部屋の中は異臭が充満しており、窓を開けて換気した。
私の顔を見るなり
「金を払うのかね。どうなっちゃうんだろうね、わからない」
といった。
今、下の世話をしてくれた介護の方にお礼のお金を払わなければならないのかを尋ねてきたのだ。
その必要がないことを告げると、
「近くてよかった」といった。
どこかに出かけたかを尋ねると、「ずっとここにいる」とのこと。
「うんちがね」というので、
「柔らかいの?」と聞くと
「ちっとだけ」「その代り、楽だけどね」とのこと。
「こういうところに入って、楽だよ。歳なんだからね。」という。
「一生のうちに、こういうことが何度かあるからね」
矢継ぎ早にどんどんしゃべる。
「ご飯もすぐに出てくる。朝も昼も」
それから少しわけのわからないことをいった。
「先週、お前が寝込みそうになった時、どいて鵜の学生さんが一緒の部屋にしてくれといってきた」
「世界旅行に行っている」
「石橋さんが軍務についた。もともとそういうことなんだけど、あの人は、あんまりはっきりしたことを言わないからわからない。」
「私の靴下を捨てないで。」
どこにあるのと尋ねると、ベッドの下にあるとのこと。
「病院ではTVがみられなかった。」
TVのニュースを見てかなり理解している。
阿部首相には強く反応して、「首相が出てきた」という。
「八百屋に売りつけられたものの中に上等なものがあったら分けてあげる」
「その引出しに入っているはず」
「いくらか小遣いをあげようと思うけど」
「守にも少しあげたいから」
饒舌に次々と話す。
声が小さいので、聞きとれない話も多いが、半分は昔の記憶だが、夏目漱石の名前を知っているかと聞いたら、当たり前じゃないかと子答えるなど、ついこの間の反応とはだいぶ違ってきている。
3日ぶりに訪れ、床やTV台に埃がずいぶんたまっていた。床には母の髪の毛もずいぶん落ちていたので、ウエットティシュで部屋を掃除した。また、車いすの座面にはビスケットの食べかすのようなものがたまっていたので、外で叩いた。
今日は、他の男性入居者がずいぶん荒れて、どなり声を上げ続けていたが、母はそのことは気にならないようだった。
外ではキジが鳴いていたが、キジの鳴き声は聞こえないといっていた。
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