別れ

　今朝も、孫は小さなヨーグルト容器に水をよそっては、ベランダの植木鉢一つ一つに水をやる。こまごまとした作業に精魂つくす・・・そんな作業がきりなく続く。最初、洗濯物を干す時間を退屈させないように考案した遊びだったはずだが、彼の集中力は見事なものだった。洗濯物はとっくに干し終えた。なのに、彼はなかなかベランダからあがって来なかった。

　そこで、今日はお母さんが君を迎えに来るんだよと話した。彼はびっくりして、私を見た。昨夜、母親の見舞いに出かけた時、私たち夫婦は外でお茶飲んで、後から迎えに来るからと、孫を母親のもとへ置いていこうとした。ちょうど、病院の夕食会が始まるところだったからだ。ところが、孫はバアバと行くから、母ちゃんとはバイバイすると、私たち老夫婦を追うしぐさをした。驚いた。孫はけなげに自分の宿命を感知していることがわかった。

　母親のお迎えを知った孫の喜びは沸騰。すぐに、パジャマから夏着に着替えて、靴をはき、私を追いたてるように急がせて、外へ出た。孫は駆け寄る母親に抱かれて、至福の至り。昨夜、バアバと帰ると母親に別れを告げた孫のつれないそぶりは、ずいぶんと母親を哀しませたときいている。それ以上に、孫は大人なのである。辛い別れの前に、自分から別れる決意をみせたんだもの。高く評価したいと私は考えている。孫との生活にふりまわされた５日間だったけど・・・いないと、しみじみ淋しさも感じるものだね。