川柳
去るバイク老いはすべてを剥奪す
24年乗って来たバイクを廃車するため引き取って頂いた。バイク屋さんが引き取りに来てくださって、「もう、新しいのに乗る気はありませんか」と問われて、「ありません」と即答したけれど少し・・心が揺らいだ。
「免許を更新したばかりなんですよ。誰か免許買ってくれませんか・・」
なんて冗談を言いながらも・・、本当に後期高齢者の更新はとても面倒だったのだ。
「この色が欲しくて、わざわざ取り寄せて貰ったのでしたね。」
「ああ、そうでした。だいぶ色も褪せたね」
「愚痴を言ってもしょうがないのですけれど・・」
「20年以上も乗ったのなら・・」
「最後までとても良く走ったのですよ。」
「修理したら、まだ乗れますよ」
でも、それにはもう決心したことなのだ。乗らない間に気づいたことは、
「怪我をして、みんなに迷惑を掛けるリスクを冒してまで、必要ではない」だった。
私は物には執着無いけれど、愛用した物には愛着を感じる方であり、主人のトラックを手放す時も、テレビを取り替える時も、どちらも長く使っていたので申し訳なく思えて悲しかった。
だから、動かなくなったバイクをそのまま置いていたけれど、やっと決心してバイク屋さんに電話をしてみたのだった。
私の愚痴を聞きながらも、手際よく軽トラックに積み込んだバイク屋さんが去って行く時、バイクは荷台から私の方を見ていた。「母ちゃんバイバイ」と言っているようだった。
いつも「私よりも先に逝くな」と話しかけていたバイクを、ちょっと胸を詰まらせて送った。