションの購入者、ホテルオーナーに申し訳ないと謝罪した。まあ、こんな答弁くらいしかできないだろう。
姉歯に鉄筋を減らせと指示したかどうかを質問されると、言ったかもしれないが、法令の範囲内」と答え、姉歯はプロなので、法令を犯すとは考えなかったと弁明した。その後いろいろ証拠が出てきてしまうだろうことはとりあえず考えないという態度だ。
いずれにしても、この偽装事件は建築業界では氷山の一角で、もともと暴力団関係者や利権あさりの政治家が深く関わっている業界なので大疑獄事件に発展することは想像に難くない。小泉が衆議院選で大勝し、院政に向けて政敵粛正に動き出したと見るべきだろう。