ただ、声をかけるとすぐに起きた。
以前のように右側を向いてい寝ていたが、少し手助けをしたら左側を向いた。
そこで、TVを見せた。
また、一人でどんどん話始めた。
「まだ2つか3つ心配事がある」
「あんたが来たからいいけど」
「背中がかゆいの」
「ズボンの間に指を突っ込んで」
「すいません」
「家にはないけど」
「仕事の合間にここに来るのもいいでしょう」
「あのおじさんずいぶん驚いていた」
「守のところにまた双子が生まれちゃって」
TVに出演している人たちを指して
「これらもびっくりしていたけど」
「守がずいぶんびっくりした」
「アメリカのお客さんが来て相手するから、もうやになるだろう」
「守にすれば、名瀬双子が生まれるんだろうと思うだろう」
TVを見て
「ウナギがおいしそう」
「卵は自分でもできるから」
「外国旅行しても、うなぎだね」
「また、ウナギでも食べましょう」
「今度のことを思えば、ウナギぐらいなんでもない」
「あっちいったり、こっち行ったりして大変だった」
「皆が無事ならいいんだけど」
「昨日は、隣の部屋にあの子がいた」
あの子って?と尋ねると
「お前がアメリカに迎えに行った子」
「インド人だかドイツ人が行きたいといって来たので、忙しかった」
「隣に智恵子が入れば、世話になるでしょう」
TVで京都の嵐山が映っているのを見て、
「渡月橋」
「お前が帰ってきてから、いろいろなところに行った」
「守が帰ってきてからひと騒ぎあった」
「お父さんがいなかったら、お産なんかどうしようかと思った」
次から次へと、こちらには脈絡が感じられないことをしゃべった。
ここに書かなかったこともずいぶん話していた。
TVの内容がわかることは確かだったが、昔のことは記憶が断線している。
ウナギが食べたいことはわかった。
以前からの好物で、ただ、家族で何かおいしいものを食べようというときは、兄が「ウナギはまずやめよう」といっていた。
父と母は二人でお気に入りのウナギ屋さんによく行っていた。
大磯の有名なうなぎ屋に連れて行ってあげたこともあった。
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