ハンソンはティーグランドに立って、素振りを繰り返している。煩わしい距離、風向き、風速の測定、打つ角度の計算などをいとわずにやっている。いっしょに回っているゴルフ仲は我慢できなくなって訊いた。
「ハンソン、今日はどうしてそんなに狙いをつけているんだい?」
「今日は珍しく女房が来ているんだ。今、クラブハウスの二階のベランダから私が打つのを見てるよ。だから、俺は一打で当てるように狙いをつけてるんだ、」
ハンソンは顔も上げずにまじめくさって言った。
「もうやめよう!どんなに狙いをつけても、彼女に一打で当てるのは、ここからじゃ到底無理だな!」
(『半月文摘』2014-1-15「幽黙空間」)
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