今日、美容室でカットとカラーをお願いしてもらっている時、隣の年配客が若い美容師さんに1964年の東京五輪の話をしていた。
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「アベベというアフリカの選手が裸足で走っていたのよ!!靴が買えなくて、でも頑張って走っている姿をTVで見て感激したわよ」
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それは嘘ですよ!とツッコミはしなかったが...。
裸足の英雄と呼ばれたアベベはアフリカの貧しい家庭に生まれた。小学校にも1年しか通えず家業の手伝い...。
しかし身体能力が極めて高く、19歳の時に出会った名コーチとマラソン練習を開始。
シューズも買えない田舎の青年が毎日、足を血だらけにして猛練習。そしてついに国の代表となり、世界大会へ!
過去の実績もないアベベだが東京五輪のレースではトップ集団へ!
あの選手は誰だ?しかも裸足だ!!と騒然となる中、彼はオリンピックという世界最高の舞台でその頂点に立った..!!
「全世界が泣いた!!アカデミー賞最有力候補!あなたは伝説の目撃者となる!!」
みたいな日本人好みの感動的な映画が作れそうな気がするが、事実とは少し異なる。
アベベは確かにオリンピックで裸足でマラソンに挑み、優勝している。それは「東京」の前の「ローマ」大会だ。
また貧しくてシューズが買えなかった...わけではなく、愛用のシューズが「ローマ」直前に破損し、
マでいくつかシューズを探すも満足するものがなく、ならば裸足で走ってしまえ!という感じで臨んだのが事実のようだ。
アベベは常日頃、シューズを履いて練習していたようだし、エチオピア政府・陸連もローマでアベベが適するシューズを
見つけたとなれば、金を出してくれたと思う。
そして「東京」は勿論シューズを履いて走っている。なぜ、このような「東京」で裸足という勘違いが起きたかとなると、
「ローマ」のアベベのゴール写真があまりにも有名で、それと「東京」を混同してしまった方が多かったではなかろうか。
私の母も「アベベは東京で裸足で走っていた!」と言っていたことがある。「甲州街道(東京大会のコース)でアベベが裸足で走っていくのを見た!」と
証言している方もいる。
人間の記憶はいい加減だ。
さらに既述した「感動的な話」だ。事実と違うわけで三流マスコミの記事が際立ってしまったのかもしれない。
アベベは「裸足の英雄」と呼ばれたが、裸足で走ったレースは1回だけ。