「熱闘」のあとでひといき

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立正大学 vs 大東文化大学(関東大学リーグ戦G1部-2022.10.16)の感想

2022-10-25 01:45:57 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


今シーズンからリーグ戦グループ1部で戦う立正大学と東洋大学はいずれも大東文化大学と同じ埼玉県に拠点を置くチーム。しかも、立正大学は森林公園駅、大東文化大学は高坂駅、東洋大学は鶴ヶ島駅がそれぞれ最寄り駅で、練習グラウンドは東武鉄道の東上線沿線にある。リーグ戦ではライバルでもご近所同士、お互いに切磋琢磨してレベルアップして欲しい。

さて、本日のセナリオハウスフィールド三郷にはその埼玉県の3チームが一堂に会する。そして第1試合は立正大学と大東文化大学の直接対決。立正大はここまでの3戦で1勝2敗と負け越してはいるが、日大、東海大ともいい戦いが出来ている。一方の大東大も同じく1勝2敗だが、対戦相手は前年度の下位校。そして、この試合の後には前年度上位校との対戦を控えている。目標は違ってくるが、両チームともに負けられない。

◆前半の戦い

昨日も同じ場所で法政と関東学院の試合を観ているが、本日の2チームとは体格が一回り(以上?)違うことは一目瞭然。立正大のキックオフで始まったこの試合は、序盤から留学生選手を中心とした大型選手同士による激しい肉弾戦の様相を呈する。開始直後の3分、立正大のFB武田が自陣奥深くで相手キックの処理を行う際に、タックルを受けて負傷交代するアクシデントに見舞われる。リスタートのラインアウトから大東大がモールを形成して前進。HO西林が抜け出て難なくゴールラインを越えた。先発メンバーが負傷でピッチを去り、あっさり得点を許した立正大に不安がよぎる。

さて、本日の大東大でプレースキッカーを務めるのはCTB(13)のハニテリ・ヴァイレア。ひとつ前の試合では同じCTB(12)の戸野部のキックが試合を決めた大東大だが、実はさらに優れたプレースキッカーが居たことを知る。この日、ヴァイレアは5本のプレースキックをすべて成功させたのだが、タッチライン際からでも2本のポールの真ん中にボールを収めるキックの正確性・安定度は特筆に値する。

ヴァイレアはキックオフでも鋭角的に高く上がるドロップキックで相手を悩ませ、自陣奥深くからは足の長いキックでチームをピンチから救う。ラインアタックでも落ち着いてプレーできる。過去3戦、CTB(13)で先発だったペニエリ・ジュニア・ラトゥの負傷によりスタメンとなった格好だが、もしこの試合に勝っていたらPOMの有力候補だっただろう。

いい選手を見つけたので話が逸れてしまった。序盤のアクシデントに動揺することもなく、立正大はすかさず反撃。キックオフで大東大が確保したボールをターンオーバーに成功してラック。左サイドから角度を付けて接近してきた(ノーマーク状態の)WTB大月にパスが渡り大きく前進。ゴール前でフォローしたSH中森がラストパスを受け取る。GK成功で7-7とゲームはあっと言う間に振り出しに戻る。

大東大も負けていない。10分、立正大陣ゴール前でのラインアウトからモールを形成して押し込みHO西林が連続トライ(GK成功で14-7)。次は立正大の番で、16分、大東大陣ゴール前でのラインアウトを起点としてラインアタックでボールを右に展開しNo.8ユアン・ウィルソンがトライ。GKは失敗するものの12-14となる。試合はこのまま最終スコアが予測不能なくらいの撃ち合いの様相を呈してきた。

しかしながら、予想に反し、ここから前半終了間際までなかなか得点表示が変わらない膠着状態となる。前半は蹴り合いとなる場面が多かったが、立正大にとって痛かったのは相手陣22m付近を狙ったと思われるキックがことごとく22m内に到達してフェアーキャッチされてしまったこと。ヴァイレア選手等のロングキックが効果的で、前半のキック合戦は大東大の勝利。

電光掲示の得点の数字がようやく動いたのは40分を経過してから。大東大が立正大キックに対するカウンターアタックからボールを右に連続して展開し、最後は右隅への絶妙なキックパスがWTB(11)小田嶋のダイビングトライを有無。GK成功で21-12と大東大のリードが9点に拡がる。大東大としてはこのまま前半終了にしたかったところだがHWL付近でのスクラムで反則を犯す。立正大のSO吉永が約50mのゴールキックを成功させ15-21と、ビハインドを(微妙な)6点差に縮めることに成功して前半が終了した。



◆後半の戦い

後半は開始早々に立正大が先制する。4分、大東大陣ゴール前でのラインアウトからモールを形成して前進し、HO陣内がトライ。GKは失敗するが20-21と大東大のリードは僅か1点に縮まる。立正大は畳みかける。10分、大東大陣22m内左サイドのラインアウトを起点として、パスを受けたNo.8ユアン・ウィルソンが力強く前進。ラックを経てボールがCTB小熊に渡りトライ。GK成功で遂に立正大が逆転に成功する。前半はトライを挙げる等活躍していたとはいえ、あまり目立たないユアンだったが、後半へエンジン全開。もしかしたら、ベンチから後半勝負を言い渡されていたのかも知れない。

更に立正大。15分の3点を狙ったショットは失敗するが、大東大の自陣でのパスをCTB(13)キニ・ヴェイタタがインターセプトして前進。ラックから左に展開してSO吉永がトライ。GK成功で34-21となる。波に乗る立正大は23分にもう1つトライを追加。大東大陣でのスクラムを強力にプッシュし、ここでもNo.8ユアン・ウィルソンがボールを確実に前に運ぶ。ボールはラックから右に展開され試合開始早々にFB武田に替わって出場した23清永がゴールラインを越えた。GK成功で41-21と立正大の怒涛の4連続トライで41-21と立正大のリードは一気に20点まで拡がった。先に大東大の13番(ヴァイレレ)のことを書いたが、立正大の13番も(サイズもあるが)沈着冷静な選手で要注目だと思う。

しかし3T3G(21得点)で逆転可能な20点リードはけして安心できない。「キックオフからカウンターアタックでトライ」が3回続けば逆転可能だし、大東大にはその力が十分にある。ここから(このまま負ける訳にはいかない)大東大の死力を尽くした反撃が始まる。大東大のFWにはLOジョセフ・ドモニとNo.8サイモニ・ヴニランギといった強力なボールキャリアーが居るし、BKにボールが回れば得意なパス回しで相手を翻弄出来る。法政とはまた違ったパス主体のランニングラグビーで魅せてくれるチームに対して油断できない。

果たして終盤に迫った30分、大東大に起死回生のトライが生まれる。立正大陣22m内からのラインアウトからの連続攻撃でSO落がトライ。GK成功で28-41とビハインドは13点に縮まる。立正大に焦りはなかったと思うが、もったいない反則などミスが目立つようになったこともあり大東大の勢いを止められない。

時計は40分を経過。反則が増えてきた立正大に対し、大東大はタップキックから速攻で攻め続ける。43分には立正大選手に対し反則の繰り返しによるシンビンが適用される。そして45分、大東大はサイモニがトライをもぎ取る。やや難しい位置からのGKをハニテリがここも冷静にポストのど真ん中に蹴り込み遂に大東大のビハインドは6点!(25-41)。

「セナリオ劇場」と言ったらいいのか、最後の最後に逆転可能な点差を残す試合が続くこのグラウンドでの試合は本当に心臓に悪い。何故か関係者にとっても胃に穴が開きそうな展開になってしまう。しかし、立正大は1部リーグの経験があるとは言え、昇格したばかりのチームとは思えない落ち着きを見せて大東大の猛攻に耐え抜いた。



◆試合後の雑感

立正大は1部リーグ在籍時の試合を何度も観ている。キック主体の手堅いラグビーは得てして「大人しい」という印象をもたらしたことを思い出す。エンジンの掛かりが遅く、終盤に見せる怒涛の攻撃が何故前半から出来なかったのかと思わせたことが何度もある。そういったイメージを完全に払拭したのが今シーズンのチーム。「ニュー立正大」と呼びたくなるくらいに前半から積極的に攻めるチームへと変貌した。また、過去のチームにはなかった試合運びの巧さも身につけた模様。前日と本日で3試合6チームを観たが、この時点ではチームの仕上がりは一番と思えた。まだまだ発展途上のチームの今後の戦いが楽しみ。

敗れて1勝3敗と厳しくなった大東大。だが、負傷欠場者が相次ぎ、後半のスタミナに課題があるとは言え、チーム状態は悪くないように見える。スクラムの圧倒的な強さがなくなっているのが痛いが、ジョセフやサイモニと言った攻撃の核がしっかりしており、BKのキック力も大きな武器になっている。戦績は危機的だが、状況は悲観的ではない。前を向いて頑張って欲しい。


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