妄想と戯言2

完全自己満足なテキストblogです。更新不定期。
はじめに!を読んでください。

お知らせ

2017-01-31 07:46:47 | 日記





こんにちは、ユキちゃん。です。


お知らせです。
前blogではお伝えしましたが「妄想と戯言」は今日限りで閉鎖します。向こうで上げていたお話や小ネタは移動済みですが、ツイッターネタまとめや語っているだけの記事はそのまま消してしまうので、もし見たい!と言ってくれる方がいましたら今日中にどうぞ。

ほとんど更新しない気分次第なblogにも関わらず、それでも「妄想と戯言」に付き合って下さった方々、拍手やコメントして下さった方々、本当にありがとうございました。

相変わらずの不定期更新になりますが、引き続き「妄想と戯言2」をよろしくお願いします。






ユキちゃん。

曇天 (消耗品軍団)

2017-01-20 09:09:40 | 映画
相変わらずのガン→←ヤン。
ヤンデレ気味ガンナーと流されそうになるヤンの話。











その日の俺は、やっとの思いで手に入れた(バーニーからもぎ取った)久しぶりの長期休暇を、故郷で過ごしていた。中国の富豪を無事に送り届けた後、なかなか帰ってくる機会もないからと、昔馴染んだダウンタウンで羽を伸ばし、その居心地の良さを噛み締めていた。

ほんの数時間前までは当たり前だった銃撃音も、染み着いた虚勢も、親しみのある罵倒も、嗅ぎ慣れた硝煙までも、まるで全てが夢だったかのように、今は穏やかな気分でバカンスを満喫している。宿泊するホテルだって、値段の割には行き届いたサービスと従業員の程よい無愛想さに満足しているし、何よりホテルに着いてから命の危機というやつに未だ遭遇していない。実に有意義だ。
普段は守銭奴と揶揄される性格だが、この時ばかりは財布のヒモも弛んでしまっていた。鴉のタトゥーを背負うあの仲間たちの事だ。今の俺の姿に驚愕する事は間違い無いだろう。


部屋に付属された丸テーブルには、愛用の黒いキャップと一丁の銃がおなざりに放られている。用心に越したことはない。
ふと、テレビを眺めていた視線を外に向けてみる。灰色に覆われた空に反射したネオンが鈍く光っている。まだ昼前だというのに、辺りは薄暗く、一雨降りそうだと云わんばかりの曇り空に覆われていた。
腰掛けていた黒い革張りのソファーから、窓際に広がるベッドに移動し横たわる。その曇天色した景色をぼうっと眺めながら、安物だがそのチープな味が気に入っている酒を一気に煽った。酔っているのか、テレビの音がやけに遠くで響いているようだ。

それは、仲間と別れてまだ数日ほどしか経っていない。そんな、やけに濃い色をした曇り空が印象的な、そんな日の事だった。





ピピピッという機械的な音が、アルコールで麻痺した脳内をじんわりと刺激しては、過ぎて行く。電話が鳴っていると頭で理解しても、微睡みは煩わしく、俺の睡眠欲を駆り立てる。
数回、寝返りを打ってみた。音はまだ止まない。そういえば、留守電の設定はどうなっていたか。もう一度だけ寝返りを打つ。

ピピピッピピピッピピピッ…ピピピッピピピッピピピッ…

「……ッ、」

ぼんやりと、だが確実に覚醒した脳内で、鳴り止まないその音に大きな舌打ちを溢した。起き上がり、ゆっくりと数回、瞬きを繰り返す。
部屋の固定電話ではない。仕事用の携帯は電源を切っている。ならば、と壁に掛けてあるジャケットを振り返った。音は左ポケットからその存在を示している。
暫くそれを見つめて、やはり鳴り止まない機械音が疎ましくなった俺は少し乱暴に、そこからプライベート用の携帯電話を取り出した。画面に表示された番号に見覚えはない。そもそも、この携帯の番号を知ってる人間自体、限られているのだ。思い浮かぶ程度に数人の知人や、先日別れたばかりの仲間たちを思い浮かべた。
奴らの中でこの番号を知っているのはバーニーだけだ。何かしらトラブルがあったのかもしれない。助けが必要、なのかもしれない。一瞬嫌な間が空いた。悪寒がする、と言ったほうが正しいのかもしれない。それでもやはり煩く鳴るそれを無視するという選択は、俺にはもう無かったのだ。

少し冷えた、電子機器特有の感触が耳元を掠めた。窓から覗いていたのは相変わらず濃い灰色に包まれた空で、今が夜なのか朝なのか検討もつかない。
はい、と小さく呟いてから一瞬の間の後、この携帯からは決して聞こえるはずのない、それでも嫌というほど聞き慣れた深みのある低音が、アルコールで痺れた脳を刺激しやがる。

「…俺だ、ヤン」

電波を介しているからか、その声は少し掠れているように感じる。名乗りもしないその男はもう一度、俺だ、と小さく続けた。

「…ああ、聞こえてる」
「そうか。俺の事なんて忘れちまったのかと思ったぜ」
「バカを言え。別れて数日しか絶ってない」
「冗談じゃねーか。ツンケンするなよ、ヤン」
「別に怒ってない」

数日ぶりの会話に違和感は無かった。喧嘩するほど、とバーニーたちはからかうだろうが、俺は、この男との関係を‘言葉’なんかで言い表す事は決してしない。

「何の用だ、ガンナー」

思った以上に無愛想な声色だったかもしれない。だが、それも寝起きのせいだと言い訳する。わざわざこの男が、俺に電話を寄越したのだ。そんな小さな事を気にしするような相手でもない。

ああ、ああ、とガンナーが繰り返す。何かを言い淀むその空気が気持ち悪く、少し焦らすようにその名を呼んだ。

「ガンナー」
「…何だよ」
「それはこっちの台詞だ。用がないなら切るぞ。電話代が勿体無い」
「まあ、待てよ、ヤン」
「十分待ったろ」
「ああ、そうか…いや、そうじゃなくて……なぁ、ヤン」
「何だ」
「...ダニーがな、」
「ああ」
「......死んじまった」

さっきまでは掠れて聞こえていたと思った奴の声が、やけにはっきりと脳ミソの中に響き渡った。不安と恐怖と、そしてすがるような懇願が混じった声だった。

「...殺されたのか?」
「ああ...あの野郎、俺がぶっ殺してやる」
「...そうだな」
「なあ、ヤン。アイツ、良いヤツだったよな、ダニー」
「ああ...」
「俺よか、ずっと、ずっと良いヤツだったんだよ...」

そりゃそうだ。当たり前の事を言うな。ダニーとお前を比べるなんて検討違いにもなりゃしない!なんていつもの軽口は、なかなか言葉として出てこない。
それが、明らかにいつもの様子じゃないコイツのせいなのか。それとも、数日前、あの飛行機の中で笑い合った仲間たちの中で、まだ幼さと遠慮が混ざりあったようなその笑顔がちらつくせいなのか。
受話器越しに漏れるため息と、ほんの僅かに鼻を啜るヤツの哀しみが、嫌でも伝わってくる。俺達は、いつだって解りすぎてしまうのだ。
ガンナーは彼の事を自分より良いヤツだと言った。そして、その男が死んだ。こいつの魂胆が分かってしまう己が、一番嫌いだ。

「ヤン。お前は、俺と同じだよな?」

泣いているかのような声色が煩わしい。図体ばかりの木偶の坊が。俺はお前のママじゃないんだ、ガンナー。俺とおまえは。

「なあ、ヤン...!」
「...ああ、同じだ、ガンナー。俺も、お前も。生きていようが、死んでいようが、何処に居たって、何をしていたって......俺は、おまえが...ッ、」

突然、窓を叩いた痛々しい程の雨音と、チカリと網膜に射し込んだ雷が俺達の間に割り込んできたのは、その、決して口には出すまいと決めていた言葉が溢れ出そうになった瞬間の事だった。呑みすぎたのか何なのか、認めたくはないが、やけに心臓が痛む。

「...なあ、ヤン」
「雨だ。雷も鳴ってる」
「...こっちは晴れてるぜ。晴天だ」
「そうか」
「なあ、さっき、何を言いかけた?」
「甘えるなよガンナー」
「......」
「バーニーに伝えてくれ。助けが必要なら呼べ。金は請求するが、俺もおまえたちと同じ気持ちだってな」
「...伝えとく」

我に返るとまではいかないが、己の失態とヤツの考えの甘さに反吐が出る。俺達は、仲間の死でさえも言い訳にしようとしたんだ。くそったれめ。

未だ何かを言いたげなガンナーには聞こえる程度の悪態をいくつか吐いて、そしてダニーを埋葬した場所を聞き出したところで一方的に通話を切ってやった。直後、無機質な電子音だけが響く。用の無くなった携帯をソファーへ投げ、再びベッドへ横たわる。
空を見上げるも、先ほどまでの灰色はすっかりと闇に溶けてしまったらしく、雨と雷と深い黒に覆われていた。


ダニー、戻ったら一番にお前の墓へ上手い酒でも持っていく。約束だ。








おわり



わたしの中のガンナーの精神年齢すごく低いですよ、な話になってるような気がする。
ガンナーはシリーズ通して拗らせてるけど、ヤンは
エクスペ2が一番拗らせてるよね。

お粗末でした!

好きな色。(消耗品軍団)

2017-01-16 08:46:41 | 映画
すきないろ。のガンナー視点ということで。
ガン→←ヤン風味。












自分でも驚くほど真剣に、愛用にしているナイフの手入れに勤しんでいた。暇だってのもあったが何となく、今日は仲間たちの間に流れる空気が穏やかさに包まれていたからってのが妥当な理由だろう。この雰囲気は嫌いじゃねぇ。壊す事がどんなに己を苦しめるか、なんてのはついこの前に学んだばかりだ。
幸いにも、いつもの喧嘩相手は少し離れた場所でシーザーとの雑談を楽しんでいるようにも見えて、だったらバーニーたちが戻るまでの、その束の間ってやつを味わおうかと手入れに集中していた。そんな矢先だった。

「好きな色は?」

何だその質問と思わずナイフから視線だけを上げれば、古ぼけた黒皮のソファーに座る小さい男が難しい顔でシーザーに向き合って話している。対するシーザーの顔は分からなかったが、興味も無さそうに首は下を向いていた。それを解った上でかは知らんが、小さい男ことヤンはどうでも良さげに体をソファーに預け、そうだな…と如何にもあざとく「考えるフリ」をしている。

どうもあの二人は話題が尽きかけているらしい。俺は赤が好きだと説明するシーザーに対してヤンの表情は幾分、呆れ気味だ。案外顔に出やすいよなと、そこでようやく視線をナイフに戻す。
ヤンは何と返すのか。普段、奴が身に付けている物なんかを思い浮かべながら、じっとりと聞き耳を立ててやった。

「俺は…金、だな」

なかなか即答しなかったヤンの答に、お前らしいな、と素直に思った。金にがめつい奴のイメージぴったりじゃないか、と。シーザーの笑い声につられ、俺の口角も上がったように思う。
そこで二人の会話は止まった。代わりに聞こえてきたのはシーザーの鼻歌と、その手に持った奴の「恋人」だとかいう武器を整備する機械的な雑音だ。もう一度視線だけを上げて見れば、ヤンは携帯電話を片手にソファーへふんぞり返っている。暇になったんだな、ヤン。

再び視線を落とす。
俺の座る位置は丁度、傾きかけた太陽の日と影が交差している場所だ。じりじりと影に侵食されていく自身の体にぞわりとした感覚が起きて身震いさえした。俺の好きな色は、この黒だ。


昔から黒色が好きだったわけじゃない。もっと明るい色を好んでいたようにも思うし、歳をとったから落ち着いた色が良く見えているだけなのかもしれない。しかも少し前…ドラッグに溺れている頃は、全てを奪う夜の暗闇が怖くて仕方なかった。その闇が来ることに人知れず怯え、何かに縋る思いで日々を過ごしていたってのに。

そういや、アイツにしこたま殴られてからだ。夜が怖く無くなったのは。

普段から真っ黒い戦闘スタイルを崩すことなく、唯一見える顔の肌色でさえ帽子の影に隠してしまう。まるで夜のように静かで、それでいて不気味な強さを持っている。それが、イン・ヤンという男だ。あの日。バーニーに裏切られたと先走り、俺も奴らを裏切った。殺そうともしていた。バーニーに打たれた瞬間は死を悟りもしたが、結局のところ俺も、仲間たちも生きていた。
目を覚ました時一番に思い浮かんだのはバーニーの顔で、これで奴らが死んじまったらと病院のベッドの上で声をあげて泣いた。そして、安定剤だか何だかの薬を打たれた直後、思い浮かんだのは。珍しく敵意を剥き出しにして俺を殴りつける、ヤンの顔だった。

あの時の拳は、どんな鋭利な刃物で抉られるよりも俺の心臓をズタボロに引き裂いてくれた。だがら俺は、今を生きていられるんだとも思う。そう考えると、俺が黒を好むようになったのも頷けるってもんだ。

俺は、奴の持つ「黒色」が好きなんだ。


研ぎ澄まされたナイフを掲げてみると、夕日に反射したその眩さに自然と眉が寄った。良いデキだが、いまひとつ、もう少し。強欲な俺はもっともっと切れ味を出そうとナイフを握り直す。そして再び研ぎ石を当てがった、その時だった。

「……ッ、?」

ピリッとした、針で刺されたような視線を感じ無意識のうちに顔が上がる。辺りを見渡すも、敵はおろか相変わらずの緩い雰囲気が漂っていた。シーザーは変わらず鼻歌混じりに武器を弄っているし、後ろで読書をするトールは顔を上げた気配さえしない。ヤンだって変わらず携帯に集中していて、気のせいかと視線を落とすも、納得がいかなかった。

確かに感じたんだよ。だが何十年とこの世界に浸ってきた中で、それはあまり向けられた事のないような、そんな視線だった。殺意、ではない。うまい例えも見つからず、とりあえず目の前のナイフに集中していると、まただ。また、誰かが見てる。この俺を。よく分からない感情の籠った目で、見てやがるんだ。

この時の俺は、きっと自分の中に芽生えた苛立ちに気づいていた。もしかすると、曖昧な視線を送る張本人の正体にも気づいてたんじゃねーかな。その確証が無かっただけで、心の何処かでは苛立ち、そして哀しんでいた。実におまえらしいよ、と。

「───ヤン、ちょっといいか」

シーザーの鼻歌が響いていたドッグ内に、その声はやんわりと馴染んでいく。バーニーだ。隣にはクリスマスの野郎もいる。そして、ふと途切れた視線に気づき、ハッとして名前を呼ばれた男を睨みつけた。ヤンはバーニーたちに呼ばれ、立ち上がろうとしている。待て、逃げるんじゃねぇ。待て、ヤン!

心で叫ぶ。逃げるなというその言葉は、まるで己に言い聞かせているようだ。次の瞬間、バチリッと導火線から火花が散ったような、そんな感覚がした。

「ッ、!」

目が合った。立ち上がろうとしていたヤンが動きを止め俺を見ている。いや、正確には、俺に睨まれて固まっている、だ。普段ポーカーフェイスを気取った幼い顔が目に見えて動揺している。好きだと思った黒い瞳は揺れ、完全に不意を突かれたんだろう唖然とただ、固まっていた。
見つめ合う、なんてロマンチックとは程遠いこの数秒間、俺には…俺たちの間には、何かイケナイ事をしでかしたような空気が流れている。まるで呼吸する事を忘れちまったような、そんな感覚だ。

引き込まれる黒色が、目の前で固まっている。どうする、何か言うか。いつものように軽口でも叩き合って仲間たちのいうトムとジェリーを演じて見せようか。

これは駆け引きなんかじゃなかった。ただ俺は、黒が好きだ。夜よりも深く、依然として俺の目前にいる、奴の纏う黒色が好きなんだ。


「どうしたヤン、はやく来いよ!」

響いたクリスマスの声にヤンがバーニーたちを振り返った。逸れちまった視線に名残惜しさを感じもしたが、これ以上は必要ない。おそらく奴は、もう分かってる。

バーニーたちとドッグを後にした小さな背中を見送りながら、殆ど影に侵食された辺りを見回した。直に夕日が落ち、俺が心から待ち望んだ夜が来るだろう。






おわり。

独占欲強めなガンナー。元々あった殺意が違う感情になるのは簡単だったんじゃないかなーと。ヤンはツンデレだから全力で隠すけどな(笑)


お粗末様でした!

すきないろ。 (消耗品軍団)

2017-01-13 15:02:57 | 映画
エクスペにはまってます。ガン→←ヤン風味。








「好きな色は?」

特に意味もなくメンバーが集まったドッグの片隅に、シーザーの声はやけに静かに響いた。暇潰し程度に他愛のない、当たり障りのない会話を繰り広げている最中の、これたま素朴な疑問。その質問を投げ掛けた男は、だから、と続きを繰り返す。

「好きな色だよ。聞こえたろ?」
「ああ。聞こえた」
「俺は赤だな!燃え盛る情熱…イカすだろ?おまえは?」
「…そうだな、」

赤が好きだと言った彼の瞳は、俺の答えに興味があるわけでも無さそうに手元の武器を眺めている。手入れを止めるつもりもないらしい。それもそうか、と少しだけ眉間に力が入った。仲間とはいえ「好きな色」なんて質問はナンセンスすぎる。ましてや、たまたま近くに居たから雑談していただけの相手だ。だらだらと続いていた暇潰しの延長線のような会話の終着点が「それ」だなんて。

「なんだよ、まさか無いってんじゃないだろ?」

余程、俺との会話に堪えているのか、シーザーは欠伸をひとつ溢してからそう続けた。少し大げさに驚いた表情を作られて、流石に即答できないのはおかしいかと首を横に振って答える。

「何色だ?」
「…強いて言えば、金かな」
「アッハハ!そいつはおまえらしい!」
「ああ、よく言われる」

おどけたような仕草で返す。その返答に満足したのか一通り笑った後、俺と会話をする気が完全に失せたらしいシーザーは鼻歌混じりに愛しの‘彼女’たちの手入れへと専念し出した。それを横目に、腰掛けていたソファーへ更に体重をかける。
実につまらん。ギシリ、とスプリングが軋み深い皺を作った。さてまた暇になったと、既に充電の少なくなった携帯電話を手に取る。もちろんだが、特に何かを調べるでも、誰かと連絡を取りたい訳でもない。ふと、携帯を弄るフリをしながら辺りを見渡した。
夕方に差し掛かっているせいか外から影が伸び、ドッグ内の半分が影に支配されている。
バラけた場所で各々、好きな事をして時間を潰す仲間たち。愛車をメンテナンスする者や、談笑混じりに自分の武勇伝を語る者。その中で一際目を惹く金色が、薄暗いドッグ内でもキラキラと輝いているのが分かる。

ガンナー・ヤンセンだ。

気配を殺し目を細めて、普段は気にも留めないはずのその男を凝視してみた。
俺の座るソファーから少し離れた古い椅子に腰掛け、愛用らしい大振りのナイフを何度も何度も研いでいる。ゆっくりと、しかし力強く。伏せられた瞼にかかる影は深い。いまいち表情までは分からなかったが、その影が落ちる睫毛の金でさえも輝いているように見えるのは何故だろうか。

不意にガンナーの視線が上がる。見ていた事がバレたかと少し警戒するが、彼方から見れば俺は携帯を弄っているだけのように見えているはずだ。
落ち着いて、気づかれないようにゆっくりと視線を手元の携帯へ落とした。どうやら上手く誤魔化せたようで、一呼吸も待たないうちに彼の視線は此方から外れ、首を傾げながらも再びナイフの手入れに勤しみ始めている。
誰も気にかけていないような、そんな雰囲気を纏い、人知れず溜め息を吐いた。
ガンナーにだけは、此方が不利になる状況を作りたくないのだ。犬猿の仲であった、彼にだけは。


生まれてこの方、好きな色は?そう問われる度に、即答できた試しがなかった。特に何かに執着するような性格でもなく、強いて言えば戦闘時に身につけるものは黒一色を好んでいる、その程度だ。しかしそれは「性能」を重視した上での選択であって、普段から好きで身に付けているかと問われれば、答えは否だった。現に今だって、白いインナーに紺のジャケットを羽織っている。派手なものは好まないが、拘りがある程でもない。

だから、即答出来ないでいた。この手の「当たり障りのない質問」は、嘘にまみれた世界で生きていくために俺が張った防衛戦のような役割を果たしているからだ。そんな事にまで嘘を重ねたくはない。実に頑固で面倒な性格という事は自覚しているが、生憎この下らない本心をさらけ出すような親しい人間も少ない。先ほどのシーザーの問に「金」と答えた理由も単純だった。仲間内での俺のイメージに沿った、ただそれだけの事。深い意味が有るわけもなく、あの男の金色に惹かれる理由としても、似たようなものなのだ。

暫く携帯を見つめていた視線を、もう一度ガンナーに向けた。やはり真剣にナイフの手入れをしていて、これは好都合だとばかりに再びその金色を眺める。綺麗だとか、透けるように美しいだとか、そんな甘ったるい感情が湧いた訳じゃない。ただ純粋に、不思議なほど輝いて見える。年のせいで霞み始めているはずなのに、ただ、キラキラと。
あれを眺めていれば、多少なりともこの守銭奴と言われる性格がマシになるような気さえ起きてきていた。もしも、見ていた事が誰かにバレてしまった時の言い訳にでもしようか。きっと皆は、現金なやつだと笑ってくれるだろう。

「ヤン、ちょっといいか」

そこまで考えて、突然呼ばれた己の名前に顔を上げた。バーニーと、そしてその隣にはクリスマスもいる。

「ああ、何だ?」
「仕事のことでちょっと…来てくれ」

いつもの相談事だとクリスマスが続ける。仕事を請け負うか否かの判断は大抵、俺を入れたこの三人で最終的に判断する事が多い。わかった、と素直に携帯を仕舞い込んだ、その瞬間だった。

「ッ、」

バチリッ。火花でも舞ったんじゃないかと思うような眩さに一瞬、ソファーから立ち上がろうとしていた動きが止まる。俺を射殺さんばかりの眼力で此方を見ていたのは、先程まで輝いていたはずの、影のせいか少し淀んだ金髪を垂らすガンナーだった。その瞳は間違いなく俺を捕らえている。

見ていた事がバレたか。いや、それならもっと早く絡みにくるはずだ。何故、俺を見ている。

コバルトブルーを想わせる澄んだ瞳に、少し前までは当然のように含まれていた殺意は感じられない。ただ力強く、此方を見ているだけだった。俺と目が合おうとも其れが外れる事は無い。

「どうしたヤン、早く来いよ!」

先にドッグの入口へ向かったクリスマスが叫ぶ。ハッとしてバーニーを見れば、ジェスチャーだけで、どうした?と繰り返していた。それにはお得意のおどけた顔で返して初めて、数秒の間ガンナーと見つめ合っていたと自覚し、我に返る。

「……何でもない。いま行くさ」

ポーカーフェイスは得意だ。どんな状況でも己を偽れる自身はある。だが、自分は今どんな顔で、どんな瞳で奴を見ていた?何かイケナイ事をしでかしたような感覚が足元から這い上がってくる。何だ、これは。

ガンナーから視線を外した俺は、そそくさと無表情を作り、バーニーたちを追いかけた。内心は全てを見透かされたように浮き足立っていたが、誤魔化す事に精一杯だ。立ち上がったソファーから鳴ったスプリングの軋みでさえも、今は耳に入らない。
唯一、シーザーの鼻歌と自分の心臓の音だけが一際大きく、まるで耳鳴りのように響いてる。あの質問から始まった先ほどまでの光景が、脳内をグルグルと掻き回していた。



───すきないろは?



バーニーたちと仕事の話をしている最中でさえ、あの霞んだ金髪と澄んだコバルトブルーが頭から離れない。どうやらこれからは、この質問に言葉を濁らせる必要も無さそうだ。





おわり。



エクスペ1~2の間に、どちらかともなく意識し始めるガンヤンがあってもいいじゃない。殺意→愛情への変化を認めたくないヤンとかだったら萌える。

お粗末様でした!

その心、濁すも救うもアナタ次第(魯粛+周瑜)

2017-01-12 20:33:47 | 無双シリーズ

さくまさんリクエストの魯粛殿と周瑜様のお話。短いよ!









「────と、なる訳だ。良いか、呂蒙」
「はっ。この呂 子明、周瑜殿のお言葉、しかと胸に刻みました」

とりわけ珍しくもない光景ではあった。
上の者が下の者へ教え、そして導く。かつては己でさえ、その道のりを歩いてきたというのだから問題などあってはならない。
そう、例えばそれが未来へ繋ぐための襷のような物だとして。その襷を俺は彼から受け取り、今度は俺が、その役目を成さねばならないというのに。

己の中の小さな感情が疼き始めていると確信を持った頃、難しい顔で書簡を睨み付けていた弟子と、そして、それを懐かしむように瞳を細めていた、俺が師として仰いだ端正な横顔が、不意にこちらへと向けられた。気付くが早いか、まずは弟子である呂蒙が俺に頭を下げる。それには頷いてだけ返し、呂蒙の隣で微笑む男へと向き直り手を合わせて挨拶を済ませた。

「魯粛殿!」
「ああ。いつになく勉強熱心だな、呂蒙よ。周瑜殿も、こやつに物事を学ばせるにはさぞ骨が折れた事でしょう」
「そ、それは…否定は出来ませんが…」
「フフ、そうでもないさ魯粛。才能とは物分かりの良さではなく、その探究心にある。キミは良き弟子を持ったのだな」

さらり、と溶けるように美しい髪が揺れる。その隙間から除く顔が、一層優しく微笑んだ。あの周瑜殿に誉められたことに気を良くしたのか、普段はしかめ面ばかり浮かべる呂蒙でさえも、つられて笑顔になっている。よくもまあ簡単に言えたものだ。「良き弟子」などと。

芽生えた濁りが渦巻きを深くし、目の前に広がる「当たり前の風景」にさえ疎ましい色が掛かってしまう。

未熟な弟子の顔つきが締まることはない。微笑む美しい横顔が此方に向くことも然り、だ。未だに周瑜殿への質問が尽きぬのであろう、書簡を広げる男の名を呼ぶ。なんでしょう!と顔を輝かせたのも束の間。

「日々精進せよ、お前はまだ甘い」

ハッといつものしかめ面に戻った呂蒙は、短い返事の後、鍛練があるからとその場を急いで去ってしまった。




「…浮かない顔だな?」

呂蒙を見送った直後、軍議へ向かう途中の廊下に響いたその言葉は、悪戯に俺の動揺を誘いだした。いつもならば軽口のひとつでも返すところだが。

「はて、俺の事ですかな?」
「フフ。キミも存外、イヤらしい男に育ったな」
「…返す言葉もありませんな」
「ははは!今のは褒めたのだ、魯粛よ。軍師たるもの、その性格は称えられるべきだ」

そう思うだろう、と言葉にはしなくとも、数歩先を行く偉大な背中から全てが伝わってきてしまう。おそらく本心なのだろうが。今の俺には何を言われようとも、全てが影を引いてしまうのだ。

「何を意地悪することがあるんだ」
「意地悪、でしたか?」
「褒めて伸ばしてやる事は基本だろう」
「ほう…それは可笑しいですな」
「…と、言うと?」
「周瑜殿の仰る事が本当ならば、どうにも俺は褒めて伸ばされた記憶だけが抜け落ちてしまったようだ」

少し大袈裟に、天を仰ぐような仕草で返せば、振り返った周瑜殿が一瞬だけ呆けた顔で此方を直視した。しかし、すぐ俺に向き直ったったかと思えば、次はくつくつと、堪えるでもなく豪快に肩を揺らしている。

「そうか、魯粛。そう言うことか。どうにも私は勘違いをしていたらしい!」
「……」
「ははは、安心するといい!」

宥めるように、その優しげに細められた瞳に見上げられる。気づかれたとて、今更な感情ではあるが…どこか居心地の悪さと、呂蒙に対する幾らかばかりの罪悪感とに自然と肩を竦めていた俺を、やはり笑い飛ばして彼は続けた。

「私は弟子一筋だ。その可愛い弟子の、次の後継者を甘やかしてしまう気持ちを許してくれ、魯粛」

言われ、流石に言葉に詰まる。今度は俺が呆けた顔をしてしまっているだろうが、幸いにも薄暗い廊下では背丈のあるほうが表情は見えにくい。先ほどまで心を支配していた濁りは微塵も見当たらず、案外単純な己に呆れ返る暇もなく。
さあ行くぞ、と響いた優しい声に、やはり敵わないと今度こそ大袈裟に、天を仰いだのだった。





おわり!

誰だって、大好きな尊敬する師匠を取られたくはないはず、と思い書きました。どちらかというとブロマンス的なイメージの二人。

リクエストありがとうございました!


お粗末さまでした!