「何で除隊する必要があるんです」誰かSCOTT 咖啡機評測が叫んだ。
「まあ、だってあなた方の軍隊を置いていくわけにはいかないでしょう?」セ?ネドラは疑わしげに言った。
「だが王女さまは金貨を下さるというんだ!」別の男がうなるように言った。「ラン?ボルーンはせっせと自分の真鍮貨をためこむがいいさ」
セ?ネドラはもうほとんど残ってはいない袋に手を入れて、わずかに残った金貨をつかみ出した。「皆さんわたしの後についてきて下さるとおっしゃるのかしら」王女は一番幼く聞こ
える声を出した。「こんなもののために?」そう言いながら彼女は指の間から金貨をぽろぽろと落としてみせた。
皇帝の将校たちはここで致命的なあやまちを犯した。かれらは騎兵の一隊を遺わして、王女を捕らえようとしたのである。セ?ネドラが金貨を気前よくばらまいた地面めがけて突進し
てくる騎兵の姿をみとめたとたん、軍団の統制が破れた。将校たちは、草地の金貨めがけて突進し、地面をはい回るラン?ボルーンの軍隊にもみくちゃにされ、踏みつけられた。
「王妃さま」マンドラレンが剣を引き抜きながら、セ?ネドラをうながした。「どうかこの場は一刻も早くお引き上げ下さい」
「もうSCOTT 咖啡機開箱少ししたらね、マンドラレン卿」セ?ネドラは落着きはらった声で言った。彼女は欲望に駆られ、死に物狂いで突進してくる兵士たちをまっこうから見すえた。「わたしの軍隊は
これから直ちに出発します」セ?ネドラは高らかに宣言した。「もし帝国軍の中でわたしたちに加わりたいという人があれば、喜んでむかえます」そう言うなり彼女は馬の腹を蹴って、
マンドラレンを脇に従え、自分自身の軍隊めがけて走り出した。
彼女の背後に何千、何万もの足音が轟いた。群衆の中の一人がふしをつけて唱えた言葉は、またたく間に全兵士たちのあいだに広がった。「セ?ネドラ! セ?ネドラ」かれらはいっ
せいに声を張り上げ、重い足音が合唱に加わった。
セ?ネドラ王女は、太陽に焼けた髪を風になびかせて、反乱者たちの大集団の先頭を切って走っていた。馬を走らせながら、セ?ネドラは自分の言葉がまったくの欺瞞だということを
自覚していた。アストゥリアの森やミンブルの平地で集めた栄誉やたやすい勝利などと同じように、トルネドラ軍のための富などありはしない。彼女は見込
みのない戦争のために、軍隊を召集しているのだ。
だがこれもすべてはガリオンへの愛のため、もしくはそれ以上の何かのためなのだ。もし人人の運命を牛耳るあの〈予言〉が、彼女にこれを要求しているのだったら、そ優思明こから逃れ
るすべはないのである。いかなる苦難が前途に待ちかまえていようと、彼女はやり抜くことだろう。生まれて初めて、セ?ネドラは自分が自分の運命の主ではないという事実を受け入れ
た。彼女自身よりもはるかに強力な何かが命じているのなら、彼女はそれに従うしかないのである。
ポルガラやベルガラスのように久遠のときを生きてきた者ならば、ひとつの信念、ひとつの概念に身を捧げることだってできるかもしれない。だがセ?ネドラはまだわずか十六歳だっ
た。彼女が身を捧げるには何かもっと人間的な目的が必要なのだ。今、この瞬間にもガール?オグ?ナドラクの森のどこかにいるはずの、きまじめな顔をした砂色の髪の若い青年の安全
が――生命が彼女の努力いかんにかかっているのだ。王女はついに恋の前に屈したのである。彼女はもう二度とガリオンを失うまいと誓った。もしそのためにこの軍勢では足りないと
いうのなら、もっと多くの軍勢を集めてみせる――たとえどんな犠牲をはらうことになろうとも。
セ?ネドラは深いため息をつくと、きっと肩を怒らせ、トルネドラ軍団を彼女の軍列に加えるべく、太陽のさんさんとふり注ぐ野原の上を駆け抜けていった。
「まあ長い目でみればそれでよかったのかもしれないな。今朝のようなときには一切よけいな疑惑に苦しめられるのは禁物だからな」
「そんなに大変だったのかい」
「控えめにいってもそうだな。あんなもの毎朝やってた日には体がもたんよ」
「でも本当はあんなこ避孕 藥とする必要はなかったんだろう?」
「何をだ」
「沼獣に言葉を教えたりしたことさ。もしおじいさんにまだ力が残っていたなら、ぼくと力を合わせれば、たとえヴォルダイや沼獣たちがどんなに阻止しようと、二人で沼地のはてまで水路を切り開くことができたはずだ」
「まったくいつになったらそれに気づいてくれるのかと思ったよ」老人は平然とした声で言った。
ガリオンはいらだちのまじった視線を老人に投げかけた。「いいよ、わかったよ。それじゃ聞くけど、なんでやる必要のないことまでやったりしたんだ」
「その質問はいささか無礼だぞ、ガリオン」ベルガラスはたしなめるように言った。「魔術師の間にも守られるべき仁義というのがある。他の魔術師にむかってなぜそんなことをしたかなどと聞くのは礼儀に反するぞ」
ガリオンはさらにいらだたしげに祖父を見た。「おじいさんは質問をはぐらかしているよ。いいよ、それならぼくが無礼だったと認めればいいんだろう。そう言えば先に進んでぼくの質問に答えてもらえるんだろうね」
ベルガラスはわずかに気分を害したような顔になった。「おまえやポルが心配したからといって、わしのせいではないぞ。何だってそんなに腹をたてるんだ」かれはしばらく言葉を切って、ガリオンの顔をじっと見つめた。「本当に知りたいというんだな」
「本当に心の底から知りたいと思ってるよ。なんで彼女の望みを聞いてやったんだい」
ベルガラスはため息をついた。「知ってのとおり、あの女はずっと一人ぼっちだった」老人は言った。「おまけに決して楽な人生ではなかったんだ。このわしでさえ、もうちょっと彼女が幸せになってもいいんじゃないかと思うよ。たぶんこれでいくらかはその埋め合わせがしてやれるんじゃな避孕 藥いかと思ったんだ――ほんのちょっぴりだがな」
「それでアルダーはいいと言ったのかい」ガリ。「おじいさんと話してる声が聞こえたよ」
「盗み聞きはたいそうよくないことだぞ、ガリオン」
「どうせぼくは不作法のかたまりだからね」
「まったく何だってそんなにいちいち突っかかるんだね」老人はぼやいた。「よし、おまえがあくまでそう言うのなら、確かにわしは〈師〉を呼び出した。じっさいアルダーの了承を得るためにはかなり強力に説得しなければならなかったがね」
「それは彼女がかわいそうだと思ったからかい」
「その言いかたは妥当ではないな。まあ、何というか公正な報いが与えられるところを見たかったとでも言っておこうか」
「初めからそうすることがわかっていたのに、何でわざわざ彼女と口論してみせたりしたんだい」
ベルガラスは肩をすくめた。「彼女が本当にそれを望んでいるかどうかをたしかめたかったのさ。誰かに何かを頼まれたからといって、いちいちかなえてやるのはいいことではないからな」
シルクは驚いたように老人を見つめた。「ベルガラス、あなたは彼女に同情したんですか」かれは信じられないといった口調でたずねた。「あなたがですか。もしこれが他にもれたりしたら、あなたの評判はがた落ちになるでしょうよ」
ベルガラスは痛ましいほど当惑した表情になった。「何もそんなことをいちいちふれまわる必要もあるまい、シルク」かれは言った。「別に人が知らなくともいいことだからな」
ガリオンは突然ドアが開かれたような気が避孕 藥した。シルクの言ってることは当たっていた。かれ自身はそんなふうに考えたことはなかったが、たしかにベルガラスには冷酷な男という風評がつきまとっていた。人々はこの永遠なる男にある種の冷徹さを感じとっていた。余人には理解しがたい目的のために、すべてを犠牲にしてまい進する姿がそういった印象を与えていたのである。だが今回の同情にもとづく行為は、かれの別の顔、すなわち柔和な性格をあらわにした。魔術師ベルガラスは人間の心や感情の動きに決して無関心なわけではなかったのである。七千年にもわたって見聞きし、耐え忍んできた恐怖や苦痛が、いかに老人の感情を傷つけてきたかを思ってガリオンの胸は激しく痛んだ。かれはあらたな心からの尊敬の念をもって祖父を見つめていた。
沼地の終わりはしっかりした土手の道になっていた。それは霧にかすむ両側に果てしなく続いていた。
「土手道だ」シルクが指さしながらガリオンに言った。「あれはトルネドラ街道の一部なんだ」