シリーズ小話です!
書ききれない場面が多い!!
海からの帰り。
行きと同様、小一時間電車に揺られていた四人がようやく最寄りの改札口を出たところで、そうだった、とガロウが声をあげた。前を歩いていた金属バットと、彼と手を繋いでいたゼンコが振り返る。
「あ?」
「コレ、返す」
シャツの胸ポケットに仕舞ったままだったソレを取り出して、金属バットへ手渡す。黒いスタンダードなサングラスが、駅内の照明に反射してキラリと光っている。
「おう、忘れてたわ」
「あー・・・なんだ、その・・・助かったわ」
「・・・おう」
どこかぎこちない態度と会話になってしまい、本人たちはバツが悪そうにそっぽを向き合う。声を荒げずに会話をする事がどうにも落ち着かない様子の二人を、さきほどまで微睡んでいたタレオとゼンコの二人が、見守るような瞳で見上げていた。
「あー、おまえ、次は自分の持ってこいよ」
「え、ああ・・おう」
「じゃ、行くわ。またなタレオ」
「は、はい!今日はありがとうございました!」
「バイバイ、タレオくん!ガロウさん!」
「ばいばい!」
「おう」
ゼンコの手を握り直し、さっさと去ってしまう後ろ姿をしばらく見つめていたガロウに、隣のタレオから声があがる。
「・・・おじさん、」
「ん?」
「よかったね!」
へへ、と嬉しそうに目を細めたタレオがガロウを見上げる。日焼けした顔が赤く色づいて、そんな鼻先を掻きながら照れ笑いを浮かべている。
似たもの同士故にぶつかる事も多い金属バットとガロウの二人だが、根っこの部分にある荒々しい優しさを、彼は子供ながらに理解していた。タレオにとってガロウと金属バットは、とても大きな存在なのだ。そんな二人が、最近は言い争う事も少なく、打ち解けてきている。その事実に我慢できず、心底嬉しそうに、タレオからは笑顔が溢れている。
そんなタレオに一瞬驚いたガロウだったが、次の瞬間にはぶっきらぼうに、おう、とだけ返し、二人が去った方向とは反対方向へ歩みを進めた。それに続いたタレオの気配を感じながら、先ほどの金属バットの言葉を思い出す。
(・・・次もあるのか)
自然と上がる口角。もちろんその言葉に深い意味がない事をガロウは理解している。
複雑な心境で、それでも少しづつ改善している関係性に、内心では喜んでいる自身がいた。なんせつい先ほど、金属バットへの淡い想いを自覚したばかりである。
「次ははもっと深いところまでもぐれるように、泳ぐ練習しなきゃ!」
タレオがガロウの隣に並び、見上げながら続ける。
「今日はほんとにありがとう、おじさん!」
誰がおじさんだ、と返してから、海水で少しごわつく頭をぐしゃぐしゃに撫で回す。
ガロウの心はじんわりとした温かさに包まれていた。
ガロウさんの瞳の色素だと太陽の光苦手そうって思って海での件書いてました!
ゼンコちゃんとタレオくんまじ天使!
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます