ヨーコのきまぐれ日記

深夜の父の冒険

 深夜、母の叫びで跳び起きた。父がいないという。玄関先に置いてある父の靴がないという。ウワッと、思うまでもなく、弟はコートをはおり、父のコートを手に家を出て行った。私の住むマンションはロック式だから、いったん外に出てしまうと、鍵がないと、部屋にはいることができない。私は母に自宅にいて、弟が押すブザーがなったら、すぐドアの開閉ボタンを押してと伝え、鍵を手に、即、外へ出た。

 夜空を見上げると、多くの☆がまたたき、実に美しい。月は十三夜あたりだろうか・・・青白く丸い月がこうこうと輝いていた。風はないが、外気はチンと凍えるほど、冷たい。まず、建て替え工事に入る父の家を訪ねた。家の周りに、父の姿はない。そこで、暗い道を通り、自宅へと向かった。すると、ロック式マンションの玄関ドアにゆくてを阻まれた弟と遭遇。父は近くのコンビニにいたという。玄関ロックをはずし、弟は車椅子を持ちだし、一緒に、コンビニまで走った。

 父は杖ももたず、カーディガン姿のまま、コンビニで買ったビニール袋を手に立っていた。しばし、父を預かってくれたコンビニ店員にお礼をいって、父を車椅子に乗せた。夜空の下、息子と娘は車椅子の父のお喋りをききながら、歩いた。父は元気にお喋りしていたが、私たち二人は息があがっていた。マンションの玄関を入ると、こちらに向かってヨボヨボ歩く母の姿があった。どおりで、弟はマンションへ入室できなかったはずだ。父の深夜の冒険は午前二時に無事、終わった。


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