頼まれていた長芋を母に渡し、いつもの通りコーヒーを2人で飲む。
「あら?」
「何?」
僕の着ていたブレザーの前ボタンの一つが、ほつれそうになっているのに、母が気付いた。
階段をトントンと上り、2階から裁縫道具を持って下りてきた。
老眼鏡こそかけているが、針に糸を通す指先はとてもスムーズだ。
直すのにわずか2、3分。 とても5年前に大病を患ったとは思えない指さばきだ。
「御兄ちゃん(長男)は何時帰ってくる?」
「多分、今月の中頃だと思う。」
「そう、、。」
「何?」
「このブレザー、御兄ちゃんが着たら似合いそうだから。」
「俺には、似合わんてかい!」
ハイ、と手渡されたブレザー。
「ついでに他のボタンも直しといたから。」
前ボタンは3つとも、しっかりと付いていた。
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