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『「指を折って」と指折り待つ彼女』

『「指を折って」と指折り待つ彼女』(中田祐三, 2021/05, カクヨム)
https://kakuyomu.jp/works/16816452219973570902

読了しました。
大学生の平坂隆司は、その恋人であり、マゾヒストである竜宮之葉からの要求に悩んでいた。その要求とは「誕生日に私の指を折って」と言うものだったからだ……
今回は「#RTした人の小説を読みに行く」企画による読書です。

大学生の平坂隆司は同い年の竜宮之葉と付き合っていた。
之葉はマゾヒストで、隆司に加虐の要求をしてくる。
隆司は悩み迷いながらも、之葉のその要求に応えていた。
しかし今度ばかりは隆司の苦悩も深かった。
それと言うのも、之葉からの要求は「誕生日に私の指を折って」と言うものだったからだ……

この物語には3人の登場人物がいます。
(今は)サディストでもマゾヒストでもない平坂隆司。
隆司の恋人であるマゾヒストの竜宮之葉。
之葉の親友であり、実はピーピング(覗き見)趣味に憑りつかれていてる河野霧子。

「SMのSはサービスのS、SMのMは満足のM」とはよく言ったものです。
隆司のパートからは、マゾヒストである之葉の要求に、必死で応えてゆく彼のひりつく様な苦悩が伝わってきます。
この先、隆司はずっと苦悩しながら之葉と付き合ってゆくのか、それとも耐え切れずに別れるのか、あるいはサディズムに目覚めるのか。
隆司は苦悩しつつも之葉の要求に十分に応え、かつ行為中は没入していることから、サディズムに目覚めるところまでいかなくとも、サディストを演じきれるようになるのではないかと感じました。

之葉のパートからは、彼女の苦悩が伝わってきました。
彼女は被虐の要求を恋人に突き付け、その苦悩する反応を楽しんでいます。
しかし、そうしている自分に悩んでもいる。
隆司のパートだけを読んでいると、之葉の傲慢さが感じられます。
しかし、之葉のパートを読んで、彼女の苦悩を知ると、少し印象が変わりました。

ただ、之葉が、自身を苛む苦悩に酔う姿を描いて欲しかったです。
そうしてこそ、マゾヒストとしての彼女が明確になるのではと思いました。
彼女は隆司の苦悩する姿に酔っていましたが、隆司を苦しめている自分の性癖には苦悩するだけで、酔ってはいませんでした。
マゾヒストにも様々なタイプがいるでしょうけども、肉体的な苦痛に陶酔するだけでなく、精神的な苦痛にも陶酔する姿があれば、より物語の説得力が増したと思います。

霧子のパートでは、彼女のピーピング(覗き見)趣味について語られますが、どうも付け足しのような印象を持ちました。
それと言うのも、彼女の苦悩と陶酔が伝わってこなかったからです。
ピーピング(覗き見)趣味の苦悩と陶酔を描くのはかなり難しいと思います。
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