本格的な巡礼はしたことがない。
ツアーコンダクターを務めるのは、同じ職場の栗本さんだ。事前に世話を焼いてくれるのがありがたい。
「数珠はお持ちですか?」
「いえ」
「お貸ししましょうか」
「うーん、これを機に買いたいと思います」
「じゃあ、安く私が買っておきますよ」
「お願いします」
いいものが安く手に入る仏具店があるらしく、自分では買わない方がいいと釘を刺された。では、おまかせしよう。
当日は手ぶらで秩父に向かう。西武秩父駅の改札を出たところに、白装束に身を固めた男性がいたが、それが栗本さんだった。隣には、年配の女性が3人立っている。
「こんにちは~! よろしくお願いします」
「まあ、栗本さんのお知り合い? こちらこそ、よろしくね」
品のいいマダムばかりで安心した。
「笹木さん、忘れないうちに渡しておきます」
栗本さんは荷物から巡礼に必要なものを引っ張り出した。
「わげさです。これは首から下げて」
「数珠です」
ちらりと栗本さんを見ると、左手にグルグル巻きつけていたので、私も真似をした。
これで3500円という。たしかに、売店などで買うより安いみたいだ。
10年ほど前に、こんなネックレスをして勤務先の高校に出勤したことがある。
そのとき、生徒から、「先生、それ、じゅずってヤツ?」などと言われたことがあった。
全然違うじゃん!
西武秩父駅から歩いて御花畑駅に向かった。秩父線に乗り、和銅黒谷駅で下りる。マダムたちが荷物の整理をしている間に、お手洗いに行ってもいいかと尋ねると……。
「いいですよ。わげさは外してくださいね」
わげさ……。ああ、首にかかっているコレか。扱いに気をつけなくては。
まずは札所の一番を目指す。そうそう、さっき首から外したヤツは、またかけておいた方がいいのかな。
「あのう、わさげは、もうつけていいんですか」
「いや、わげさです」
「あ、わげさでしたか」
おおっと、間違えていた! 数珠を勘違いしている生徒と同じレベルではないか。
「輪になっている袈裟という意味ですよ」
「なるほど」
漢字にすれば輪袈裟となるらしい。これからは正しく言える気がする。
この日は暑かった。帽子をかぶってはいたものの、そんなものでは到底追い付かない。
栗本さんは、白装束にマッチした菅笠をかぶっていた。UV加工がされているとは思えないが、顔どころか首までバッチリ日陰になって、涼しそうに見える。
いいな、私も買おうかな……。
だが、旅慣れた感MAXの白装束を着ていると、道に迷った巡礼者が「ここに行きたいのですが」と助けを求めてくるではないか。栗本さんはベテランだから、「こっちですよ」「あっちですよ」と答えていたが、私には絶対無理である。初心者は初心者らしく、中途半端なハイキングスタイルでよかろう。
さあ、まもなく札所一番に着きますよ。
↑
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
ツアーコンダクターを務めるのは、同じ職場の栗本さんだ。事前に世話を焼いてくれるのがありがたい。
「数珠はお持ちですか?」
「いえ」
「お貸ししましょうか」
「うーん、これを機に買いたいと思います」
「じゃあ、安く私が買っておきますよ」
「お願いします」
いいものが安く手に入る仏具店があるらしく、自分では買わない方がいいと釘を刺された。では、おまかせしよう。
当日は手ぶらで秩父に向かう。西武秩父駅の改札を出たところに、白装束に身を固めた男性がいたが、それが栗本さんだった。隣には、年配の女性が3人立っている。
「こんにちは~! よろしくお願いします」
「まあ、栗本さんのお知り合い? こちらこそ、よろしくね」
品のいいマダムばかりで安心した。
「笹木さん、忘れないうちに渡しておきます」
栗本さんは荷物から巡礼に必要なものを引っ張り出した。
「わげさです。これは首から下げて」
「数珠です」
ちらりと栗本さんを見ると、左手にグルグル巻きつけていたので、私も真似をした。
これで3500円という。たしかに、売店などで買うより安いみたいだ。
10年ほど前に、こんなネックレスをして勤務先の高校に出勤したことがある。
そのとき、生徒から、「先生、それ、じゅずってヤツ?」などと言われたことがあった。
全然違うじゃん!
西武秩父駅から歩いて御花畑駅に向かった。秩父線に乗り、和銅黒谷駅で下りる。マダムたちが荷物の整理をしている間に、お手洗いに行ってもいいかと尋ねると……。
「いいですよ。わげさは外してくださいね」
わげさ……。ああ、首にかかっているコレか。扱いに気をつけなくては。
まずは札所の一番を目指す。そうそう、さっき首から外したヤツは、またかけておいた方がいいのかな。
「あのう、わさげは、もうつけていいんですか」
「いや、わげさです」
「あ、わげさでしたか」
おおっと、間違えていた! 数珠を勘違いしている生徒と同じレベルではないか。
「輪になっている袈裟という意味ですよ」
「なるほど」
漢字にすれば輪袈裟となるらしい。これからは正しく言える気がする。
この日は暑かった。帽子をかぶってはいたものの、そんなものでは到底追い付かない。
栗本さんは、白装束にマッチした菅笠をかぶっていた。UV加工がされているとは思えないが、顔どころか首までバッチリ日陰になって、涼しそうに見える。
いいな、私も買おうかな……。
だが、旅慣れた感MAXの白装束を着ていると、道に迷った巡礼者が「ここに行きたいのですが」と助けを求めてくるではないか。栗本さんはベテランだから、「こっちですよ」「あっちですよ」と答えていたが、私には絶対無理である。初心者は初心者らしく、中途半端なハイキングスタイルでよかろう。
さあ、まもなく札所一番に着きますよ。
↑
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
多分2年後には白装束を着てわらじを履いて笠を被って杖をついて日本中歩き回っているような気がしますよ、(笑)
わげさうをしていると修行僧と間違えられるかもしれませんね。
写経といい巡礼といい、何か思うところがあるのでしょうか?
輪袈裟は大袈裟のケサですね。輪下げもありかと…
3人の女性は栗本さんの信者の方かもしれませんね、最後に高い壺を売りつけられないように…ヾ( ̄o ̄;)オイオイ
会社の先輩に初めて渓流釣りに連れて行ってもらったときのことを思い出しました。
私が野球帽にゴム長靴の出で立ちで集合場所に行くと、釣りキチ三平のページから魚紳さんが抜け出てきたかと思えるほど完璧な格好の先輩が立っていました(笑)
ネットで輪袈裟を調べてみたら、仏教では正装に当たるそうです。
白装束を着ていなくても、これを首につけるだけで正装なんですね。
ちょっと意外な感じ。
栗本さんに言わせると、四国の巡礼にはそれ用の道具が必要なのだとか。
なるべく、どの場所にも使える無難な道具を買うようアドバイスを受けました。
まずは、見なくても般若心経が言えるようにならなければ!
そうですね、僧侶も輪袈裟をしているようです。
白装束を着ていれば、私も修行中に見えるかしら。
でも、この日はリュックにタートル、山用品を身につけました。
輪袈裟が浮いちゃって浮いちゃって。
それらしい服装だと電車で浮きますが(笑)
やはり、身内の供養が一番の目的ですね。
足の悪い参加者もいました。
でも、苦労する方が御利益あるからと、一生懸命歩いていましたよ。
まったく同感です。
魚紳先輩は、釣りに服装は関係ないと思っていたのかしら。
こちらの場合、手ぶらで拝むわけにいかないようです。
最低限の道具は用意しましたが、服装に関しては自由でしたよ。
何事も最初は知らないことが多すぎます(笑)
と言ったのは、徒然草52段、仁和寺の法師が石清水八幡神社へのお参りを思い立ったときの話だったでしょうか。
詳しい方の案内があるのは、間違いがなくて安心なばかりか、いろいろと勉強になりますね。
一番札所が近づいて
次も期待、楽しみです。
そういえば、Hikariさんは御朱印帳をお持ちでしたね。
どうも秩父では「納経帳」というようです。
秩父専用の形式があり、札所順になっているのだとか。
この日は3個しか書いていただけませんでした。
徐々に増やして、いつかは満タンにしたいですね。
達人がいると本当に勉強になります。
ああ、早く書きたい(笑)
砂希さんは、白装束ではなかったのですか。
でもそのまま電車に乗るのも、ちょっと勇気が要りそうです。
先達がおられると、励みになりますね。
私も、いろんな記事を読ませてもらえて、楽しいです。
栗本さんは白装束で電車に乗ってきました(笑)
目立つので、待ち合わせには便利です。
そういえば、元同僚の女性も、四国巡礼の旅をしたと言っていましたよ。
白装束で電車に乗ると、サーッと人が避けていくそうです。
おかげで自分の周りは空いたと笑っていました。
自分で一から調べる根性はありません。
やはりお手軽に、誰かが教えてくれるのが一番ですね。