新古今和歌集の部屋

歌論 正徹物語 上 81、82



81
制のこと葉といひて
うつるもくもる(春歌上 57 源具親)
我のみ知りて(恋歌一 1035 式子内親王)
などいひ出だしたる一句名哥を、我物がほにかくしてぬすむを昔よりいましめ侍る也。衣をぬすみて小袖にして着たる樣の事とて、隠してぬすむをつよくいましむる也。本哥を取るには、いかにもその哥を取りたりと見せて取る事也。又只今かたをならぶる人ならずとも、其人の無き後成りとも百餘年の間の人の哥をば取りて讀まぬ事也。

82
幽玄躰の事まさしくその位に乗り居て納得すべき事にや。人の多く幽玄なる事よといふを聞けば、たゞ餘情の躰にて、更に幽玄には侍らず。或ひは物哀躰などを幽玄と申す也。餘情の躰と幽玄躰とは遙か別のもの也。皆一に心得たる也。定家卿は、「皆貫之と云ひし哥人も物つよき躰をば讀み侍りしが、幽玄抜郡の躰をば讀まず」と書き給へり。物哀躰は哥人のたしなむ所也。
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