2021/1/23に「従軍慰安婦」の韓国での裁判にて日本政府敗訴が訴確定した。韓国 文大統領はこれについて”困惑している。”との報道である。文大統領は「徴用工」判決について差し押さえられた日本企業の韓国内の財産は”現金化されないほうがいい。”と述べ、また"2015年の従軍慰安婦合意は”国家間での合意事項である。”と認めたとのこと。
これらの文大統領の発言を聞いて”なんだか拍子抜けした。”というのが正直な感想である。韓国紙も同じようなことを書いているが、今になってこれらの発言をするなら今まではなぜ従軍慰安婦への補償のための韓国内の財団解散等の”反日”政策を行ってきたのだろうと思う。
韓国での「徴用工」・「従軍慰安婦」関連の問題への対応の仕方を方自分なりにフォローしてきて、それなりに感情を高ぶらせたりいぶかったりしてきたのだが、これらの文大統領の発言を聞く限りはまともに考えてきた自分が愚かだったと感じる。文大統領の姿勢は要はご都合主義なのだ。
日本政府が日本人の元軍人・軍属とその遺族に支払った金額は累計で約33兆円である。日本政府が第2次世界大戦関連で対外的に支払った金額は約1兆円である。インフレがあるので単純な累計での比較は正確ではないが、この差はやはりいかにも大きい。
この差の理由は中国・アメリカ等の連合国が戦時賠償を放棄したこと、日本政府がアジアへの賠償について金額をできるだけ低く抑えようとしたことが大きいだろうが、何よりも戦後の焼け野が原の中にいて、日本が今のような豊かな国になろうとは日本人自身が思っていなかったことが大きいだろう。しかし、結果的には日本は現在のような豊かな国になれたのだ。それからすればざっくり32兆円は対外的に補償してもよいとは思う。
変な言い方ではあるが、もし中国・アメリカ等の連合国が戦時賠償を放棄しなければ日本はそれをナチスドイツと同じように恨みに思い、日本政府と日本国民は今よりもっと右の方に立っていただろう。
よく言われる「ドイツは戦争責任を正しく認めて、日本は認めていない」という言説は正しくない。ドイツはホロコーストについては謝罪しているが戦争行為・植民地支配について謝罪しているわけではない。また、戦時賠償については法的に認めているわけではなく、”道義的”に認めているのである。
日本もまた法的にはサンフランシスコ条約およびアジア各国との一連の条約にて法的には補償は終了している。中国へのODA・アジア女性基金・韓国への「従軍慰安婦」合意に基づく補償などで”それなりの”道義的な補償はしていると言える。その意味ではドイツに比較して日本が著しく劣っているわけではない。ただし、上記の33倍の差を鑑みれば、”道義的”に日本はもっと対外補償をしてもよいようには見える。そのうちのいくらかが「徴用工」問題への対応に使われることも可能かと思う。
一番の問題はもし対外的戦時補償を再度行うとしても、どの国へどのような方法でどのタイミングでどのような大義名分で行うか、そして韓国はまだ日本の謝罪を受け入れる用意ができていないことにいかに対処すべきかである。
また中国は「日本の戦争指導者が悪いのであって、日本人民は悪くはない」とのロジックにて戦時賠償を放棄したが、今後中国共産党の支配力が弱まってくるに従い。中国の国民的怨念が(今の韓国で起こっているように)吹き出すことが予想されるが、それにどう対応するかである。