たまたま、本棚にある加藤秀俊「独学のすすめ」を読んでいたら、次のような文章にであった。
「アメリカの心理学者に、D・マクレランドという人がいる。」39頁 ちくま文庫からの引用。
河原宏の本で批判されていたマックレランドの事だろうか。おそらく同一人物だとおもわれる。
加藤秀俊はマックレランド(マクレランド)の思想に肯定的である。マックレランドの著作、「達成動機」について加藤はこう書く。以下、「学問のすすめ」からの引用。
「この書物は、かなり大きな本だが、その要点をかいつまんでいうと、およそ社会が生き生きと活気をもっているときには、かならずそれに並行、あるいは先行して、その社会を構成する人びとがつよい「達成動機」をしめした時期がある、という一種の歴史心理学なのである。「達成動機」とはなにか。それは、わたしたちの日常言語に置きかえていえば、「やる気」ということである。なにごとかを成しとげてやろう、という積極的な気がまえのことである。そういう「やる気」が根源になって、社会は発展し繁栄する、というのがマクレランドの学説なのだ。」39〜40頁
河原宏には「前傾的な思考」と見えたものが、加藤秀俊には、「すばらしいもの」に見えているのだ。河原の言う、戦後の日本人の「怨念」は、加藤にはおそらく見えていない。