季節って不思議なものなのかもしれない。
毎日毎日寒い日が続くと、早く暖かくならないかなと思う。梅が咲いて、桜が咲いて、そんなポカポカ陽気にあこがれる。
毎日じめじめした梅雨の時期には、あーこんな日が続くのは耐えられない。うっとうしいのも早く終わらないかなと思ってしまう。カラッと晴れた夏空を待ちこがれる。
夏もしかり。
ここ近年の夏は特に猛暑日が続き、その暑さにはうんざりしている。だから今ごろの季節になると、ほんとうにしみじみとその良さを感じる。
それでもほんのたまにだけれど、過ぎ去った季節をなつかしく思えることがある。
汗をいっぱいにかいて草むしりをした日。
帽子をかぶって太陽の焼きつく中で、ひまわりの花を見に行った日。
ひたいからの汗が服に落ちたり、腕にポトンと触れたり。この夏の思い出も数えたらきりがない。その夏その夏がいつもやっぱり新鮮に思える。一生に一度のその場面。
たとえその場での瞬間的な失敗や後悔があったとしても。
まあるくて白くて光るその肌の露にゴメンと言っている夏
令和元年9月 「NHK短歌」10月号
「つれづれ(121)終わってしまうとやっぱりなつかしい夏」