「差別」 と 「条例」

一般に「差別」には、「冷遇」以外に「優遇」する事も含まれていて、この「優遇」にも「差別する側」に対するモノと「差別される側」に対するモノがあります。また、「個人の感情による差別意識」と、これを集合させた「レイシスト集団による差別」、更に「慣例・風習による差別」と、そこから派生した「法律に拠る差別」等もあります。

法律に馴染まない「個人の差別意識」は、例えば「異性を嫌う人」とか、「乞食根性の人を嫌う人」などは、明らかに他人の特性に対する「差別」ですが、これらは趣味や人生観の問題なので「お互い様」と言え、「個人の思想信条」を法律で規制するのは間違いと言えます。

「差別」が問題になるのは、「法律上の偏りがある」場合で、「個人の差別意識」を議論しても何の解決にも繋がりません。それどころか寧ろ「個人の差別意識」は、他人の考えの違いを認める限りに於いては、自分が優位に立っていると自認する事でモチベーションにも繋がり、良い結果を生む事も考えられます。

差別：その属性を理由にして何らかの除外行為や拒否行為、特別な扱いをする行為等で、優越行為も含む。

国連の人権理事会や人種差別撤廃委員会が人種差別撤廃条約に基づきヘイトスピーチ禁止法の制定を勧告していて、マイノリティーの尊厳と基本的人権を守る為に法規制すべきだとしました。「個人」が「ある属性の団体」に対して特別な行為をした場合は、「少数者」は「個人」の方なので、行政がその「個人」に対して「制裁」を加えるのは、その行為が「刑法」に違反している場合に限るべきです。

「マイノリティーの尊厳」とは言っても、マイノリティーを定義する為には人間を特定の特質で分類する必要があり、例えば「人それぞれ違ってよい」のなら、全員がマイノリティーになります。逆に「反日日本人」ならば、他の日本人と一緒くたにされる事には耐えられないかもしれません。更に言うと、殆どの日本人には「差別意識」は無いので、「差別主義者」がマイノリティーになってしまいます。

「ヘイト禁止条例」を悪用する「強者」も見受けられます。ヘイトスピーチの定義は、

大阪市：特定の人種もしくは民族の個人や集団を社会から排除し、憎悪や差別意識をあおる目的で侮蔑や誹謗中傷するもの。
川崎市：本邦外出身者に対する不当な差別的言動。
観音寺市：公園に於いて、人種、国籍その他の出自を理由とする不当な差別的取り扱いを誘発し、または助長する恐れのある行為。

等です。

観音寺市の場合は、「日本国籍を理由にした不当な差別」が含まれるかどうかは判りませんが、「誘発する恐れがある行為」も含まれるので、被害が出る前に「公園の使用」を禁止できるようです。しかし、何が「不当」なのかは行政のさじ加減一つなので、トある国の様に危険な「人治主義」の道を開きます。

川崎市の場合は、「日本人に対する差別的言動」は含まれないので、柔らかい銀行のＣＭの様に「日本人は犬の子」とされても「ヘイトスピーチ」の対象にはなりません。勿論、「熊の化生から生まれた民族」もあるくらいなので、これが「ヘイト」になるかどうかは「民族意識」にもよります。

大阪市の場合は、「特定の民族」に日本が含まれるのか、或いは「民族を特定しない場合」は規制に含まれないのかは判りませんが、「憎悪や差別意識をあおる目的で」と書いてあるので、煽る意思を持たずに単に自分の意見を大声で発表するだけでは条例違反にはならないのかも知れません。

例え「差別意識」を持った人がいたとしても、その「個人」を特定して法律や条例で「排除」する行為は、それ自体が「人権侵害」と言えます。「差別」や「ヘイト」などは定義が不明瞭で、逆に「定義する事が差別」にもなります。例えば「特定の人種」に特定される人種は、それ以外の人種を差別する事になり、その「条例」自体が「差別条例」になり、「ヘイト」を誘発します。

日本人を「チョッパリ」とか「ジャップ」や「犬の子」等と差別しても「ヘイト禁止条例違反」にはなりませんが、ロシア人（ロスキー）を「ロスケ」と言ったり、中国（チョンゴ）を「チョンコ」と言えばヘイト認定されます。