今日の本紹介

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

本紹介54「月光」

2021-02-19 14:12:00 | 日記
同級生の少年が運転するバイクに轢かれ、美しく優しかった姉が死んだ。殺人を疑う妹の結花は、真相を探るべく同じ高校に入学する。やがて、姉のおぞましい過去と、残酷な真実に直面するとも知らずに……。ピアノソナタの哀切な調べとともに始まる禁断の恋、そして逃れられない罪と罰を描く衝撃のR18ミステリー。

人間の本性及び赦すとは何かを描いた作品。甘い誘惑には誰しもが惑わされ、そこに倫理は無力である。しかしその代償として悪魔に身を捧げる生活が始まる。
主人公の姉は禁断の恋の誘惑に負け、その結果、弱みを握らせ陵辱されてしまうが、そこで、自分の罪ごと曝け出して助けを求められる強さがあれば皆救われたのかもしれない。厚い人望が皮肉にも彼女を孤独に追い込み、そして破滅を招いた。最期まで周りからの期待に縋り、自らの穢さを曝け出すことが出来なかったという点では、彼女は不幸でもある。
繰り返しになるが、自らの穢さを曝け出すことができる人間は真の強者だ。また、それを赦し受容できる強さを我々は持つべきだと思った。

『月光 (中公文庫)』の感想

どんな人でも弱みや欠点はある。ただ、それを曝け出して助けを求めることができるかどうかは当人次第であり、助けを求めることができる人間は恵まれているのだと思う。

#ブクログ




本紹介53「カラマーゾフの兄弟 上」

2021-02-09 23:29:00 | 日記
物欲の権化のような父フョードル・カラマーゾフの血を、それぞれ相異なりながらも色濃く引いた三人の兄弟。放蕩無頼な情熱漢ドミートリイ、冷徹な知性人イワン、敬虔な修道者で物語の主人公であるアリョーシャ。そして、フョードルの私生児と噂されるスメルジャコフ。これらの人物の交錯が作り出す愛憎の地獄図絵の中に、神と人間という根本問題を据え置いた世界文学屈指の名作。 

東大教授が新入生に進める本No. 1。
全ての哲学が、三部作にて余すことなく網羅されている。
上では、宗教という概念が比重として大きなウエイトを占める。
血縁と宿命の因果関係にも注目である。
残りの2冊は後日紹介する。

『カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)』の感想

人間の本性を嫌というほど全面に押し出した作品。宗教談義は脳内翻訳に一苦労するが、信仰心が人の心の大部分を占める西欧特有の文化を学べたのは非常にためになった。

#ブクログ




本紹介52「友だち幻想 人と人のつながりを考える」

2021-02-08 04:03:00 | 日記
人付き合いのルールを知り少しの作法を身に付けるだけで、複雑な人間関係の中で必要以上に傷つかず、しなやかに生きられるようになる処方箋のような本! 
友だちは何よりも大切。でも、なぜこんなに友だちとの関係で傷つき、悩むのだろう。人と人との距離感覚をみがいて、上手に“つながり"を築けるようになろう。 
「みんな仲良く」という理念、「私を丸ごと受け入れてくれる人がきっといる」という幻想の中に真の親しさは得られない! 人間関係を根本から見直す、実用的社会学の新定番書。 
これでもう、「みんな仲良く」のプレッシャーとはさようなら。 

「集団」「人間関係」という切り離せない社会的動物としての理を成り立ちや経緯、時事ネタと結び付けてある社会学本の代表格。
学校ではよく一人で行動する者を「ぼっち」と揶揄する風潮があるが、それは弱さの裏返しであり、一人でも強く生きられる者への羨望の眼差しなのだと思った。
なぜなら、集団からくる愚かさというものがあるからである。ある意味一人とは賢さの選択のその最たる例でもある。
コロナ禍は集団性を壊し、個人性を際立たせた。この本における人間関係の在り方は、まるでこれを預言していたようにも感じる。

友だち幻想 (ちくまプリマー新書)』の感想

人間関係からくる弊害を多数盛り込んでおり、誰しも経験したことがあるだろう。
群れることが悪いとは言わないが、群れることが原因でしなくてもいい苦労をすることもまた事実である。


#ブクログ




本紹介51「君がいる時はいつも雨」

2021-02-06 17:27:00 | 日記
孝広は幼いころに事故で両親を亡くし、叔父夫婦のもとに身を寄せている。夏休みが始まり、寂しさを紛らわせようと大好きな野球に打ち込むのだが、そこへ謎の男の子が現れた。必ず雨とともに姿を見せる彼はいったい何者なのか?そしてやってきた本当の目的は?やんちゃな性格に振り回されながらも、孝広は少しずつ変わってゆくのだが…。出会うはずのなかった2人の切ない夏休みが始まる。

「雨」というものがこの物語の根幹となっている。新海誠監督作「言の葉の庭」は私も大好きな作品であるが、それと似た構図で嬉しかったことを覚えている。
私はよく、人と人は見えない何かで繋がっていると思うことがある。自分の意思とは無関係に、同じ人と一緒になったり、接点が生まれたりする。それは先程の「見えない何か」、具体的に言えば、因のようなものが作用しているのだと思っている。
この物語の兄弟は、本来なら出会うはずはないが、亡くなった両親の強い想いと血縁という因が、不可能という垣根を容易に超越したのではないだろうか。
この物語は、他三作品、同時間軸として出版されている。またの機会にそれぞれ紹介していきたい。
『【文庫】 君がいる時はいつも雨 (文芸社文庫)』の感想

真摯な想いは時間や場所の垣根を越えてなんらかの形で人に届くようになっている。私はそう信じている。それを証明してくれた話。この兄弟は出会うべくして出会ったのである。

#ブクログ




本紹介50「ベイビーメール」

2021-02-01 02:19:00 | 日記
「私の赤ちゃん、大切に育ててあげて」。抉られた腹部にへその緒だけを残した女性の変死体が次々と発見された。高校教師の雅斗は、親友の恋人が犠牲になったことから調査を始め、被害者全員が死亡前に、赤ん坊の泣き声が聞こえるメールを受信していたことを知る。“ベイビーメール”という題名のそれは、恋人である朱美のもとにも届いていて…!?雅斗は恋人の命を救うことができるのか―山田悠介初期の傑作都市型ホラー!

最後のシーンは誰もが鳥肌を立てるだろう。生命の象徴である子供達に命を損なわれることほど酷なものはない。
感想にも書いたことだけど、生命の誕生とは、ある種の不可解さが伴うと思う。人の思考が決して及ぶことのない領域があると思う。その概念をオカルトに置き換えて展開した著者の発想は素晴らしいと思う。
子供という存在は、人の運命を大きく左右する力があると思う。
この一言に尽きる。

『@ベイビーメール (角川文庫)』の感想

生命の誕生とは、色々な意味で不可解さが伴うのだと思った。
子供という存在は、人の運命を大きく左右する力があると思う。

#ブクログ