新古今和歌集の部屋

瀟湘八景

瀟湘八景  玉澗作


 瀟湘夜雨

古渡沙平漲水痕 古渡沙(いさご)平らかにして水痕に漲る。
一篷寒雨滴黄昏 一篷の寒雨黄昏に滴る
蘭枯惠死無尋処 蘭枯れ惠(めぼうき)死れて尋ぬるに処無し
短些難招楚客魂 短些招き難し楚客の魂
※惠はくさかんむりが付く。


 洞庭秋月

四面平湖月滿山 四面の平湖月山に満つ
一阿螺髻鏡中看 一阿の螺髻鏡中に看る
岳陽樓上聴長笛 岳陽樓の上長笛を聴く
訴盡崎嶇行路難 崎嶇行路の難きを訴え尽くさむ


 煙寺晩鐘

鐘送斜陽出暮山 鐘斜陽を送りて暮山を出づ
遥知煙寺隔前湾 遥かに知る煙寺前湾を隔つるを
山翁莫怪歸來晩 山翁怪しむること莫かれ帰り来ること晩きを
欲待峯頭月上還 峯頭の月の上るを待ちて還らむと欲す

 遠浦歸帆

無辺刹境入毫端 無辺の刹境毫端に入る
帆落秋江隠暮嵐 帆秋江に落ちて暮嵐に隠る
殘照未収漁火動 残照未だ収まざるに漁火動く
老翁閑自説江南 老翁閑自に江南を説く


 山市晴嵐

雨拖雲脚斂長沙 雨雲脚をひきて長沙を斂む
隠々殘虹帶晩霞 隠々たる殘虹晩霞を帯ぶ
最好市橋官柳外 最も好し市橋官柳の外
酒旗揺曳客思家 酒旗揺曳す客思の家


 漁村夕照

一江晴日滿沙汀 一江の晴日沙汀に満つ
売盡魚來酒半醒 魚を売り尽くし来たりて酒半ば醒む
蓑笠未乾榔板静 蓑笠未だ乾かず榔板静かなり
一聲横笛數峯青 一声の横笛数峯青し


 江天暮雪

萬里江天萬里心 万里の江天万里の心
飄々花絮灑平林 飄々花絮平林に灑ぐ
橋横路斷馬蹄滑 橋横たわり路断えて馬蹄滑らかなり
更説藍關轉不禁 更に説く藍関転た禁
へざるを


 平沙落雁

点々随群舊処棲 点々群に随ひて旧処に棲む
蓼花蘆葉暗長堤 蓼花蘆葉長堤暗し
天寒水冷難成宿 天寒く水冷ややかにして宿を成し難し
猶自依々怨別離 猶自依々として別離を怨む

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