ザウルスの法則

真実は、受け容れられる者にはすがすがしい。
しかし、受け容れられない者には不快である。
ザウルスの法則

ロンドンのふくろうカフェ、日本との違い:“ふくろうカフェ”から日本が見える

2016-03-20 10:47:13 | 動物

 ロンドンの ふくろうカフェ Annie The Owl、日本との違い、

“ふくろうカフェ”から日本が見える

 

ロンドンは東京とならんで、新しい流行を採り入れるのが早い。それも日本発のものがけっこうある。すでにカラオケが定着して20年以上になろうか。ネコカフェもすでにある。そして、ふくろうカフェができたのが、2015年4月である。

調べてみると、日本の一般的なふくろうカフェと大きく違う点がいろいろある。

 

1. 売り上げはすべて野鳥保護団体に寄付する。

2. 経営者の儲けはゼロである。

3. 教育目的のイベントである(鷹匠のレクチャーの他、書籍、写真集も販売)。

4. 総入れ替え制の2時間のショーである。客席50以上。

5. フクロウは全部で6羽だが、2羽ずつ3回にわけて出てくる。

6. 猛禽類を扱うプロの “鷹匠” がフクロウを扱う。

7. 客がフクロウに触れることは許されない。

8. 客がテーブルを離れることは原則としてできない。

9. ホール内は夜行性のフクロウのためにうす暗くしてある。

10. 音に敏感なフクロウのために、BGMの音量は最小限。声の大きい客は注意される。

 

  

これだけの条件を課している背景には経営者の並々ならぬ苦労があることが想像できる。経営者は間違いなく日本の “ふくろうカフェブーム” にヒントを得て、この “ふくろうバー” を思い立ったのである。しかし、日本の “ふくろうカフェ” そのままでは、必ず動物愛護団体の反対にあってつぶされると判断したに違いない。そして、イギリスでも何とか受け入れられるようにと、何重にも予防線を張って、満を持して踏み切ったのである。

 

まず、“儲けゼロ” と “売上げ全額寄付” であるが、これは日本のどのふくろうカフェにも真似できないだろう。

次に、“プロの鷹匠の扱い” と “客の接触不可” も、日本のふくろうカフェには無理な注文だろう。

動画

 

そもそも経営者はこれで金儲けしようとは思っていないようで、“話半分”にしても、 おそらく本人の言う通り、 “教育目的” の “チャリティー” なのであろう。こうでもしないと、ロンドンではオープンできない、というのが現実である。いくら法律的には違法ではなくても、倫理的な非難が高まっては閉店に追い込まれてしまう。

実際、開店予告を知って、いくつかの動物保護団体が開店阻止のための署名キャンペーンを繰り広げ、あっという間に3万人近くの署名を集めている。

現に開店場所は当初ロンドンの中心近くの、日本の新宿にあたるソーホーに予定されていたのが、動物保護団体の圧力に屈するかたちで、ロンドン周辺の目立たない場所に移転 せざるをえなくなった。しかも、最初は “カクテルバー” ということだったのが、これもヘルシーな “スムージーバー” に変更 を余儀なくされた。酒が入ると客のマナーが悪くなり、声も大きくなるという理由である。

 

店内の様子

店内の様子を映したビデオを見ると、日本では考えられないほど広々とした、高級レストランのような雰囲気である。店内はフクロウのために非常にうす暗くしてあり、客たちはみなお行儀よくキャンドルライトのテーブルに着席して、ヒソヒソと小声で話している。

最初に鷹匠がフクロウを革製のグローブにとまらせて登場し、いろいろ説明をする。客たちは静かに聞いている。説明の後、二人の鷹匠がそれぞれテーブルを順に回って、まじかに “サービス” をするというシステムである。

それでも、客たちはフクロウに直接触ることはいっさい許されず、フラッシュなしで、スマホなどで写真を撮るくらいである。全員ではないが、グローブを借りて、鷹匠のようにとまらせることもできる。

 

フクロウを商業的に利用した娯楽施設、飲食店を ふくろうカフェ と呼ぶならば、英国のこれはたしかにそれに属するものである。そして、これはカラオケ、ネコカフェ と並んで、まちがいなく日本の流行の影響下にロンドンに出現したものである。にもかかわらず、“本場”日本 とのその違いは歴然としている。一言で言うと、“コドモ と オトナ” である。どちらがどっちか言うまでもあるまい。

正直言って、わたしは日本のふくろうカフェが、これとまったく同じ条件、つまり上記 1.~ 10.をすべてクリアしたようなものであったら、非常に “反対” しづらいと思う。一本取られたような気になってしまうと思う。

しかし、これだけの条件をほとんどクリアして、何重にも予防線を張っていたこのロンドンのふくろうバー、 Annie The Owl でも、いろいろな動物保護団体から猛攻撃を受け、厳しい条件を呑まされたのだ。日本で考えられるであろうか?

開店阻止キャンペーンの高まりを受け、売り上げの寄付を受けるはずだったあるフクロウ保護団体は、寄付を受けるという当初の契約を一方的に反故にして、降りてしまった。この店から寄付を受けているということが自分たちの団体の “マイナスイメージ” につながることを恐れて、せっかくの “金づる” を放棄したのである。

けっきょく、このふくろうカフェ Annie The Owl は 野鳥保護団体に寄付という “錦の御旗” を掲げ続けるために、他の団体を探さざるを得なくなった。そして、やっと見つけた団体からは “匿名” という条件ならば、ということで “寄付を受けてもらった”という顛末がある。この ”ふくろうバー” とつながりがあると見られることに、どこの団体も非常に迷惑しているのである。それほどまでにこの Annie The Owl はイギリスの多くの愛鳥家たちからは白い目で見られているということである。

もちろん、イギリス人全員が愛鳥家、動物愛護家というわけではなく、こうした新奇な店に行きたがるひともけっこう多く、それなりに人気はあり、知る人ぞ知るロンドンの人気スポットである。どこの国にも新しい流行に踊らされるレベルの人間はいくらでもいるものだ。実際、日本に来た外国人のふくろうカフェ体験がYouTube やインスタグラムに乗って今日も世界中を巡っている。

 

ところで、料金だが、2時間で、スムージー2杯、スナック、オードブル少々で 20ポンド(日本円で約 3,200 円) である。どうだろうか。ある意味で、自然の動物を彼らにとっての最小限のストレス環境でまじかに都会で見るためにはそのくらいのコストはかかるということなのかもしれない。考えようによっては妥当な値段であろう。日本のようにもっと手軽に 500 円から1,000 円くらいが妥当と思うこと自体、 “最小限のストレス環境” という条件を最初から外している発想なのかもしれない。

 

 

だからと言って、わたしがこの Annie The Owl  はOKと言っているのではまったくない。わたしは、プロの鷹匠であろうと誰であろうと、猛禽類に “足かせ” をつけて室内で見世物にしているというだけで反対である。売上げがどこに寄付されようと反対である。

この  Annie The Owl  の例で見てきたように、日本と比べれば、フクロウの立場を何十倍も配慮して、突っ込みを入れられないようにしたように思える ふくろうバー であっても、イギリスでは反対する声が根強く、金儲けとしてはそもそも全然成り立たない ということがわかる。批判、攻撃を和らげるために最初から “売上げの全額を野鳥保護団体に寄付” という大義名分を掲げていたので、何とかつぶされずに済んだのである。それが無くて、“ただの金儲け” だったら間違いなく息の根を止められていただろう。

英国には “英国王立動物虐待防止協会” という英国王室のお墨付きを得た有力な圧力団体があり、動物虐待の通報があるとすぐさま救出のために駆けつけて踏みこんでくるのだ (別記事「ふくろうカフェ、英国王立動物虐待防止協会の見解」を参照)。

 

金儲けのためにフクロウを “過度のストレス環境” におくことを何とも思わない国民、

ただ放置するだけで批判の声が高まらない国 が、この世界には存在する。

 

フクロウたちの姿は、そのままその国の人間の姿ではないか?

 

猫カフェ と ふくろうカフェ、“動物虐待” か?

「わたしたちは“ふくろうカフェ”に反対します」 反ふくろうカフェポスター No.1

“可愛いきゃ何でも許される?” 反ふくろうカフェポスター No.2

“カワイイ” 以前に “かわいそう”  反ふくろうカフェポスター No.3

”鳥がしゃべれたら・・・”  反ふくろうカフェポスター No.4

「ハリポタ」のフクロウ と 「ラスカル」のアライグマの図式

「ハリーポッター」の作者、“ふくろうブーム” に苦言

「真似してフクロウ飼わないで!」ハリポタ作者の声 反ふくろうカフェ ポスター No.5

ロンドンのふくろうカフェ、日本との違い:“ふくろうカフェ”から日本が見える

ふくろうカフェ、英国王立動物虐待防止協会の見解

ふくろうカフェの放置 は 拉致問題の放置 と同じである

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