選手達にとっては、夏合宿を前にした束の間のオフなのにやる意味があるのかと思っていた。そもそも「オールスター」って何だ?とかとか。それに、予想通りとは言えこの酷暑。梅雨が早く明けてしまったのが誤算だったのか。
実際にゲームが始まってみると、帝京主体で固めた対抗戦選抜にいいようにやられて9トライの0-55まで行ってしまった。リーグ戦Gはディフェンスの破綻が痛い、というかそもそもの弱点が露わとなってしまった感じ。総体的に高いし、捕まえても差し込まれてどんどんゲインされる。攻めても肝心なところでミスが出てスタンドからは湯気のように「あ~あ」が吹き出していた。
とまあラグビーの試合としては散々な内容だったのだが、正直言うと「とっても楽しかった!」というのが一番の印象になる。たまにはこんなラグビーがあってもいいのかなと思ったくらい。やっぱり勝負(とは到底言えなかったが)はやってみないと分からない。
◆アメフト型の選手起用にも一理あり
とにかく選手達は暑さとも戦わなければならなかった。そんなこともあってか、リーグ戦チームはこまめに選手を入れ替えて試合を進めていった。普段の試合ではあり得ないし、もし許されたとしてもラグビーの内容そのものを変えてしまうことになる。
しかし、こういったコンバインド型のチームの場合はこの方式もありかなと思った。そもそもが、普段一緒にプレーしていない選手達が集うわけだから、プレーでは想定外の対応が求められることが多くなる。逆に言うと、選手の状況判断を鍛えるにはプラスになる面がある。また、選ばれてここに来た選手達だから、そういったことに楽しさを見いだすこともできるはずだ。
いったんはピッチから離れても、いずれまた戻るということなら集中も切れないし、外から自分たちのチームを観て対策を考えることもできる。いい選手が揃う分だけ戦術面でもいいトレーニングになるのではないだろうか。対抗戦チームが楽勝ムードになってしまったこともあるが、終盤はチームがいい方向に収斂していったように感じた。ちょっと贔屓目かもしれないが。
◆一気に若返った観客席
キックオフには間に合わず、バックスタンド側から競技場に入ったのだが、メインをたくさんの観客が埋めていてびっくりした。しかもみんな若い。すぐに選手を派遣している各チームが動員をかけた成果だと分かるものの、ラグビー場に来たとは思えないような錯覚にとらわれた。
言い換えれば、こと大学ラグビーに関しては、いかに観客の年齢層が高くなっているかを証明していることにもなる。ラグビーが一番必要としていることは、若い観客の獲得だと思った。その方が絶体に盛り上がる。秋のシーズンになると、ラグビー選手達はそれぞれのチームの試合で週末はラグビー観戦ができないことも若返りが叶わない原因だが、どうやって若いファン層を増やしていくかに知恵を絞るべきだろうと思った。
◆応援ならリーグ戦チームの勝ち?
0-55になっても悲惨な感じにならなかったのは、スタンドからの応援が途切れることがなかったことが大きかったように思う。すぐ前には中央大の部員達が居たのだが、チームメイトの山北がナイスタックルを決めたときに盛り上がったのは当然として、ライバルチームの選手達にも声援を贈っていたことが心地よかった。とくに人気があったのはPR1の選手、すなわち大東大の高橋主将だった。最初、選手達からしきりに「隊長」「隊長」という声が飛んで、いったい誰なんだろう?と思ったがほどなくして、それは高橋のことだと分かった。
その「隊長」もけして茶化した感じではなく、尊敬の意味も込められていたように感じられた。その高橋がリーグ戦Gの最初のトライを挙げたときに観客席が大いに盛り上がったことは言うまでもない。この応援のお陰で、リーグ戦グループがひとつになったことを感じることができた。お互いに切磋琢磨しながらも、協調して仲良く強くなっていけばいいのだから、この雰囲気を忘れないでシーズンインして欲しいと思った。
◆山梨学院の選手達も来ていた
この日は、春季大会に参加したチーム以外の選手達も観戦していたようだ。中でも目立ったのは、大挙してやって来ていた山梨学院の選手達。昨シーズン、あと一歩のところで1部復帰を逃し、春季大会のCグループにも届かなかったチーム。1部復帰に向けて、モチベーションを高める意図から観戦することになったのかも知れない。
逆にここに居るべきチームの不在が気になった。それは山梨学院と同じく、1部復帰を目指す関東学院。本来なら、ここで1部リーグの選手達のプレーをしっかり見て、チーム一丸となり、決意を新たに練習に臨むということがあってもいいのではないかと思う。頑張れと声援を贈る他校のファンだっているはずだ。スタンドでリーグ戦Gのチーム関係者がまとまりを見せていたからこそ、ひとつのチームがその輪から離れていきつつあるような気がしてならない。取り越し苦労かも知れないが。