じゅうのblog

こちらでボチボチ更新していく予定です。

『街の灯』 北村薫

2024年06月09日 20時40分18秒 | ■読書
北村薫の連作ミステリ作品『街の灯』を読みました。
北村薫の作品は先月に読んだ『玻璃の天』以来ですね。

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昭和七年、〈時代〉という馬が駆け過ぎる

昭和七年、士族出身の上流家庭・花村家にやってきた女性運転手別宮(べっく)みつ子。
令嬢の英子はサッカレーの『虚栄の市』のヒロインにちなみ、彼女をベッキーさんと呼ぶ。
新聞に載った変死事件の謎を解く「虚栄の市」、英子の兄を悩ませる暗号の謎「銀座八丁」、映写会上映中の同席者の死を推理する「街の灯」の三篇を収録。
解説・貫井徳郎
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2002年(平成14年)に文藝春秋が発行する隔月刊の電子小説誌『別冊文藝春秋』に連載され、2003年(平成15年)に刊行された作品……1933年(昭和8年)の帝都・東京を舞台に、上流家庭の花村家の長女・英子とその運転手・ベッキーさんが活躍するベッキーさんシリーズの第1作です。

 ■虚栄の市
 ■銀座八丁
 ■街の灯
 ■解説 貫井徳郎

80周年記念出版、令嬢と女性運転手が活躍する待望の新シリーズ……舞台は昭和初期、上流家庭の花村家に女性運転手がやってくる。令嬢の英子は彼女に興味を持ち、ひそかに<ベッキーさん>と呼ぶが、、、

昭和七年、上流家庭の花村家に若い女性運転手・別宮みつ子がやってきます……花村家の令嬢である〈わたし〉はサッカレーの『虚栄の市』の女主人公にちなんで、彼女を〈ベッキーさん〉と呼び、興味を持つのですが……。

〈ベッキーさん〉を知ったことで、〈わたし〉は今まで風景のように通り過ぎていた物事に「どうしてそうなるのだろう?」という疑問を持つようになっていきます……女子学習院の令嬢たちのひそやかな駆け引き、乱歩ばりの奇妙な事件、暗号解読、北村ワールドの真骨頂をお楽しみください。

上流家庭の花村家の長女で学習院に通い何不自由ない生活を送る令嬢・花村英子によって語られる昭和初期の帝都という時代背景を描いた緻密でリアリティのある描写、そして、英子の運転手で才色兼備で武道にも秀でたスーパーウーマン別宮みつ子(ベッキーさん)の活躍が印象的なシリーズです……先に第2作を読んじゃったんですが、第1作を読んで英子とベッキーさんのことが良く理解できました、、、

士族の出である花村家に新しく雇われることになった運転手は何と女性だった! 花村家の長女・英子は進歩的な父の決定を大いに喜び、サッカレーの「虚栄の市」に因んで彼女にベッキーさんとあだ名を付ける……ベッキーさんの登場作で、早稲田の大学生・権田が自分で掘ったと思しき穴で殺鼠剤が混入していたらしい酒を飲んで死んでおり、その数日前、権田と同じ下宿で暮らしていた男・尾崎が下宿近くで水死体で発見されたという2つの事件の原因を、尾崎の妻を巡るトラブルだと推測した英子が、権田が愛読していたという江戸川乱歩の短編集をベッキーさんから渡され事件の真相に気づく『虚栄の市』、

英子たちの間では、同じ本の何ページ・何行目・何文字目と3つの数字で伝えたいことを暗号化し手紙をやり取りするのが流行っており、それを聞いた英子の兄・雅吉が、銀座を歩きながら友人の大町に同じ話をすると、興味を持った大町は自分もやると言い出し、雅吉に暗号を解いて指定した日時に指定した場所に来るように伝える……同じものではつまらないと考えた大町から、数日おきに雅吉に暗号となる品物(シャツ、眼鏡、ボタン)が届き、英子と雅吉はチンプンカンプンだったが、英子はベッキーさんのある言葉からヒントを得る『銀座八丁』、

夏休みに避暑のために軽井沢の別荘を訪れていた英子は新興財閥の息子・瓜生豹太が主催する映写会に参加することに……のどかな牧場の風景が流れる幕が一変、大群の蛇の画像が映り、銅鑼が鳴り響いた際、部屋の隅で鑑賞していた豹太の妹の家庭教師の女性が座ったまま息絶えており、映像に驚いて心臓発作を起こしたのだと判断されるが、後になって英子は一連の出来事に違和感を覚える『街の灯』、

どの作品も当時の上流社会の生活や風俗が克明に描かれており、雰囲気がムッチャ好きで愉しめました……第3作の『鷺と雪』も読んでみたくなりましたね。
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『古書店アゼリアの死体』 若竹七海

2024年06月08日 20時03分07秒 | ■読書
若竹七海の長篇ミステリ作品『古書店アゼリアの死体』を読みました。
ここのところ、若竹七海の作品が続いています。

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勤め先は倒産、泊まったホテルは火事、怪しげな新興宗教には追いかけられ……。
不幸のどん底にいた相澤真琴は、葉崎市の海岸で溺死体に出合ってしまう。
運良く古書店アゼリアの店番にありついた真琴だが、そこにも新たな死体が! 
事件の陰には、葉崎市の名門・前田家にまつわる秘密があった……。
笑いと驚きいっぱいのコージー・ミステリの大傑作!
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2000年(平成12年)に刊行された、架空の都市・神奈川県葉崎市を舞台とした葉崎市シリーズの第2作です。

 ■第1章 波とともに来りぬ
 ■第2章 古本屋は突然に
 ■第3章 忘れたよ面影
 ■第4章 騙しあい
 ■第5章 ある泥棒の詩
 ■第6章 逢うときはいつも死体
 ■第7章 昼下がりの殺人
 ■第8章 告げ口がいっぱい
 ■第9章 罠におちて
 ■第10章 探偵たちの街角
 ■第11章 犯人よこんにちは
 ■おまけ ~前田紅子のロマンス小説注釈~
 ■解説 池上冬樹

あらゆる不幸を立て続けに体験した相沢真琴は、全てを投げだし、葉崎市の海岸に辿り着いた……ところが、なんと身元不明の死体をみつけてしまう! 所持品から、その死体は葉崎の名門・前田家の失踪中の御曹司・前田秀春である可能性が浮かぶ、、、

しかし、秀春の失踪には、きな臭い背景が……そんなさなか、ロマンス小説専門の古書店アゼリアを経営する前田紅子と知り合った真琴は、紅子が入院する間、アゼリアの店番を頼まれたのだが……。

真琴は次なる死体と遭遇することに! 絶妙な語り口と濃厚なミステリの味付け! 芳醇なるコージー・ミステリの絶品、好評書下ろし第二弾。

不幸のどん底にいた相澤真琴が、葉崎市の海岸で溺死体に出会い、さらにロマンス小説専門の古書店アゼリアの店番になってから新たな死体に巻き込まれる……登場人物たちの明るいキャラクターと事件の謎解きがコミカルに描かれており、笑いと驚きいっぱいの作品でしたね、、、

事件の背景となるのは葉崎市の名門・前田家にまつわる秘密……真琴が古書店で働きながら、事件の謎を解き明かしていく展開に引き込まれましたね。

前作と同様に、事件が解決した と思われた後に描かれる最後のどんでん返しも面白かったです……が、これどういうこと!? と一部理解できない部分があったので不完全燃焼気味で読み終えてしまったところが、ちょっと残念でしたー 読解力不足かな……。
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『ヴィラ・マグノリアの殺人』 若竹七海

2024年06月03日 21時09分39秒 | ■読書
若竹七海の長篇ミステリ作品『ヴィラ・マグノリアの殺人』を読みました。
ここのところ、若竹七海の作品が続いています。

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海を臨むヴィラ・マグノリア。
その空き家になった一棟で、死体が発見された。
ヴィラの住人は一癖ある人ばかりで、担当刑事達は聞き込み一つにてんてこ舞い。
捜査に手間取るうちに、ヴィラの住人が殺される第二の事件が発生!二つの事件のつながりはどこに?住人達の素顔も次第に明らかになって―。

粒よりユーモアをちりばめたコージー・ミステリーの快作!
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1999年(平成11年)に刊行された、架空の都市・神奈川県葉崎市を舞台とした葉崎市シリーズの第1作です。

 ■第1章 男が死んでいる
 ■第2章 刑事が聞き込む
 ■第3章 会議が踊らない
 ■第4章 探偵が指名される
 ■第5章 容疑者が多すぎる
 ■第6章 女も死んでいる
 ■第7章 巡査部長が困惑する
 ■第8章 作家が企む
 ■第9章 警部補が追いつめる
 ■第10章 犯人が逃走する
 ■第11章 真相が明かされる
 ■解説 香山二三郎

海に臨む邸宅、十棟が並ぶ「ヴィラ・葉崎マグノリア」の一棟で死体が発見された……所持品もなく、顔と手が潰されて身元の特定は困難、、、

聞き込みに懸ける署員たちだが、ヴィラの住人は皆、癖のある人間ばかり……。

架空の都市・葉崎市の閑静な住宅地ヴィラ・葉崎マグノリアで起きたふたつの殺人事件を追う物語……容疑をかけられるのはもちろんヴィラの住人、、、

住人たちは、それぞれの家庭や人生、事情を抱えているクセのある人物ばかり……警察もクセのあるその住人たちに振り回されて事件は解決の糸口もつかめない。

ヴィラの住人たちがご近所さんのような感覚で描かれていいるところが特徴でしたね……大半の住人が疑わしく、そして、その住人たちが少しずつ隠している事実が少しずつ明らかになる、、、

最後まで飽きさせない展開と謎解きの醍醐味を存分に味わえる作品でしたね……愉しめました! 最後の最後で明らかになる意外な真相も面白かったです。
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『プラスマイナスゼロ』 若竹七海

2024年06月02日 21時00分05秒 | ■読書
若竹七海の連作ミステリ短篇集『プラスマイナスゼロ』を読みました。
ここのところ、若竹七海の作品が続いています。

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お嬢様と不良娘と平均値ガールの奇妙な友情 × 痛快系青春ミステリ
海辺の町“葉崎”を舞台に、超凸凹トリオが厄介でおかしな事件の謎を解く!
文庫版だけ! とびきり切ない書き下ろし「卒業旅行」収録

ある時、センコーがアタシらを見てこう言った――「プラスとマイナスとゼロが歩いてら」。
不運に愛される美しいお嬢様・テンコ、義理人情に厚い不良娘のユーリ、〝歩く全国平均値〟の異名をもつミサキの、超凸凹女子高生トリオが、毎度厄介な事件に巻き込まれ、海辺にある おだやかな町・葉崎をかき乱す!
学園内外で起こる物騒な事件と、三人娘の奇妙な友情をユーモアたっぷりに描いた、学園青春ミステリ。
〈解説・福井健太〉
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2008年(平成20年)に刊行された葉崎市シリーズの第5作です。

 ■そして、彼女は言った ~葉崎山高校の初夏~
 ■青ひげのクリームソーダ ~葉崎山高校の夏休み~
 ■悪い予感はよくあたる ~葉崎山高校の秋~
 ■クリスマスの幽霊 ~葉崎山高校の冬~
 ■たぶん、天使は負けない ~葉崎山高校の春~
 ■なれそめは道の上 ~葉崎山高校、1年前の春~
 ■卒業旅行
 ■解説 福井健太

葉崎市の学園内外で起こる物騒な事件と、お嬢様と不良娘と平均値ガールの超凸凹女子高生三人娘の奇妙な友情をユーモアたっぷりに描いた学園青春ミステリ。

テンコ、ユーリ、ミサキという3人の女子高生が織り成す学園コメディとミステリ要素が組み合わさった作品……3人のキャラクターはそれぞれ個性的で、不良娘のユーリ、平均的なミサキ、そして不運なお嬢様のテンコが、学園内で起こる事件に巻き込まれていきます、、、

彼女たちの友情や日常のエピソードが楽しさとほっこり感をもたらす展開なのですが、個人的にはちょっと物足りなかったですね……学園コメディとミステリの要素がどちらも中途半端な印象だったからかな。
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『バベル島』 若竹七海

2024年06月01日 21時04分58秒 | ■読書
若竹七海の短篇集『バベル島』を読みました。
ここのところ、若竹七海の作品が続いています。

-----story-------------
イギリス・ウェールズ北西部・彼の地の伯爵は長年「バベルの塔」建設に取り憑かれていた。
六十年の歳月をかけて完成した日、悪夢の惨劇が―(表題作)。
残業の夜、男は急停止したエレベーターに閉じこめられてしまう。
中にはもう一人、髪の長い女が。
そのビルには幽霊が出るという噂があって...(「上下する地獄」)。
鮮やかなプロットが光る単行本未収録作11編。
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1993年(平成5年)から2000年(平成12年)に発表されたホラータッチの作品11篇を収録して、2008年(平成20年)に刊行され作品です。

 ■のぞき梅
 ■影
 ■樹の海
 ■白い顔
 ■人柱
 ■上下する地獄
 ■ステイ
 ■回来
 ■追いかけっこ
 ■招き猫対密室
 ■バベル島
 ■解説 千街晶之

ホラー要素が強かったり、怪談のような作風だったりと、これまでに読んだ若竹七海の作品とは雰囲気が異なる作品でしたね……怖さが詰まっている という意味では共通する部分がありましたね、、、

友人の両親の梅に対する異常な忌避感や壁に浮かび出たしみから、過去の陰惨な事件があぶり出される『のぞき梅』と『影』、

物語そのものよりも干支の丙午や映画監督ルイ・マルにちなんだ<マル>という喫茶店が印象に残った『人柱』、

エレベータに乗ることやスイカ割りが怖くなっちゃう『上下する地獄』と『ステイ』、

イギリスの大富豪がウェールズ沿岸の島にバベルの塔をそっくりそのまま再現した巨大構造物を建造するが、そこには恐ろしい目的・願望が潜んでいた……壮大であまりにも馬鹿馬鹿しい計画に唖然としつつも読後に考えさせられる奇譚『バベル島』、

が印象に残りましたね……でも、やっぱホラーは苦手だなぁ。

ちなみに『バベル島』の語り手の曽祖父の名前は葉村寅吉……ということは語り手は葉村晶なんですかねー ちょっと気になりました。
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