新古今和歌集の部屋

歌論 正徹物語 上 58




俊成卿老後に成りて、さても明暮哥をのみ讀みゐて、更に當來の勤めなし。かうては後生いかならんと歎きて、住吉の御社に十七日籠りて此事を嘆きて、
もし哥は徒ら事ならば今よりこの道をさし置きて一向に後生の勤めをすべし
と祈念有りしが、七日に滿づる夜、夢中に明神現じ給ひて、
和歌佛道全二無
と示し給ひしかば、さては此道のほかに、佛道を求むべからずとて、彌此道を重き事にし給ひし也。定家も住吉に九月十三夜が七日に滿ずる日にあたる樣に、參籠してこの事を歎き申されしかば、九月十三夜明神うつゝに現じ給ひ、
汝月明也
と示し給ひしより、さては此道かう也と思ひ給ひけり。此事などを書きのせたるを、明月記と號する也。
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