ヒフミの無謀の旅

やれやれどうやら罰金は何とか免れたが出足からこの調子なのだからこれからどうなるやらと思い巡らしていると、隣にはもう一人旅行者がいて車掌に何か言われて書類を差し出していたがどう見てもパスポートではないようでした。盛んに車掌がその人に早口でしゃべっていたので、ははあどうやら明らかな無賃常習者らしいのです。結局その人とコンパートに寝る羽目になるのだが服装はそう見えないけど異臭がしてその匂いたるものとても我慢が出来ないほどなのだが飛行機でも寝ていなかったので臭いなあと思いながら寝ているとその人がタバコをくれというのを断るとやがて靴を脱いで靴下を左右に履き替え始めたのです。ますます匂いが酷くなるのだがあまり刺激すると寝ている間に首でも絞められたりすると大変と思いぐっと堪える事となった。

私も眠いので臭い臭いと思いながら寝てしまった。コンパートのドアの開く音で目が覚めると二人の警官が入ってきたが、その一人が思わず後ずさりして部屋を出てこの匂いの酷さに閉口しているようでした。私が鼻をつまんで様子を知らすと大声で笑い出し、この匂いの中で寝れるものだと二人の警官と私も笑うしかなく三人で大笑いでした。警官達にはアホな日本人に映ったに違いないが、私にしてみれば廊下で寝ることも出来ずと言ってドアを開けると寒くて寝られないので仕方なくでした。今考えてみるとドゴール駅では寝台車の席が無かったのであって、ローマまでチケットが買えないのではなかったのです。英語が話せないのはトラブルがあったときには痛切に英語が話せたらと思うがこの後にとんでもないことが起きるのですがこの時点では困ったことはこれで終わると思っていました。