母は車いすに座ってホールにいた。
小さい声だが、よくしゃべった。
介護の方から、今お風呂から出たところだと聞いた。
ただ、母に、「お風呂に入ったの?」と聞くと、
「今は入らない。朝早く入った」と答えた。
ただ、風呂に入ったことは認めた。
ここのところ、名前が書いていない下着や、靴下があり、それが母のものか確認してほしいとのことだった。見覚えがあるものばかりであったが、母は、「これは自分で縫ったものだ」とか説明していた。
母は、自分からよく話したが、私と、兄との区別がついておらず、兄の嫁さんのことや、その後両親のことばかり話した。この部分は、話がこちらにはほとんど理解できなかった。
また、TVのニュースの内容をよく理解していた。
ところが、ニュースに関係している人物を、すべて自分の知り合いや関係者と結び付けていた。
「あそこの家も、こんなことがあって大変だ」とか、「あの親戚は、首相の親戚だ」とかいう。
どの首相?と尋ねると、ちゃんと阿部首相と答えた。
また、ずっと前に死んだ親戚の、そのまたおじいさんが、この施設にいて、よくしてくれるとか話す。父の高校の後輩がなくなったことをいうと、お父さんの方がずっと元気なんだ、と答えた。
だって、お父さんはもう死んでいるよ、というと、今日は「そうだけどさ」と答えた。
母の頭の中には到底ついていけない状態となっている。
ここで、全く使わなかった両足は、だいぶ細くなってきた。
左手は動かさない。
エプロンが配られると、それを横に押しやる。
お茶のコップも、黙っていると右横に押しやる。
それでも、他の入居者の何人かに見られるような、大声を上げたり、騒いだりすることはなく、見ているとおかしくない。
ただ、話していることは、つい最近のことのように、大昔の記憶を話している。
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