高橋のブログ

不定期に..

【2017.10.22 第86回.日本音楽コンクール ヴァイオリン部門本選を聴く】

2017-10-23 20:11:46 | 日記

2017.10.22 午後4時。オペラシティ。

いつもならほぼ満席の本選だが、今年は台風接近ということもあってか、聴衆は6割弱だった。
私は今年は仕事の都合等があって2次予選の一部しか聴けず、それでこの本選を聴いた。

開場直後、少し離れた客席に小林健次様をお見かけした。今回、出場する外村さんの師だ。私が学生時代に聴いた都響のコンマス!面影があった。

さて、日コン.ヴァイオリン本選も随分接してきたが近年はこの本選で高校生がステージで一所懸命に演奏している様子を見ると、なぜか涙が出そうになってきている。

なぜ、涙が出そうになるのか?10代の高校生が大ホールのステージで1人で戦っているのだ。
指揮者、オーケストラが全力でバックアップしてくれるとはいえ、孤独なのは確か。コンサートと違い、2F正面席には、そうそうたる審査員達が自分を見つめている。
そこで弾くのだ。日コンの要項が発表され、この本選出場まで半年、どんなに頑張ってきたのだろう?
上手い子とはいえ、同じ本選に出る大学生に比べ、場数を踏んでいない場合もある。まだあどけなさも残っている。
聴きながら、そういう背景を考えてしまうような歳になってしまって、グッと来てしまうのかもしれない。


さて演奏順に素人感想。
1番目は岸本さん(藝大大学院)。シベリウス。

この曲はまず弦が湖面のさざ波のような雰囲気を醸し出して始まるわけだが、この音程が失礼ながらプロオケとは思えず、驚いた。
今回、神奈川フィルを初めて聴いたのだが、どうしたことか?音コン演奏なので、レギュラーメンバーは少なかったかもしれないが..。

岸本さんはリサイタル等でもう何回も聴いているのだが、今回も冒頭から見事な艶やかな音色。音程も抜群。
この日、シベリウスは岸本さん含め3人が弾いたのだが、曲全体を考えるに、彼女が一番素晴らしかった。
第3楽章で少しオケと少し噛み合わない部分があったが、それも微々たるものであった。


2番目は飯守さん(藝大)。シベリウス。冒頭ソロから音がやや細く、また彼女の希望なのか、第3楽章はテンポがやや早めになったのだが、
それに少し対応出来ていなかったような気がした。
今後に期待したい。3次予選までは抜群の完成度だったに違いないが...。

ここで休憩。

3番目は外村さん(東京音大附)。高校1年生。2001年4月生まれだ。2001年!!ついこの前だ!!
彼女は学生音楽コンクールで小学時代全国2位、中学時代は1位と輝かしい結果を残している。私は彼女は藝高に進むものと思っていたが、そうではなかった。
彼女はチャイコフスキーを選んだ。オケが序奏を始めるや、その演奏が急に安定感を持っているように感じた。各パートの楽器の鳴りもいい。
休憩してオケが元気になったのか?わからないが、例えば、今回の夜の神奈川フィルメンバーはシベリウスの協奏曲をそれほど演奏していないのでは?
とさえ思ってしまった。チャイコフスキーは演奏頻度も高いだろう。いや、プロオケでこんなことはないと思いたいが...。
勿論、プロなわけだから数回の練習でまとまめらるはずだが、それにしてもチャイコフスキーになるや、
これほどの変化には呆れた。何かシベリウス時に、オケが、おどおどしている感があった。

外村さんは高校生とは思えない堂々たる演奏を披露。東京音大附属は周防、辻、服部に続く凄いヴァイオリン奏者を育ててきていることを痛感した。
高い技量の持ち主。

特に第2楽章の感情移入は印象的で、彼女が描きたい音楽がとてもよくわかる演奏だった。
終わるや、若い方々からの「ブラヴォー!!」の連呼。恐らくクラスメート達だろう。
またシベリウスに比べチャイコフスキーの方がラストは盛り上がるわけで、会場は湧いた。
3人を聴いて、岸本、外村、飯守というのが私の予想。聴衆賞は外村か?

4番目は大関さん(桐朋女子)。高校3年生。シベリウス。第1楽章のカデンツァが圧巻。ここでは聴衆を自分に引き込むというか、それほどの力を発揮した。
これには驚いた。イザイとかを弾いているリサイタルのような雰囲気であった。
第2楽章後半以降は岸本さんの演奏の方が深く感じたが、大関さんの表現能力も素晴らしいものがあった。技量に問題なし。
拍手喝采。私の印象順位としては岸本さん、外村さん、大関さん、飯守さんの順。外村さんと大関さんは同点か?

また大関さんの時はオケも演奏3回目ということか、岸本さんの頃より遙かに安定した。


衣装はシベリウスを弾いた3人共「マリンブルー系」で被った。シベリウスは、やはりこの色だろう!チャイコフスキーを弾いた外村さんは白。

指揮の田中さんは今回は指揮台を踏み鳴らすことはなかったが、口を絶えず大きく開けて指揮をしたり(歌っているわけではない、なんか噛みつくような感じ)、
指揮棒を振りまくるのは昨年同様。

ソリストの顔に指揮棒が当たるのでは?とヒヤヒヤした。また譜面で強奏部分だから..といっても少し度が過ぎるほど鳴らすように指揮したり、
そのあたりも私には不満が残った。やや品を欠く指揮で残念。

演奏が終わり、30分程経過してロビーで審査発表。大関さん1位、外村さん2位、岸本さん3位、、飯守さんが入選となった。聴衆賞も大関さん。

私の素人予想とは違ったが、3次予選の審査得点の60%も加算されるので、そのあたりもあったのかもしれないし、審査員の着眼点は当然、私と違うわけで、
プロの評価はいろいろあるのだろう。後日、毎日新聞に審査点等が発表されるので注目したい。

ピアノ部門も桐朋の高校生が1位となり、桐朋はW制覇となったわけだが、この数年、東京音大及び東京音大附属の学生の躍進が顕著だ。
近い将来というか来年にでも、この学校に通う方がヴァイオリン部門を制する時が来ると思う。

ヴァイオリン部門は2年連続、高校生が1位となった。審査が若い子を中心に見よう!ということではないと思うが、高校生となれば、学生音楽コンクールも
あるわけで、両者の棲み分けが微妙になってきている。

それと依然としてネット配信等が無い。日本音楽コンクールは我が国を代表するコンクール、ネットで生中継をしてもいいと思う
(他国の有名なコンクールは既に生中継をしている)。また生中継は無理でも後日に演奏を配信しているところが多い。日コンはそれがない。
NHKのFMやTVでも本選全曲放送は無い。そろそろ、このあたりも考えて欲しいものだ。


最後に私は2F、L2列20番で聴いたのだが、その前(L1列、目の前ではないが)に老夫婦が座って鑑賞していた。白髪の男性がフライング拍手!

オレはこの曲の終わりを知っているぞ!と言わんばかり。

岸本さんから外村さんまで3人連続だ!

これには耐えかねて、大関さんの演奏前に後ろから身を乗り出して「すみません、拍手、早すぎです!コンクール!審査会なんです!」と声をかけた。
私の言い方が少し攻撃的で男性は少し不機嫌な顔をして何か文句を言いたかったようだが、私に加勢して?「そうですよ!」と近くの男子学生2人も言ってくれた。
奥様がたしなめて、場は収まった。私は改めて頭を下げてお願いした。もし、もめたら大変なことになったが...。

大関さんの時はこの方はフライングをしなかったが、違う場所からフライング拍手。あぁ、まだ音が宙を舞っているのに!!なんとかならないかなぁと思った次第。
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