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音楽大好き男の徒然なる日記

人生と死とつかの間の愛/さだまさしのアルバム『夢の轍』(1982)を語る

2016-12-04 | 音楽
2016年12月2日付東京新聞のトップ記事は、大手新聞3社と異なりこんな記事だった。
「交通事故減願う『償い』 実話に基づくさだまさしさんの歌 警視庁講習で流す」

さだまさし『償い』の歌詞

https://www.youtube.com/watch?v=MzNeMZqNwL4
仕事の昼休み、歌詞を読んで涙腺にきそうだったので、別面にめくり直した。

そう、某傷害致死事件の裁判で、判決を読んだ裁判長がさだまさし氏の「償い」を取り上げたことから
1982年のアルバム『夢の轍』を語る際、多くの人がこの歌を真っ先に取り上げることが増えた。


事実自分にとって、このアルバムはとても複雑な心境を持っている作品だ。


さださんをソロデビューからリアルタイムで知る方々はおわかりかもしれないが、
1979年の「関白宣言」が大ヒットして、彼のファンでない輩まで彼の歌をネタに賛否両論が沸騰した。



さらに、戦争映画「二百三高地」の主題歌になった1980年の「防人の詩(うた)」では“右翼”よばわりされ、
ある意味彼の試練期となってしまった。
https://www.youtube.com/watch?v=JjtmzOeRAMY

また、この時期から無能タレントがパロディをけしかけたり、
タモリなどおちゃらけを売りにする輩が“さだまさしはクラい”と叩いて人気取りをするようになった。

『夢の轍』はそれから2年後のリリースとなり、
おそらく“もう世間の風潮に振り回されずに、わかってくれる人たちだけに向けて歌おう”という開き直りのもとで
生まれたアルバムではないだろうか、と自分は思うのだ。


それだけに、歌の内容が今までになく悲痛なものとなった。

アラスカで事故死した実在のカメラマンの姿を奥さんから見つめた「極光(オーロラ)」、
亡くなった祖父とのエピソード「虫くだしのララバイ」、
先に紹介した「償い」、
子供や孫に囲まれながらも太平洋戦争で亡くなった夫を思い続ける老女の姿を描く「片おしどり」など、
死との関連が強い歌が目立つ。

自分も祖母が亡くなった時、
自分が彼女を思い続けていてもやっぱり祖母は夫(自分にとっての祖父)に会いたがっていたのか……と、
「片おしどり」を聴きながら複雑な心境になったものだ。
片おしどり



このほか人は死なないが、都会に出て人が変わってしまった女性をなじる「人買」や
日本の変わりようや海外の戦争の話題に嘆きながらも日常に流されてゆく「前夜(ニッポニア・ニッポン)」
前夜 (桃花鳥) さだまさしライブべスト(Vol.1)

 ストリングス編曲:渡辺俊幸

歌詞:Uta - Net
 https://www.uta-net.com/song/95673/


 ライブアルバム『Live Best』音源より。


父の定年退職を扱った「退職の日」など、人生の転機の光景も目立つ。

編曲:渡辺俊幸


 シングルジャケット(フリーフライト/ワーナー・パイオニア(当時)、イラスト:なかはら かぜ)
歌詞:Uta - Net
 https://www.uta-net.com/song/62268/


決して嫌いなアルバムではないのだが、
自分が今でも最も好きな『風見鶏』(1977)や『私歌集(アンソロジー)』(1978)の明るさ手軽さは、
もうここにはない。


さださん当時30歳。 完全に彼の世界は次の章に進んだと実感した作品だった。


最後に、自分がこのアルバム中いちばん好きな歌を貼って終わろう。

中島みゆきさんのヒット曲「悪女」(1981)のアンサーソング「まりこさん」は映像がないけど、
彼にしてはなんと甘美で官能的な恋愛の歌だと魅せられた、オープニングの「微熱」です。

ちなみに、この映像はフジテレビ「ミュージックフェア」放送のもので、
バックコーラスは当時さださんの妹・玲子さんが所属していたグループ「白鳥座」(さだ企画)でしょう。


http://www.uta-net.com/song/95674/


2016年12月4日付訪問者数 108名様
ありがとうございました。

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