この映画には特段語るべき物語はない。
誤解がある表現だが、そのように断じてしまっても良いと思う。
派手なアクションがあるわけでもなく、うっとりする様なロマンスもない。
名言に落とし込めるような明確なメッセージがあるようでもないらしい。
それでもこの映画は見終わった後も心に残り、撮影監督クリストファー・ドイルによる流麗な映像が続くこの作品の煌きはこうして鑑賞後1ヶ月が過ぎて反芻しても色褪せることのない鮮やかさがある。
この感覚は本Blogをご覧頂いている方にはBASIC CHANNELに喩えればお分かりいただけるだろうか。
心躍るようなメロディも、めくるめくるような和声の進行も希薄なBC系のDub Minimalに惹かれる人は何よりその音の"質感" ― 低音の鳴りやエコーの響き ― に耳を奪われているのではないだろうか。
つまり、音楽でいうところの"音響系"と呼ばれるものの楽しみ方を映像で提示したのが、この作品ではないだろうか。
サウンドトラックをBORIS(with SUNN O)))が担っていることを踏まえれば、それは深読みではないだろう。
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