カレーです。
5月5日にこの程開催されました、
ChocoPro LIVE 11
藤田ミノルvs水森由菜 ラスト・マン・スタンディングマッチについて
思うところを書きました。
[2020.5.4 何者かになる者達]
興が乗って筆が進んで、思ったより文字数が多い文章になって、
出来事の繋がりもなんとなくカチッとハマった気がしていました。
が、
読み返しみると…
なんとなく、キレがよくない。
※執筆者個人の感想です
なんでだろうな…と思っていた感覚の答えは、
その日の夜に思い知らされることになりました。
そう。
“水森由菜”というプロレスラー…人物に対しての掘り下げが、
著しく足りていなかった。
そしてそれを、団体の長たるさくらえみ選手は、
なんとも見事に現在の人間・水森由菜のパーソナリティを赤裸々に…
…あまりに赤裸々に暴くことで、
この前代未聞のシングルマッチがより一層意味を帯びることとなりました。
というわけで、
5月9日にタッグマッチを控える中でちょっと遅きに失する部分はございますが、
試合本編に関わる部分に一旦触れず、
5月5日のラスト・マン・スタンディングに向けて明らかにされた、
水森由菜選手の…なんだろう…
懊悩の心情について、少し触れておきたいと思いました。
詳細な内容については上記のインタビュー動画を見ていただく方が早い…
というよりは面白いと思います。
熊本に生を受けた一人の女性が、
何故アイドル活動をするに至り、
何故、プロレスラーになるに至ったのか。
現代社会で表舞台に上がる“夢”を追いかけることの、
表側と裏側のそれぞれ両側面の一部を窺い知ることができます。
そしてその懊悩の過程を聞き届け、さくらさんはこう仰るのです。
“でもそれって普通だよね”
…夢を追いかけて上京し、でも手が届かず、
それでもその道を追いかけ続ける…という生き方は、
“何万人といる”生き方の一つ。
その“普通”…夢を追いかけた女性の懊悩を聞き届けた上で、
さくらえみというプロレスラーは、
ここまで話を続けてきた水森由菜が“考えているであろうこと”を、
引いて言えば、水森由菜当人ができることならば隠したいと思っていたであろうことを、
痛快…よりかはむしろひたすらに痛みが伴う形で、
次々に暴いていきました。
他団体に出たいという野心、その背後にあるのは、
自信のなさに裏打ちされた“誰かに認められたい”という貪欲な承認欲求と、
一方で“誰にも嫌われたくない”という…
自身では「処世術」と語っていたかと思いますが、
これまで生きてきた過程の中で積み上げられた、
他者に対する関わり方。
藤田ミノルにこの一騎打ちの意気込みを「ペラッとしてる」と(鋭く)指摘され、
抱える想いをさらけ出さんと週プロmobileにコメントを出すにも、
さくらさんから“面白くない”と駄目だしされ、
8時間悩みに悩んで、ようやくほのかに言葉として滲み出た、
自身の思い悩む心情と弱さ。
…個人的には。
あくまで個人的には、ですが。
プロレスラーであろうがなかろうが、
生活の中で積み上げられたこれらの態度や性格にいいも悪いも、
変わるも変わらないもそもそもは必要がない、と思います。
が。
水森由菜本人はその暴かれた部分をおそらくは弱さとして受け取り、
その部分について、“変わりたい”という心情を露わにすることになりました。
さくらえみというプロレスラーが恐ろしいのは、
その一部始終を対戦相手である藤田ミノルに、
通話を通じて聞かせていたところ。
…というかそも藤田ミノル本人が、このインタビュー開始前から
タブレットの画面前で待機し、一部始終を聞き届けていたのだから、
まあ…
なんといいますか…
二人とも、怖い。
藤田ミノルの口から出たのは
「だいたい思ったとおり」。
“ペラッとしてる”と指摘したその背景にあった懊悩や煩悶も、
おそらくはこれまで相対してきたプロレスラーにも連なる心情の一つ。
さくらえみ、そして藤田ミノルというプロレスラーは、
明確に言葉にすることもしないこともありますが、
とにかくなんというか、他者(特にプロレスラー)の心情の機微に敏い、
という印象があります。
そして、それを“なんとかしたい”と思っているのかどうかはわかりませんが、
最終的に“なんとかしようとする”という。
心の扉的なものに、楔を打ち込み、
隙間を見出し、こじ開ける。
一方で、心揺さぶられ、
「どうやったら殻を破れますか!?」
対戦相手に直接聞いてしまう水森由菜へ、
苦笑いしながら「私が破ってやりますよ。トロピカルな鎧を。」と
言わしめる自信もまた、
彼らそして彼女らが“先生”たる所以なように思いました。
…ただ、この時藤田ミノル選手はさり気なく自身の心情については
明らかにしなかった心情部分があったように思います。
それは、水森由菜を“見つけた”理由。
評価し、絶賛していましたが、
明確な“何故”についてはついぞ明らかにはならなかったように思えます。
そこを明らかにしなかったのは…
なんででしょうね…
何か意図があったかもしれないしなかったかもしれません。
もしかしたら今後、“解釈”可能になることがあるのかないのか。
ともあれ、両者…特に水森由菜はグシャグシャの心情を抱えたまま、
もはや“ペラッとしてる”などとは指摘されようのない覚悟で、
「自分のための戦い」として、
藤田ミノルの“挑戦”に相対することとなりました。
“見つけた”理由についてはさておいて、
試合後藤田ミノル選手の言葉からは、
ある意味では早くもこうして懊悩の渦中に迷い込んでしまった、
キャリア2年・水森由菜選手と向き合った理由の一端が示されたように思います。
「日本のプロレスラーはだいたい10年もたなくて辞める人が半分ぐらいいるよ。
そのたびに俺は悔しい。
プロレスのことが何もわかってないままプロレス界を去っていく人材のことがすごく悔しい。」
この言葉に、おそらく。
キャリア10年に満たずリングを去ったプロレスラーを応援されたことのある方は、
心のどこかにグサリッと刺さる部分があったのではないでしょうか。
藤田ミノル選手が様々な団体に上がりながら、
様々な団体で“若手の育成”を気にかけ、イベントを主催したり、
自ら“先生”を自称する理由の一端。
「自分は、殻を破れたのでしょうか!?」
心も身体もボロボロに泥々にグチャグチャに、
しかしどこか清々しさを感じる雰囲気の中、
投げかけられた水森由菜の問いを
「そんなことは知らねぇぇぇぇぇ!」
ガサッガサのドスの利いた声で即座に突っぱねた藤田ミノル。
一方で、自身と、そして水森由菜がこの試合で出せるものを出し切ったこと、
そして、二人の可能性が、この試合に収まりきらないことを示唆しながら、
この状況を作り上げた“共通の敵”たるさくらえみに対して牙を剥き、
二人はタッグを結成することになります。
そして最後に一言。
「俺“たち”の勝ちだ」
[スクショ&ドロドロ加工]
チョコプロのリアルタイム同時視聴はここまで最多で270人。
それを超える300人に目標を設定されながら、
最終的には538人にまでいたった、
水森由菜と藤田ミノル両名がほぼ一両日中に
自身に縁のあるありとあらゆる人間に喚起しまくった、その風靡。
ある選手は心動かされ、ある選手は鼓舞され、またある選手は臍を噛む。
試合を見終えたプロレスラー、あるいは関係者、
あるいはファンが様々に言葉を紡ぎ出すほどまでに、
他者の心情を喚起することとなった、
“ゴールデンウイークのメインイベント”の熱。
この1試合で何かが変わったかどうか、
それは誰にもまだわからないように思います。
それでも、社会の混乱の最中に行われたこの1試合、
そしてこの試合にまつわる出来事が、
もしかしたらあとになってこの期間を振り返ったとき、
一つのハイライトになるのでは。
そう予感させる試合でした。
が。
やっぱり恐ろしい市ヶ谷の妖精。
5月9日に藤田ミノル&水森由菜組と相対することとなった“元凶”さくらえみ、
本日5月8日、“ゴールデンウイークのメインイベント”を振り返る
ウォッチングパーティーで試合を見終え、
二人に対して「言いたいことが2つある」と、
まるでナイフを逆手に持つように、心の楔に深く切り込むように、
またもあまりに率直な言葉で斬りつけるのでした。
曰く。
“敵対する者同士が共通の敵を見つけて手を取り合うなど、
やることが凡庸である”
曰く。
“538人。凄かったがしかし、人は忘れる。今日の視聴者は110人。
あと400人どこいった?”
…これだけ心情を、人生をかけるような試合を展開させておいて、
“共通の敵”は自身の試合に向ける心情を一欠片も明らかにすることなく、
ただただ、“敵”として強大でした…
さて。
個人的には気になっていたのは、
“二人だけ”のこの試合に、“3人目”として唯一、
試合を見届けていたバリヤン・アッキ。
半ばこの試合に巻き込まれただけになっているように見えましたが、
その点を見逃さないさくらさん怖い。
“チョコプロのエースはバリヤン・アッキ”
という点について改めて指摘し、しかし一方で、
存在感が薄らぎつつあるのではないかと発破をかけに行きました。
しかしそこは強かなアッキ。
“チョコプロのエースはバリヤン・アッキ。それは変わらない。”
と言い放ち、「自分で“エース”って言うの恥ずかしくならない?」という
さくらさんの煽りにも「なりません。」と自信満々に、
キッパリと言い切るのでした。
この試合でアッキが何を見せるのか、楽しみにしてます。
日々は続き、プロレスラーの人生は続く。
水森由菜が人生を投影し、藤田ミノルがそれをあるがままに受け止め、
“勝利”を掴み取った二人が、“続き”を紡ぐ次の一歩は5月9日(土)。
“続き”が見れることに歓喜しながら、
画面の前でその戦いを、また今日も心待ちにしたいと思います。